014 博物館②
アイテムボックスの魔法陣の説明を読み込んでいると、なんだか視線を感じた。
グレゴール氏とナタリア先生のことを忘れてたぜ。
あまりに同じページを見続けていると不審に思われるよな。しかも読めないはずの古代語の説明文のほうを。
「あの、この魔法陣を転写していただきたいのですが」
「お、おう。分かったぜ。転写の申込書はナタリア、おまえが書け」
「そ、そうね。すぐに書くわ。申込書をいただけるかしら」
なんだか、二人の挙動が変だ。おどおどしてるけど大丈夫だろうか?
魔導書にはページごとに付箋が貼られており、そこに連番でナンバリングされている。
空間魔法の魔法陣の数字を確認したところ75番だった。
「では75番の魔法陣をよろしくお願いします」
そう言うと次のページをめくっていく私。
ただ、面白そうな魔法はたくさんあったが、実験できそうにないやばそうなものしかなかったので、転写を申し込んだのはアイテムボックスだけだ。
最後のページを見終わり、裏表紙を閉じるとグレゴール氏にお礼を言った。
「グレゴール様、本日はとても貴重な魔導書を閲覧させていただき、本当に感謝致します」
「ああ、礼ならナタリアに言ってやってくれ。普通はこんなにじっくり見せることなんてないんだからな」
おぉ、ナタリア先生のコネすごい。いや、グレゴール氏のナタリア先生への好意かな?
「先生、今日は博物館への引率のみならず、魔導書の閲覧もさせていただき誠にありがとうございました」
先生にはほんと感謝だよ。
白手袋をはずしてグレゴール氏へ返し、博物館を後にした。
数日後には転写が出来上がるはずなので今から楽しみで仕方ない。
魔導書の段階で魔法陣を記憶してアイテムボックスを発動することも一瞬考えたけど、やはり家でゆっくり試したいからね。