183 亡命政府
ミカ様を保護してから早くも一か月が過ぎ去った。グレンテイン語の学習も順調で、単語によっては聞き取れないものもあるけど、ヒアリングに関してはほとんど問題ないレベルまできている。この子はかなり頭が良いよ。
そんなとき、アメリーゴ共和国から発表された内容に、ミカ様をはじめ私たちは驚くことになる。
共和国に亡命してきたファインラント王国の第二王子殿下と側近数名を中心にファインラント亡命政府を発足させたとの一報だ。
第二王子ってことはミカ様の従兄弟ってことだね。
ファインラントから他の小国伝いに移動する場合、グレンテイン王国よりもアメリーゴ共和国のほうが適している。なので、逃げ出した亡命者は共和国のほうに多く集まったのだろう。
王子の印象をミカ様に聞いてみた。なお、言語学習のためにも最近はグレンテイン語で会話している。
「ミカ様、ファインラントの第二王子殿下って、どのような方なんですか?」
「はい、3年前の情報しか、ありませんが、温厚で、争いごとの嫌いな、お優しい方ですわ。今は24歳に、なったはずです」
まだまだ訥々と話すことしかできないけど、これだけしゃべれれば十分だよね。
てか、温厚な方かぁ。まぁ、現在の状態は分からないけどね。
「ミカ様が亡命政府に合流したいのであれば、共和国までお連れ致しますよ」
「ご迷惑、でなければ、ここに置いて、いただけませんか?マリア様の、お側が、良いのです」
「もちろん良いですとも。ミカ様の御心のままに」
少なくともミカ様が成人するまで、つまりあと9年は大切に保護するよ。もちろん、その前にファインラント王国に戻れれば一番良いんだけどね。
家族が誰もいなくなった祖国に戻って幸せかどうかは分からないけど。
ちなみに今日は休日でうちの屋敷にリオン君が遊びに来ている。
実姉であるペリーヌお義姉さまに挨拶してから、ミカ様と私のいる応接室にやってきた。
「マリア姉ちゃん、こんにちは。ミカ様、ご機嫌いかがでしょうか?」
「リオン君、いらっしゃい。今、お茶の用意をさせるよ」
「リオン様、ごきげんよう。お会いできて、嬉しいです」
「ミカ様、この国の言葉が上達しましたね。驚きました」
ふふふ、どうだね。これが天才というものだよ。
それにしてもミカ様はリオン君のことが気になっているみたいで、顔が赤くなってるよ。可愛いな。
「そうだ、マリア姉ちゃん。今年の秋の学院の武術大会、見に来てくれよな。僕も出場するからさ」
「ああ、槍術部門だよね。もちろん見に行くよ。ミカ様もご一緒にどうですか?多分リオン君が優勝するところが見られますよ」
「はい、それはぜひ、行きたいです。優勝して、くださいね」
にっこりと微笑む天使の笑顔だ。お、リオン君もこの笑顔にハートを撃ち抜かれたんじゃないか?顔が少し赤いよ。ふふ。