182 精密射撃装置と自動連射装置
サブマシンガンの試作品が完成したそうなので、工房を訪れた。リヒャルトさん、仕事が早いからなぁ。
銃床部分が大きいのは、この中に魔法陣が納められているから(ライフル銃も同様)。ライフル銃に比べて全長は短く、片手で扱えるようになっている。
高威力のライフル銃の検証は無理だけど、サブマシンガンの威力だったら屋敷でも検証できるだろう。そこで、うちの魔法練習場で発射実験をしてみることにした。
跳弾が怖いので鉄製ではなく木製の的を立てて、それを狙う。腰だめで引き鉄を引くと弾丸がシャワーのように発射された。
3秒間ほどの連射で30発が発射された(多分)。30メートル先に立てていた複数の的は全て粉々になったよ。よし、良い感じ。
ライフル銃が貫通力重視で殺傷力高めなのに対し、サブマシンガンは面制圧射撃で敵を負傷させることを目的として開発した。いや、どう見てもこれって殺傷力高いよ(生身の人間相手なら)。
毎秒10発はかなり凶悪です。まぁ、フルプレートアーマー装備の敵が相手だと、貫通できなくて倒せないかもしれないけどね。
どうでも良いけど、魔道具の正式名称を決めなくてはならない。
ライフル銃とかサブマシンガンとか言ってるけど、前世での名称だからあまりよろしくないね。
狙撃銃のほうは『ライフル』でも良いんだけど、特徴が分かる名称のほうが良いよね。うん、『精密射撃装置』にしよう。
サブマシンガンはどうしよう?日本語なら短機関銃だけどね。引き鉄を引きっぱなしで連射できるから『自動連射装置』って名前にするか。って、かなり適当だな。
余談だけど、例のガラス工房で作られた老眼鏡は大発明として、あっという間に王都中に噂が広まったよ。欲しがっている老眼の高齢者の方が多くいるみたいだね。
それとシャルロッテさんが作った望遠鏡も老眼鏡ほどじゃないけど大反響を呼んだ。別に大々的に発表してないんだけど、どうやら口コミで広まったらしい。
どちらも魔法や魔道具とは全く関係ない光学系の発明で、ガラスをカットして磨く技術さえあれば誰でも作れる点が素晴らしいわけですよ。もちろん『ガラスをカットして磨く技術』はガラス工房にしか無いんだけどね。
なので、王都中のガラス工房がこぞって老眼鏡や望遠鏡作りに乗り出したらしい。特許制度が無いから仕方ないね。まぁ便利なものが世の中に広まるのは良いことだよ。
さらに余談なんだけど、シャルロッテさんは超高給取りで裕福である上、今回の望遠鏡で発明者としての名声も得た。シャルロッテさん自身は『マリア様が本当の発明者なのに』と言って固辞しようとしたんだけど、私が強引にシャルロッテさんに押し付けたんだよ。なにしろ、目立ちたくないからね。
そしたら最近になって、父親のシャンポリオン伯爵が何かとすり寄ってくるようになったんだって。シャルロッテさんを家から追い出したくせに…。
もちろん、全く相手にしてないらしいけどね。ざまぁ。
噂ではシャルロッテさんの腹違いの兄がシャンポリオン家の跡継ぎだそうだけど、どうにも出来が良くないらしい。まさか後継者を変更するつもり?
ダメだぞ。シャルロッテさんはうちの貴重な戦力なんだから絶対に渡さないよ。