126 ボートレース大会の準備①
年が明けてあと少しで高等学院を卒業するという時期に、例の湖で第1回ボートレース大会が開催されるという話が舞い込んできた。
去年も何回かレースをやってたみたいだけど、いわゆる草レースで、あくまでも有志で楽しんでいたって感じの小規模なものだったらしい。
今回開催される大会にはスポンサーもついていて、優勝したチームには賞金も出るとのこと。
そのため、エントリーするチーム数はおそらく30チーム以上にはなるだろうとの見込みだそうだ。
レギュレーションはうちの船外機を1台だけ使うこと、このただ一点のみ。
乗船する人数も船の形も全て自由とのこと。まぁ2人以上が乗ることはないだろうけどね、重くなるから。
競技内容は、スタート地点から折り返し地点を経由して、再度スタート地点に戻ってくるまでの時間を競うタイムアタックレース。
安全面に配慮して一艇ずつ走行する。
このレースでは折り返し地点でUターンする際のコーナリング性能も重要だけど、やはり直線のスピードが最も重要みたいだ。なにしろ折り返し地点までは1キロメートルなので、往復2キロメートルもある。
最高速度がどのくらい出るのか分からないけど、前世の競艇では時速70キロメートルくらいと言われているので、この世界の技術でもその半分くらいの速度は出るんじゃないかな?
同じ推進器を使う三輪自動車が時速50キロメートルくらい出せるしね。
ただし、スタート地点と折り返し地点での加減速を考慮すると、平均時速は30キロメートルくらいになると思う。つまり、分速では500メートルだ。
そう仮定すると、往復2キロメートルのタイムは約4分ってところか。30チームが走るとインターバル無しで120分、つまり2時間もかかるね。
二艇ずつ走らせたほうが良いんじゃないかな?危ないかな?
ちなみにこの話がうちにきた理由は、スポンサーになってお金を出してくれないだろうか…ってことみたい。
一応、すでに複数の大商店がスポンサーとして名乗りを上げているんだけど、うちの船外機を使っている以上、できればうちの名前もスポンサーに入れたいってことらしい。
私としてはお兄様の判断にまかせますよ。
…で、結局、お兄様の判断で運営費用と賞金として1000万エントを提供することになった。なかなかの太っ腹だ。
他のスポンサーがせいぜい100万単位の提供だったので、一躍うちがスポンサー筆頭ですよ。
これにより優勝賞金が500万、2位の賞金が300万、3位の賞金が100万という規模の大きな大会となった。運営事務局の人も嬉しそうだった。
なお、参加するチームは無料で出場できる(ただし、船や船外機は自前で準備)し、観客は無料でレースを観戦できる。なので、おそらく観客は多くなりそうだ。ひな壇状の観客席を作ったほうが良いんじゃないかな。
運営事務局の会議にスポンサー筆頭かつアドバイザーとして呼び出された私は、二艇同時走行と観客席の件を提案してみた。
ちなみに呼ばれたのはお兄様だったんだけど、私に丸投げされた。なんで私がさらに忙しくなってるの?おかしい…。