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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(1年目)
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157 治癒魔道具の発表会

 新社屋(いや、会社じゃないけど)に移ってから二週間、治癒魔道具の製造は順調で、倉庫の在庫も200個になった。そろそろ新製品発表会の準備も必要だね。

 発表はあまり大々的に行わず、医療関係者のみを集めてこっそりとお披露目する形になる。まぁ他国の密偵には感付かれるとは思うけど、それでもできるだけ秘匿したい。

 通常業務に加えて発表会の準備にも忙殺されている私…。もう学生じゃないんだし、仕事が忙しいからって文句を言うほど子供じゃないつもりだけど、それでも言いたい。忙しすぎる!

 従業員を増やせる物理的スペースが確保された今、従業員募集を広く周知しても良いのでは?と思ったんだけど、やはり難しいみたい。絶対に技術を盗もうとする産業スパイがやってくるはずだし、それを面接で見抜けるかどうかが保証できないんだよ。鑑定魔法ではスパイかどうかは分からないからね。

 今まで通り、伝手(つて)を頼って信頼できる人を雇っていくしかない。てことは、なかなか人が増えないので、私の負担が減ることもない…。ふぅ。


 さらに二週間後、ついに新製品発表会当日になった。

 王都中心部にある大きな会場を今日一日だけ借り上げて、そこに医療関係者を招いている。入口では招待状と身分証明書のチェックを行って不審者の入館を(はば)んでいるけど、まぁ気休めだね。私が全員分の招待状や身分証明書の鑑定を行えば偽造は見抜けるけど、そんなこととてもじゃないけど無理だよ。

 実際に治癒魔道具を販売する際には、購入希望者の身分証明書を鑑定するつもりだけどね。


 招待状を送ったのは医療機関あてだったので、実際に何人が来るのかは分からない。一つの医療機関から複数の医師や看護師が来るかもしれない。

 とりあえず100余りの医療機関からそれぞれ2、3人来たとしても会場に入れるように、定員300人の会場を借りているから大丈夫だろう。


 そろそろ開催時間が近づいてきた段階で、送付した招待状を全て回収したことが確認できたため受付処理は終了した。結局、参加人数は289名だった。

 コンサートホールみたいな会場の中に入ると、壇上にはお兄様と工房長であるクラレンスさんが右側にある席に座っている。経営側(スタッフ)のトップと製造側(ライン)のトップだね。壇上の左側の席には実証実験で協力してもらった治療院の医師たちが座っている。中年の男性医師と若い女性医師だ。


 お兄様が中央の演壇に上がり、開催を宣言した。

「お集まりの皆様、本日は私どもの開発した新型魔道具の発表会にお越しいただきありがとうございます。この魔道具は医療の現場できっと役立つものになると確信しております」

 拍手が()き起こり、それが納まるとともに魔道具の説明が始まった。

 メインの説明はお兄様が行い、技術的な質問への対応などはクラレンスさんが行う予定だ。


 治癒の『場』を形成という話になると会場が騒然となった。「不可能だ」とか「画期的な発明だ」などと勝手な発言が会場内を埋め尽くす。

 中年の男性医師が立ち上がって中央の演壇に歩み寄り、お兄様と交代して話し始めた。

「私は国立中央治療院の医師ウィルと申します。皆さんの疑念はもっともですが、この魔道具で一か月間の実証実験を行った私の話を聞いてください」

 その言葉で会場は(しお)が引くように静かになっていった。

 ウィルさんが(たずさ)わった多くの事例を話し始めると、会場内のあちこちから感嘆の声やうめき声が聞こえてくる。内科的な病気には効果が無いという話になったときは、あからさまにほっとした様子の医師たちも見受けられた。


 ウィル医師に替わって若い女性医師アンネットさんが演壇に立って、最初の事例(内臓損傷で死にかけの男性を治癒した件)について語ってもらったときには会場内が感動の空気に包まれたよ。うん、あれは私も感動した。


 最後にお兄様から細かい機能説明や制約事項、販売は王宮の命により登録制とすること、販売価格などが説明されていった。

 特に販売価格が100万エントであることを聞いた瞬間の驚愕と、そのあとの大歓声はこの発表会が大成功だったことを証明するものだったね。


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