201 捕虜の確保
王国軍第1師団から抽出され、私たちの護衛として組み替えられた自動連射装置装備の特殊部隊は、その名を『自動車化魔道小隊』と名付けられた。
魔道具をメインに使うから魔道小隊で、魔導じゃないよ。
小隊長は平民でありながら相当優秀な人で、第1師団長ヒンデンブルグ公爵様にも目をかけられているらしい。
その小隊長、ヒューラーさんが私に指示を求めてきた。
「大使閣下、敵の斥候がこちらにやってくるようです。全員を捕縛したいと考えておりますが、それでよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします。できるだけ生きたまま捕らえていただきたいのですが、兵士の皆さんに被害が及ぶようでしたら殺してしまっても構いません。川の対岸にいる敵本隊に気付かれないようにお願いします。注意点としては、敵は強力な魔法を撃つ可能性があります。なので、防御結界は必ず作動させておいてください」
「了解しました。傾注!第2分隊と第3分隊は敵進路を塞ぐように前方へ移動。第4分隊と第5分隊は奴らの後方を距離をあけて追尾せよ。第1分隊は大使閣下を護衛する」
おぉ挟み撃ちだね。騎馬3騎に全力攻撃は過剰戦力のような気もするけど、逃がしたら厄介だし、どれだけの武力を持っているのか分からない以上、この判断は間違っていないと思う。
川の対岸からは見えない位置の、建物の建ち並ぶ通り沿いで敵を捕縛することにした。20人ずつの兵士に前後を挟まれた敵は少し慌てた様子ながら、ファイアボールを発動した。うむ、無詠唱だね。やはり魔法陣か。左手に持っているのは魔導書かな?
ってなんで状況が分かっているのかというと、待ち伏せ地点となる通りの建物の2階の窓から見ているんだよ。もちろん、仲間たちと第1分隊、それにヒューラー小隊長も一緒だ。自動車化されているメリットだね。展開が素早い。
敵3名のうち一人が前方へ、もう一人が後方へファイアボールを撃ち出したんだけど、全て防御結界で阻むことができた。こちらが無傷の様子を見てめちゃくちゃ驚いてるね。
どうやって生かしたまま捕らえるかだけど、自動連射装置の乱射では敵を殺してしまうし、同士討ちの危険性もあるから使えない。接近して剣で制圧するしかないかなぁと思っていたら、隣で見ていたミカ様が精密射撃装置でピンポイントに敵の太腿を撃ち抜いた。当然、弾は敵の太腿を貫通して乗っている馬にも当たるので、馬が倒れた拍子に乗っていた男も地面に投げ出された。
これを三人分繰り返したので、あっという間に全ての敵が地面に倒れて呻いているよ。これをわずか3秒間で成し遂げたんだから、ミカ様の技量は恐るべきものだ。
なお、射撃時の音は空気の切り裂かれるパシュっという音しかしないけど、精密射撃装置を構えて引き鉄を引いているミカ様と倒れている敵の対比で誰が倒しているのかは一目瞭然だ。
これを見ていたシゲノリ中佐が化け物を見るような目でミカ様を見ているよ。ちなみにミカ様の素性は明かしていない。旧ファインラントの王族だって言ったら、中佐がどういう顔をするのか見ものだね。
「マリア様、どうですか?私、お役に立てましたか?」
どや顔で聞いてくるミカ様、めちゃ可愛いです。『可愛い悪魔』の二つ名はミカ様に進呈しますよ。
このあと、敵3名を捕縛してから監視拠点へと戻る。倒れた馬を治癒魔道具で治療してあげたのは言うまでもない。
捕虜たちは小口径の弾丸が太腿を貫通しているだけだから出血も少ないし、全く命に別状はない。ほんと良い腕だ。ゴ○ゴ13。
さてといよいよ尋問タイムだね。ふふふ。