180 ライフルスコープ①
狙撃銃の口径は8ミリメートルにした。オリジナルのストーンライフルが10ミリ口径なので少し小さめだ。弾丸の長さは30ミリメートルなので、かなり細長い。
有効射程距離は約1キロメートルを想定している。
モース硬度は8でタングステン以上だ。初速は1000メートル/秒で設定した。
魔力量は公式にあてはめると192になる。
これなら魔石1個でかなりの弾数を発射できるだろう。
サブマシンガンは口径9ミリメートル、長さ10ミリメートル、初速400メートル/秒、モース硬度6にしたので、1発あたりの魔力量は16だね。
ただし、こちらは引き鉄を引いている間、断続的に弾丸が発射される。毎秒10発を発射するとして、魔力量は160/秒となるわけだ。
なお、有効射程距離はせいぜい100メートル程度を見込んでいるから、基本的に近接戦用だね。
もちろん通常の兵器(弓矢)や詠唱魔法からすれば、圧倒的に遠距離から攻撃できるんだけど。
描き上げた魔法陣2種類を工房に持参して、試作品製作を依頼した。
なお、魔法陣開発期間は2種類描いて二日間だった。ストーンライフルの魔法陣を魔道具向けに描き直すのは超簡単だったよ。
スコープ製作が最も難航しているんだけど、狙撃には絶対に必要だからなぁ。
シャルロッテさんがガラス工房へ打ち合わせと進捗状況チェックに行くというので、私もついていくことにした。
私が設計したのは、接眼レンズ(凸)と対物レンズ(凸)の間に透明な板に十字線の入ったレティクル板があるだけのめちゃくちゃ簡単な構造だ。これだと上下が逆(倒立像)になっちゃうけどね。
上下が逆さまにならないようにするには、接眼レンズと対物レンズの間にも複数枚のレンズが必要だけど、構造が複雑になりすぎるからなぁ。
本物のテレスコピックサイト(ライフルスコープ)は当然のことながら上下が逆になることはない(正立像)んだけど、構造をよく知らないんだよ。てか、普通の人は知らなくて当然だ。
なお、凹レンズは作れるはず(ルーシーちゃんやシャルロッテさんのかけている近視用の眼鏡が存在するので)なので、接眼レンズを凹レンズにすれば正立像(上下が逆にならない)にできるね。やはり正立像のほうが良いだろうな。
「こんにちはー。お邪魔しまーす」
シャルロッテさんがガラス工房の入口から声をかけた。
「はーい。ああ、シュトレーゼン工房の方ですね。こちらへどうぞ。おや?今日はお二人ですか?」
「はい、今日は私の上司も一緒に来ました」
「初めまして。シュトレーゼン家のマリアと申します。よろしくお願い致します」
「え?もしかしてお貴族様でしょうか?いや、まさか。こんなところに貴族の方が来るわけないですよね」
「ああ、一応男爵令嬢ではありますが、お気になさらず。どうか普通に接してください」
ちょっと驚かしてしまったかな。まぁ普通の貴族はこんなにフットワークが軽くないからね。
この世界、なぜか近視用の眼鏡(凹レンズ)はあるのに、遠視用または老眼用の眼鏡(凸レンズ)がない。だから天体観測用の望遠鏡も生まれていないし、虫眼鏡つまり拡大鏡もないのだ。不思議だなぁ。凹レンズより凸レンズのほうが作りやすそうなのに。
凸レンズで老眼鏡ができることを教えてあげたら、すごく喜ばれた。ここの工房主さん、そろそろ近いところにピントが合わなくなってきているらしい。レンズ磨きなどの細かい作業を行うためにも、まずは老眼鏡を作ってみると意気込んでいたよ。
結局、スコープの対物レンズとなる凸レンズは直径や厚みなど色々な大きさのものを作ってもらうことにした。接眼レンズは凹レンズにして、やはり少し小さめでいくつかのタイプ(直径や厚み)を発注したよ。
一週間後の納期を約束したので、出来上がりが楽しみだ。あ、ちなみに依頼したのはレンズのみなので、スコープとして組み立てるのはシャルロッテさんの役割だね。