195 帝国派遣団
緊急事態ということで仕事や学院の授業を無視して、関係者を招集した。
工房新社屋の4階大会議室に集まっているのは以下の13名だ。私を入れて14名だね。
・お父様 (グラハム・フォン・シュトレーゼン男爵)
・お母様 (メアリ・フォン・シュトレーゼン)
・お兄様 (シュミット・フォン・シュトレーゼン)
・お義姉さま (ペリーヌ・フォン・シュトレーゼン)
・ミカ様 (ミカ・ハウハ)
・アレン (アレン・フォン・リヴァスト)
・ルーシーちゃん (ルーシーメイ・フォン・シャミュア)
・ロザリーちゃん (ロザリー・フォン・シャミュア)
・ブレンダ
・リオン君 (リオン・フォン・ライアン)
・クラレンスさん (工房長…魔道具職人)
・リヒャルトさん (工房長補佐…魔道具職人)
・シャルロッテさん (シャルロッテ・フォン・シャンポリオン…魔道具職人)
全員を前にして私は話し始めた。
「陛下のご命令によりガルム帝国へ赴くことになりました。グレンテイン王国特命全権大使に任命するとのことです」
それから人選について任されたこと、予算も王国から出ることなどを話して、皆の反応を伺ったけど全員漏れなく驚いていた。そりゃそうだ。私も驚いたからね。
「つい最近まで戦争をしていた相手です。危険な旅になることと思いますが、ともに帝国へ行ってくれる方を募集します。任務は大陸外から来た来航者の調査です。調査任務といえど、戦闘になる可能性もあります。それを踏まえた上で立候補していただければ嬉しいです」
最初に発言したのはアレンだった。
「マリアさん、僕は同行するよ。シュトレーゼン一家と職人さんたちはやめておいたほうが良いと思う。何だったら僕だけでも…」
うん、アレンについては予想通りだ。行けないよって言われなくて良かった。
これを受けてお兄様が難しい顔で発言した。
「僕も行ければ良いんだけど難しいな。あ、ペリーヌ、君は絶対にダメだよ」
「ええ、あなた。マリア、ごめんなさいね。きっと足手まといになるから行けないわ」
このときは発言の意味が分からなかったんだけど、あとから分かったのはペリーヌお義姉さまのご懐妊だったよ。やったー、おめでとう!
私としてもお兄様とお義姉さまには王都にいてほしい。
続けてリオン君、ルーシーちゃん、ロザリーちゃん、ブレンダの順で友人たちが発言した。
「マリア姉ちゃん、今度こそ僕も行くよ。学院は休学すれば良いから」
「私はマリアちゃんの護衛ですわよ。当然行きます」
「マリアお姉さまの一大事です。私も連れて行ってください」
「マリア、今こそ恩を返すときだね。役に立てるかどうかは分からないけど一緒に行くよ」
ブレンダ、恩なんて無いし、仮にあったとしても返さなくて良いよ。でも同行してくれるのは嬉しい。
最後の立候補者はミカ様だった。
「マリア様、帝国のためではなく王国のためなんですよね。この国に受けたご恩に報いるためにも同行させてください」
ミカ様は幼くても精密射撃装置を持たせれば重要な戦力になるからね。
職人たち(クラレンスさん、リヒャルトさん、シャルロッテさん)は餞の言葉をかけてくれた。
「嬢ちゃん、俺たちは戦闘力が無いからついて行けねぇ。だが、工房の留守はしっかり守るからよ」
「ええ、お嬢様のご活躍をお祈り致します。できれば帝国製の珍しい魔道具をお土産に持ち帰っていただければ…」
「マリアお嬢様、一緒には行けませんが何かあれば通信魔道具でお知らせください。魔道具や古代語のご質問にはできるだけ対応させていただきます」
リヒャルトさんはブレないなぁ。うん、もしも珍しいものがあったら買ってくるよ。シャルロッテさんの言葉も心強いね。
締めくくりとしてお父様とお母様が言った。
「マリア、本当は陛下のご下命を拒否したい。反逆罪に問われてもな。しかし、それができぬ私を許しておくれ」
「マリア、どうか無事に帰ってきてね。結婚もせずに死ぬことは許しませんよ」
いや、お母様。相手がいないよ。いやみか?いやみなのか?
まとめると、同行者はアレン、リオン君、ルーシーちゃん、ロザリーちゃん、ブレンダ、ミカ様の6名ってことになる。
まだ幼いミカ様を連れて行くのはどうかな?って気もするけど、目の届くところにいてもらったほうが私も安心できるからね。
「みんな、本当にありがとう。帝国皇帝に恩を売っておけば、あとあとミカ様のためにも役立つと思うんだ。それに我が国の安全保障にとっても、重大な任務なのは間違いありません。どうかよろしくお願いします」
私が頭を下げると全員から拍手が巻き起こった。よし、頑張るぞ。