142 戦後処理
「我々は罠にかかったのでしょうか?」
軍使の第一声がその言葉だったらしい。あ、その場にいなかったので、後で辺境伯様から聞いたんだけどね。
私たちの存在は最高機密なので、戦いの間ずっとトーチカの中にいたのだ。
何らかの新型魔道具を埋めた場所に部隊を誘導され、そこで魔道具を発動させた…そう考えているみたいだね、帝国軍は。
ブレーン川を挟んだ戦いだったので、公式記録にブレーン会戦と記されるようになったこの戦いは、王国の圧倒的な勝利として記録されることになった。
その内訳は以下の通り。
・帝国軍参戦者数:80,125名
・王国軍参戦者数:13,076名
・帝国軍死者数:129名
・帝国軍負傷者数:2,475名
・帝国軍行方不明者数:83名
・王国軍の損害無し(ただし、撤退戦での死傷者数は1,924名)
損耗率を計算すると王国軍が13%であるのに対し、帝国軍はわずか3%にすぎない。
死者数が案外少ないのはストーンキャノンが純粋な爆圧のみで敵を倒す魔法であり、凶悪な破片飛散効果をあえて盛り込まなかったせいだね。
味方に踏み潰されたり、川で溺れたりした兵士も死者数に含んでいるので、魔法での純粋な死者数はもっと少ない。50ミリ砲弾が直撃した兵士だけだろう。
でもわずか数分の戦闘で2,687名を戦闘不能にしたのは特筆すべきだ。1個連隊分が丸々消えたわけだからね。
あのタイミングで降伏しなければ後方の司令部を重点的に攻撃して、指揮命令系統をずたずたに寸断する予定だった。そうなれば死傷者数はかなりの人数になっただろう。降伏してくれて良かったよ、まじで。
帝国軍の資材で帝国兵士に仮設橋を作らせて、その後8万人近くを武装解除する。その作業にあたるのが王国軍1万3千名なんだけど、不穏な動きをする者がいないかトーチカの中から監視を続けるのは大変だったよ。
戦争って、終わったあとが面倒くさいよね。
あぁ捕虜収容所を誰が作るんだろう?辺境伯様?それともシュトレーゼン家?
もしもうちだったらセバスティアンさんに丸投げしよう。