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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(1年目)
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136 リオン・フォン・ライアンの回想

 僕がはじめてマリア姉ちゃんに出会ったのは、うちの姉ちゃんが高等学院に入学した年、僕がまだ10歳のときだった。

 うちの姉ちゃんペリーヌ・フォン・ライアンも美人ではあるけど、それよりもずっと可愛くて美しい人だった。もちろん過去形ではなく現在進行形で美しいのは言うまでもない。

 高等学院でできた友達とのことで、ルーシー姉ちゃんやブレンダ姉ちゃんと一緒に我が家に遊びにきたのだ。ちなみに、この二人もマリア姉ちゃんとはタイプの違う可愛い女の子たちで、高等学院には可愛い子しかいないのかな?とか思ったりしたよ。


 うちの姉ちゃんがシュミット・フォン・シュトレーゼン様の婚約者になったときは本当に驚いた。将来はシュトレーゼン男爵様の奥方ってことだからね。

 うちのように平民とほぼ同じ、いや裕福な平民よりもずっと貧乏な準男爵家にとって、超金持ちのシュトレーゼン家と縁戚(えんせき)を結べたのは快挙と言わざるを得ない。姉ちゃんグッジョブだ。

 なお、シュトレーゼン家の悪名は知ってたけど、シュミット様もマリア姉ちゃんも優しくて素晴らしい人たちだった。噂なんかあてにならないよ。


 魔法が使えず剣の腕だけで高等学院に入学した姉ちゃんが、シュミット様の指導で魔法を使えるようになったことも驚いたことの一つだ。

 僕も魔法が使えないけど、練習すれば使えるようになるのかな?


 僕の父上は個人の武力にしても指揮力にしてもとても優れている尊敬できる人だ。王都の騎士団で小隊長の地位にあることについても誇らしく感じている。

 でも僕の剣の腕は父上にも姉ちゃんにも遠く及ばない。小さいころから父上の指導を受けて鍛錬してきたというのに、なぜか全く上達しないのだ。僕の中の何かが阻害(そがい)しているかのような感覚すらある。

 僕が11歳のときのある日、庭で剣を振って鍛錬していたときだ。うちの姉ちゃんがマリア姉ちゃんを我が家に連れてきた。僕の人生を180度変えたそのときの会話を今でも鮮明に思い出せる。


「マリア姉ちゃん、いらっしゃい」

「リオン君、おじゃましますね」

 にっこりと微笑むマリア姉ちゃん、今日も美しいです。


「今日も剣の鍛錬?いつも頑張ってるね」

 本来なら大好きなマリア姉ちゃんに弱みを見せたくないんだけど、このときはなぜか愚痴(ぐち)を言いたくなった。

「うん、毎日練習してる。だけど全然うまくならないんだ。剣の才能も運動神経もないのかもしれない」


 マリア姉ちゃんが何も言わず数秒間だけ僕を見つめたあと、今でも信じられないとても重要な助言をしてくれた。

「鑑定の…いえ何でもないわ。リオン君、あなたには槍、つまり槍術の才能があるの。鍛錬していけば『聖槍のリオン』なんて呼ばれるかもしれないわよ」

 え?槍だって?まさか槍の才能が剣の動きを阻害していたってこと?


「そうね。剣の代わりにするのなら通常の長い槍じゃなくて、1メートルくらいの槍、いわゆる短槍(たんそう)を使うと良いかもよ。もちろん2、3メートルはある長い槍も練習したほうが良いけどね。槍は武器の王とも言われるものよ。その才能があるのは素晴らしいことだと思うわ」


「マリア、何してるの。早くおいでよ」

 姉ちゃんの声に家の中に入っていくマリア姉ちゃんの姿を見ながら、雷に打たれたかのような衝撃に僕は何も言えなかった。


 それから父上に無理を言って短槍(たんそう)長槍(ちょうそう)を買ってもらい、ひたすら鍛錬に励んだ。

 マリア姉ちゃんの言った通り、槍の技量はめきめきと上達し、2年後にはペリーヌ姉ちゃん、3年後には父上にも勝てるようになったのには僕自身が驚愕した。

 しかも父上との手合わせでは短槍と長槍の両方で勝てたんだよね。まぁギリギリ辛勝(しんしょう)って感じだったから、父上が多少手加減してくれた可能性もあるけど。


 そうして僕は高等学院の入試を『武術』で受験し合格することができたんだ。もしもマリア姉ちゃんの一言が無ければ、合格できなかったかもしれない。将来は槍で有名になってマリア姉ちゃんに結婚を申し込むつもりだ。5歳の歳の差なんて関係ないね。


 僕が高等学院に入学した年の6月、ついにうちの姉ちゃんとシュミット様の結婚式が執り行われた。

 式のあとの立食パーティで僕はマリア姉ちゃんに話しかけた。

「マリア姉ちゃん、これで僕はマリア姉ちゃんの弟ってことになるんだよね」

「ええ、そうね。正確に言うと義弟(ぎてい)かな」

「これからは弟としてよろしくね」

 とりあえず弟ポジションを確保したけど、将来の目標は伴侶だよ。


 お邪魔虫のアレン様が会話に割り込んできた。むかつく。

「リオン君、将来は僕の弟にもなるかもしれないね」

「はぁ?アレン様、全然意味が分からないです。マリア姉ちゃんと結婚するのは僕ですよ」

「君こそ言ってる意味が分からんね。マリアさんが君と結婚?そんなことは絶対に起こらないと僕が断言しよう」

 アレン様がマリア姉ちゃんに()れてるのは一目瞭然だ。でもいくら侯爵家だからってマリア姉ちゃんは渡さないぞ。

 僕にはマリア姉ちゃんが認めてくれた槍の腕があるからね。『聖槍のリオン』と呼ばれるようになるまで鍛錬して、マリア姉ちゃんを迎えにいくんだ。


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