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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(1年目)
155/303

155 治癒の魔道具④

 これまでうちの工房の魔道具開発では民生品と軍用品を作ってきた。ただし、軍用といっても防御結界などの防御用だから、決して人殺しの道具ではない。

 実は魔道具にも攻撃魔法を発動できるものが存在するし、帝国では軍に多数配備している。

 ブレーン会戦のときは相手にそれを使わせないうちに勝っちゃったけど、共和国戦では使いまくっているらしい。うちの防御結界装置が張る防御結界は壊せないけど。

 帝国製の魔道具はファイアアローやストーンバレットなどの魔法が発動できるものだそうだ。威力の高いファイアボールやストーンライフルじゃない理由は、それらが詠唱魔法で実現できないから。要するに帝国魔導師は魔法陣の魔法を知らないので、魔道具化しようにもできないわけだね。まぁ、それは王国側も同じだけど。


 多分私が描こうと思えば描けるものとしてストーンキャノンを発動する魔道具用の魔法陣がある。そう、戦略級攻撃魔法だ。消費する魔力量が多いから難しいかもしれないけどね。

 確信をもって描けると断言できるのは、通常の攻撃魔法の魔道具用魔法陣だ。ほかの魔道具工房が作っているものとは比較にならないほど、高威力のものになるはずだ。

 でもなぁ、これって人殺しの道具なわけですよ。現在この世界では私を含む7人だけが魔法陣の使い方を知っているんだけど、全員が魔法の使用において高いレベルで自制心が働く人間だ。つまり魔法を濫用(らんよう)しない、信頼できる仲間たちというわけだね。歴史書には『7人の賢者』とか記されたりするかもしれない。冗談だけど。

 しかし、魔道具で簡単に高威力の攻撃が実現できるようになった場合、それを使う人間が適切に運用できるとは思えないんだよね。銃や砲が発明されたあと世界がどう変わったかを知っている私としては、そんな道具を作りたくないよ。


 でも全く戦争が終わりそうにないこの(くそ)ったれな現実を見ると、少数だけでも作ったほうが良いのかな?と思わなくもない。

 帝国にしても共和国にしても、さらに王国にしてもこれぞという決定打が無いんだよ。逆にそういう一手を考えた国が勝利者になるのかな。

 本当は王国には私たち7人というその一手が存在しているんだけどね。強制的に徴兵されないのはこの国の良さ、というか陛下の人柄か。


 そんなことを考えているとお兄様が王宮に呼び出された。おそらく治癒の魔道具の件だろう。


 夕刻、王宮から帰宅したお兄様は工房幹部(お父様、お義姉(ねえ)さま、アレン、ルーシーちゃん、クラレンスさん、リヒャルトさん、シャルロッテさん、そして私)を集めた会議室で報告を始めた。

「王室に献上した治癒の魔道具の件でお()めのお言葉をいただきました。開発に(たずさ)わったマリアと職人たちには特に感謝するとの陛下のお言葉でしたよ」

 それを聞いた職人たち(クラレンスさん、リヒャルトさん、シャルロッテさん)が感無量の表情になっている。そりゃ嬉しいよね。


 このあと、お父様の質問に対するお兄様の回答という形で会話が進んでいった。

「販売の制限や軍への納入などの話は出なかったのかね」

「はい、まず販売制限に関してですが、医療機関ごとにシリアルナンバーを付けて販売します。どこに何番の製品を納めたのかを管理簿に記し、横流しさせないように管理することになります」

「うむ、他国への流出は防がなければならないしね」

「ええ、そして王国軍への納品についてですが、1個小隊につき1個の魔道具を納入単価1000万エントで納品するという話になりました。もちろん王宮側の言い値です」

「4個師団で800個…つまり、80億エントの売上になるのか」

 販売の管理、面倒くさい…。王国軍への納品、ぼったくり…。お父様とお兄様以外の全員、目が点…。


「さすがに民間の医療機関への販売単価が100万なのに、軍用がその10倍というのは問題がありますので、こちらからの提案として納入単価100万で納入数量を4千個にしてほしいと申し出ました」

「うむ、1個分隊10名につき1個ということか。そのほうが良いだろうな。私も賛成だ」

「はい。職人の皆さんには苦労をかけますが、軍用だけで1年間に4千個を製造していただくことになります。医療機関用も含めるとさらに多くなりますが、製造スケジュールの調整などよろしくお願い致します」

 うへぇ、また大仕事だな。軍がからむと納入期限もあるし、必ず忙しくなるんだよな。面倒くさい。


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