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015 家庭教師ナタリアの回想③

 今日はマリア様と博物館へお出かけです。

 男爵家の馬車で移動し、博物館の前へと乗り付けました。


「先輩、こんにちは」

 学芸員である学院の先輩のグレゴール様が出迎えてくれたので挨拶します。

 マリア様を紹介し、先輩との関係性などを話題にしながら来館目的を伝えました。

 どうやら閉館後の短い時間なら魔導書の閲覧も可能なようです。良かった。マリア様も喜ぶことでしょう。


 閉館時間まで博物館の中を見て回ることにしたのですが、マリア様の体力では1時間も歩けばふらふらのようです。

 広い博物館内には数か所の休憩所が設けられており、その一つに座って足を休めることにしました。

 幸い閉館時間はもうすぐです。


「おぅ待たせたな。こっちの閲覧室へ来てくれ」

 閉館アナウンスが流れてすぐに先輩が呼びにきました。

 連れられて行った先の閲覧室ではマリア様白手袋事件がありましたが、この光景は私の心の中に永久保存されるべき尊いものでした。ぶかぶかの手袋をしたマリア様、まじ天使。


 それからマリア様の手で魔導書が開かれ閲覧が始まりました。

 予想では左側の魔法陣ページをメインにきれいな模様の魔法陣を探すのかと思いきや、見ているのは古代語で書かれた右側のページです。

 特に一番上の段のタイトルと思しき個所を目で追っているようです。

 まさか読めてるなんてことはないよね?


 次々とページがめくられていき、あるページで動きが止まりました。

 左側のページの魔法陣を見ているのではなく、右側のページの古代語を上から下まで見ています。いやこれ読んでるよね?どう見ても読んでいるときの目の動き方です。

 しかもマリア様の喜びが伝わってきます。目が輝いているもの。


「あの、この魔法陣を転写していただきたいのですが」

 マリア様のお眼鏡にかなう魔法陣が見つかったようです。それを見てみると、以前入手した3枚の魔法陣とは比べ物にならないくらい複雑で緻密な模様の魔法陣です。

 よほど大規模な魔法なんでしょうね。


 ただグレゴール様も私も、マリア様の古代語が読めているかのような動きを見ていたため、すぐには反応できず少し挙動不審になってしまいました。

「お、おう。分かったぜ。転写の申込書はナタリア、おまえが書け」

「そ、そうね。すぐに書くわ。申込書をいただけるかしら」

「では75番の魔法陣をよろしくお願いします」

 私は75番魔法陣の転写申込書を記載して、旦那様から預かっていたお金を支払いました。


「先生、今日は博物館への引率のみならず、魔導書の閲覧もさせていただき誠にありがとうございました」

 幸せいっぱいな様子のマリア様にほっこりしながら、次の課外授業では街の市場なんかにも連れて行ってあげたいなぁ…と思いつつ、馬車でお屋敷へと送り届けました。

 はぁ、今日は良い一日でした。古代語読める疑惑については私は何も見てないし、何も考えないってことにしましょう。あくまでも私はマリア様ファーストです。


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