020 ナタリア先生の家名
ナタリア先生の叙爵が正式に決まったそうだ。
準男爵家らしい。貴族としては最下位ながらも平民とは格段の違いがある。
貴族のしきたりなどの教育係が必要なんだけど、なんとお母様がその役目をかってでた。
ただし、その授業にはお兄様と私も一緒に出席することになったのは、なんとも言い難い。でもナタリア先生と同じ立場で学べるのは新鮮な気持ちではある。教師と生徒ではなく、ご学友ってやつ?
「ナタリア先生、叙爵の件、おめでとうございます」
「ありがとうございます。そうだ、マリア様に一つご相談があるのですが」
「はい、何でしょうか?」
「新しく一家を立てることになったわけですが、その家名をどうしようかと…」
お父様やお母様じゃなく、なんで5歳児に聞くかな?
それはともかく、どうやら今までの貴族家とかぶってさえいなければ、自分の家名を自由に名乗ることができるそうだ。
なお、貴族家では名前と家名の間には必ずフォンが入る。
だったらこれしかないだろう。
「先生、ノイマンが良いと思います!」
「ノイマンという貴族家はありませんから、多分大丈夫ですね。なぜノイマンなのかお聞きしてもよろしいですか?」
そんなの尊敬するフォン・ノイマン先生から取ったに決まってるじゃん!
前世の話だから言えないけど。
「いえ、単に語感が良いかなぁと思って…。深い意味はありません」
「そうですか。ナタリア・フォン・ノイマン。うん、良い感じですね」
ナタリア先生も嬉しそうにしている。きっと偉業を達成するはずだ、フォン・ノイマン型コンピュータを生み出すかもしれん。
あと、お兄様と私の家庭教師は続けるそうだ。
領地を持つ貴族ではなく、国から年金が支給される法衣貴族ってやつらしい。
なので、領地経営とかしなくてすむので、忙しくないとのこと。
王宮に出仕するとかなったら忙しくなるんだろうけどね。今のところはそういう話は無いらしい。良かった。
そういえば貴族家の家庭教師って子弟が何歳までやるんだろ?
高等学院入学までなのかな?
ナタリア先生に聞いてみると我が国の学制を教えてもらった。
まず初等学院が8歳から11歳までの4年間。
次に中等学院が12歳から14歳までの3年間。
最後に高等学院が15歳から19歳までの5年間。
大学は無いみたいなので、4・3・5の12年間学ぶことになる。
前世では小中高が6・3・3の12年だったので、同じくらいの学習期間となる。
もっとも前世では大学や大学院があったけど。
ちなみに、貴族は初等学院と中等学院には通わず、14歳までは家庭教師から学ぶのが普通らしい。
なので、学院に通うのは15歳から。あと10年かぁ。できればずっとナタリア先生に教わりたいな。
あと平民は義務教育の初等学院には全員通うけど、中等学院に進学するのは3割くらいらしい。
さらに高等学院まで進学する平民はごく一部なので、高等学院の学生はほとんど貴族ばかりとのこと。
平民でありながら高等学院の上位の成績だったナタリア先生の優秀さが分かるな。
なお、これはあくまでも王都民の話であって、各貴族の領地はそれぞれ独自の学制を敷いているらしい。
我が家はどうなんだろ?
うちにも領地があるらしいけど、お父様もお母様もずっと王都にいる。てか、私はまだ我が家の領地に行ったことがない。
どうやらほとんどの貴族家では領地には代官を置いて経営させ、当主は王都にいるのが一般的らしい。まかせっきりじゃなく書類とかはチェックしてるみたいだけどね。
悪代官とかいるのかな?将来は諸国漫遊して悪代官を懲らしめる旅とかしたりして…。
夢が広がるな。ぐふふ、お主も悪よのう。