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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(1年目)
139/303

139 二正面作戦

 グレンテイン王国がアメリーゴ共和国と同盟を結び、ガルム帝国に宣戦を布告してから二週間。

 魔法使いは各部隊に分散配置するのが常識だったこの世界で、魔法使いの集中運用を行う画期的な部隊を機械化機動部隊として作り上げた世界最初の国が我が王国だった。

 航空母艦の集中運用を行う空母機動部隊を作った大日本帝国みたいな感じかな。


 1個大隊600名のうち3個中隊450名が魔法使いで、護衛の騎士が1個中隊150名というアンバランスな構成だ。

 しかし、450人分の火力というのは相当な威力であり、アメリーゴ共和国の国境(とりで)を救援する際に大いに貢献したとのこと。自動車を使って機動力を付与した魔法攻撃力の高い部隊、まさに機械化機動部隊と呼ぶにふさわしい。

 なお、射程の短い魔法であっても前衛の盾無しで運用できるのは自動車化しているからだね。敵が騎馬で突撃してきても自動車には追い付けないから一方的に魔法攻撃可能だ。

 騎馬部隊2個大隊も騎馬に乗るのは護衛の騎士で6個中隊900名になる。残りの2個中隊300名が馬車で移動する魔法使いだ。こちらも魔法使いの比率が普通の部隊よりも高い。


 これにより、共和国の国境砦には王国の魔法戦力750名がすでに到着している。そして敵は谷間の隘路(あいろ)を進軍してくるため、必ず魔法の集中攻撃を受けることになる。一方向のみに火力を集中できる地形なのだ。敵は防御結界を展開しているけど確実に防御できるわけでもなく、実際かなりの損害を与えているらしい。

 これでなんとか、王国からの援軍3個師団の本隊が砦に到着するまでの時間を稼げるだろう。


 なお、これだけの数の魔法使いを育成できたのは、複写発動技術のみを徹底的に訓練した者を揃えたからだ。5分の4つまり600名は詠唱の文言(もんごん)すら知らない。あくまでも部隊としての戦力であり、個人としてはとても魔法使いとは言えないんだよね。

 あ、あと徴発された五輪自動車30台と三輪自動車70台については補償してくれるんだよね?ちょっと心配…。


 共和国方面の戦線については少し楽観的になってたってのに、ここで耳を疑う情報が飛び込んできた。

 ガルム帝国の予備兵力2個軍、8時師団が王国へ侵攻を開始したらしい。国境を守る辺境伯からの緊急連絡だ。帝国は戦略予備を全て投入?まさか…。

 辺境伯軍1個旅団5千名と国境守備のために王都から派遣した1個師団1万名が展開しているけど、敵は8個師団8万名だ。いくら敵に予備兵力が無くなったとはいえ、これはやばい。

 まさか帝国が二正面作戦などという悪手(あくしゅ)を放ってくるとは予想できなかった。いや、実は共和国を攻めている部隊が陽動で、こちらが本命なのか?だとすると作戦を考えた参謀には一目置かざるを得ない。

 辺境伯領を抜かれるとすぐにシュトレーゼン領だ。もしかしたら帝国の狙いはうちの銀鉱山なのかな?

 あ、やばいな。鉱山には古代遺跡『放射性廃棄物保管所』がある。あれが帝国の手に渡ったら大変だ(帝国人が放射線障害になって大変だという意味と、兵器として使用されたら大変だという二つの意味で)。


 とにかく辺境伯領の住民をうちの領に避難させることが最優先だな。住民避難後は遅滞(ちたい)防御に徹して、できるだけ戦力をすり減らさないようにうちの領まで撤退させる。とりあえず辺境伯領は放棄だ。国境線が長くて守りにくいんだよ。

 辺境伯領とシュトレーゼン領の間には川があって、橋さえ落とせば守りやすくなるからね。

 ちなみに援軍については現在王都でも予備兵力の動員をかけているけど、部隊編成できるのは一か月先くらいだろう。とても間に合わない。


 こうなったら仕方ない。私が出るしかない。言い換えれば、戦略級魔法を使うしかないってことだ。

「お父様、お話があります」

 屋敷にいたお兄様、お義姉(ねえ)さま、アレンやルーシーちゃんを交えて会議室でお父様と話し合った。

 私がお父様に打ち明けたのは戦略級攻撃魔法の存在だ。あと、前述の作戦(住民避難と遅滞防御)も伝える。


「マリア、話は理解した。とても信じられないが、マリアが言うのならその通りなのだろう。私はシュミットと一緒に急ぎ王宮へ登城し、陛下とお会いする。そのうえでどのように敵を迎え撃つのかを決めよう」

「分かりました。出発の準備だけ整えて待機します」

 私が了解するとアレンやルーシーちゃんが参戦を申し出てくれた。

「シュトレーゼン男爵、僕がマリアさんを護衛します。必ず守り切ってみせますのでご安心ください。それに戦略級魔法を撃つためには3人以上の人間が必要ですから」

「私も当然参戦致しますわ。マリアちゃんとアレン様と私がいれば戦略級魔法で敵を殲滅してご覧にいれます」


「あ、私も…」

「お義姉(ねえ)さまはダメです。もちろんお兄様も。次代のシュトレーゼン家を(にな)うお二人を戦場にお連れするわけにはいきません」

 ペリーヌお義姉(ねえ)さまの発言を封じるように私が言うと、悔しそうな目で見られたけどこれは譲れない。本当ならアレンやルーシーちゃんも連れて行きたくないんだけど、戦略級魔法を撃つには3人以上が必要だからなー。それにこの二人は絶対についてくるだろうし。


「妹のロザリーには伝えますか?あと、ブレンダは?」

「まだ成人前の学生を戦場に連れてはいけないよ。あと、ブレンダも実家の護衛として王都に置いておいたほうが良いね。この混乱に乗じて犯罪をたくらむやつらが出てこないとも限らないから。あ、それからお兄様やお義姉(ねえ)さまも、もしものときのための重要な魔法戦力として、王都を守っておいてほしいのです」

 移動手段としては後部が荷台になっている三輪自動車がうちに一台残っている。これならうちの領地まで二、三日で着けるだろう。

 3人で発動する戦略級魔法『ストーンキャノン』は硬度5(魔力量3000)の最も威力が弱いものになるけど、それで十分だろう。3人で70発くらいは撃てるしね。


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