162 国境砦に到着
ようやくガルム帝国との国境の砦に到着した。
共和国最初の街ではトラブルもあったけど、それからは平穏無事な旅路だった。
輜重部隊長のカイルさんが到着の報告を入れたあと、私たち4人だけが会議室みたいなところに招き入れられた。
しばらく待っていると年配で恰幅の良いまさに武人って感じの人たち3人と副官みたいな若い人たち3人が部屋に入ってきた。
その中の一番偉そうなおじさんが発言した。
「儂が第1師団長であり、この派遣軍の司令官を兼任するヒンデンブルグ公爵家のパウルである。陛下の命令書は拝見した。遠い旅路をご苦労であったな。ゆっくりと身体を休めてくれたまえ」
おお、良い人っぽいおじさんだ。若造だからと馬鹿にされるかと思ってたけど、さすがは公爵家の方だね。ちなみに公爵は王室の縁戚になる。
残りの二人のおじさん(第2師団長と第3師団長だった)が自己紹介したあと、私たちもアレンから順番に自己紹介していく。
「リヴァスト侯のご子息だったか。お父上はご息災かな?」
「はい、日々王宮での執務に追われております。私も王室主催の舞踏会では皆様方をお見掛けしたことはあるのですが、こうしてお話しできる栄誉を賜りましたこと恐悦至極にございます」
さすがはアレンだ。挨拶にそつがない。見習いたいものだ。
ルーシーちゃん、リオン君と挨拶が進み、最後に私の番になった。
「シュトレーゼン男爵家のマリアと申します。このたびは新型魔道具の輸送とその使用法の説明に参りました。どうぞよろしくお願い致します」
「ほう、お主がシュトレーゼンの…。お初にお目にかかるが、噂ほど怖そうではないな。いや、『可愛い悪魔』とはよく言ったものだわい」
は?なにその二つ名。聞いたことないよ。
公爵様は機嫌よく笑っているけど、私は引きつった笑みを浮かべるしかないよ。
「まあ、とにかく今日は着いたばかりで疲れているだろう。仕事は明日からやってもらうとしよう。おい、皆さんを部屋に案内せよ」
私たちの宿泊場所となる部屋の案内を副官っぽい人に命じて、師団長3人は部屋を出ていった。
うむ、さっきの二つ名について問いたい、問いただしたい。いったいいつから呼ばれてるの?