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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(3年目)
202/303

202 捕虜の尋問

 一人ずつ尋問するのも面倒なので、三人とも後ろ手に(しば)って同じ部屋に座らせている。

 魔法を使われると厄介なので、傷の手当はしていない。というよりも魔力移動のための集中ができないように定期的に傷口をえぐっている。

『お前ら、俺たちにこんなことをしてタダで済むと思うなよ。仲間がすぐに駆け付けてきてお前らをぼこぼこのぎったんぎったんにしてくれるからな』

『俺たちをすぐに解放しろ。そうしたら今回の件は勘弁してやる』

『私だけでも助けてくれないかね。知ってることは何でも話すから』

 三者三様だね。

 最初の二人には猿轡(さるぐつわ)をしてしゃべれないようにした上で両手の爪をペンチではがしていく。反抗的な奴はまず心を折らないとね。

 激痛に身もだえしている二人の仲間を見て、最後に発言した男は涙を流して命乞いを始めた。

『ああ、言葉が通じないんだった。どうか命ばかりはお助けを…と言っても通じないか』


 ここで私が発言した。

『まずは、あなた方の国の名前とその位置を教えていただきましょうか』

 これを聞いた男たちは驚きに目を見開いた。そりゃそうだ。異国の地でいきなり母国語を話す女が目の前に現れれば驚くよね。

『言葉が通じるのか。ありがたい。私の名前はチャー・チュールという。国の名前はシンハ皇国(こうこく)。ここから船で一か月はかかる位置にある国だ』

 男の名前に耳を疑ったよ。あのフレーズが頭の中にリフレインする。チュール、チュール、チャオチュール。前世では一人暮らしだったのでペットは飼っていなかったんだけど、あのCMはテレビでよく見ていたからね。


 うむ、気を取り直して尋問を続けよう。

『ではチュールさん、あなた方の目的は何ですか?』

『この大陸への進出。そのために我が皇国の橋頭堡(きょうとうほ)を築くことだ。とりあえず当初の目的は果たしたのだが、さらに支配領域を広げるために将校斥候に出たのが私だ』

『ほほう、ではあなたは部隊の将校だと?』

『そうだ。少尉の階級にある』

 ちなみに【全言語理解】さんが軍隊の階級をうまい具合に翻訳してくれている。


『この二人は部下ですか?』

『ああ、軍曹と伍長だ。部下の非礼についてはお詫びする。どうか私だけでも助けてくれないか』

 これを聞いた二人の部下たちは殺気のこもった目でチュール少尉を(にら)みつけているけど、大丈夫なの?


 ここまで訳の分からない言葉でやり取りしている私をシゲノリ中佐が(いぶか)しげに見ているね。たしかに怪しさ満点だよ。

 私はここまでの内容をグレンテイン語に翻訳して部屋の中にいる全員に聞かせてあげた。

 なぜ敵の言葉をしゃべれるのかについては、そういう才能だとごまかした。いや、これは本当なんだけど。


 そのあと、とても協力的なチュール少尉に聞いた話をまとめると以下のような状況が判明した。

・シンハ皇国はこの大陸から船で一か月かかるほど離れた大陸にあり、その大陸全土を統一している大国である

・200人は乗れる大型船を建造し、海洋を渡る技術(つまり羅針盤か!)も持っている

・今回の遠征の半年後にはさらに10隻の軍船がやってくる(つまり現時点から考えると四か月後くらいか)

・魔法陣による無詠唱魔法を発動する技術を持っている

・魔導書に書かれている古代語を解読した天才が100年前に現れ、魔法陣による魔法発動技術を普及させた

・その魔法陣技術こそが大陸全土を統一できた原動力だったらしい

・新しい魔法陣を描くことができる技術は無い(使えるのは魔導書にある魔法陣のみ)

・ただしこの天才、古代語自体に関する情報を後世に伝えず、自分だけのものとした(独占した)

・そのため、鑑定魔法やアイテムボックスを使える人はいない(その存在を知らなかった)

・火薬や大砲、銃の存在は知らなかった(これに関してはホッとした)

・船は外燃機関で動いているとのこと(何を燃やしているのか知らないけど蒸気機関らしい)

・魔道具の存在は知らないらしく、防御結界や通信手段は持っていない(発光信号や手旗信号はあり)

・魔法を発動する際、魔導書の存在は必須(魔法陣を暗記できない)


 ふむ、要するに攻撃一辺倒の(かたよ)った技術体系だな。攻撃力の高い魔法陣の魔法によって、ルクス公国軍の持つ防御結界を破って制圧できたってことだろうな。

 ガルム帝国はどうか分からないけど、我が王国の敵じゃないね。総合的な技術力が違い過ぎる。まぁ、羅針盤と大型船の建造技術、特に外燃機関については脅威だけど。

 あと魔法陣を暗記していない…ではなく暗記できないというのは、そういう制約が各人にかけられているそうだ。どうやってかは分からない(脳神経分野の技術?)。支配者としては国民を統制する上で、何らかのセーフティロックはかけておきたいってのが理由だろう。

 なお、3人全員がそれぞれ魔導書を所持していたんだけど、チュール少尉のものだけ少し厚みがあって、中に描かれている魔法陣の数も少しだけ多かった。ただし、王国の博物館で見た魔法陣ばかりだったよ。残念。魔法陣が共通なのは、古代文明の版図(はんと)がこの惑星上の全てに及んでいたってことだろうね。


 さらに現在の兵力や配備状況を聞くと次のような内容だった。

・総兵力は約2千人で全員が魔法陣による攻撃魔法を発動できる(これはちょっと脅威だね)

・現在の司令部は港の最も高い建物(5階建て)に置いている

・どうせ言葉が通じないから住民は皆殺しにして、若い女だけは(なぐさ)(もの)にするため生かしておいてやった


 最後の話を聞いたとき、私からの殺気が(ふく)れ上がったことでチュール少尉がビビッて漏らしやがった。

 汚ねぇな、おい。


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