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117 飛行機械

 ドライヤーの製造で超絶忙しいはずのリヒャルトさんだけど、少なくとも月に一度は新たな起案書(きあんしょ)を持ってくる。

 いつ書いてんだ?まぁ休日しかないか。せっかくの休日を新たな魔道具の起案書作りに(つい)やすとは、どこまで魔道具馬鹿なんだよ。

 学院を卒業するまでは時間に余裕がないから魔法陣を開発できないって、何度も何度も言ってるのに諦めやしない。


 リヒャルトさんの休日が暇なのがいかんのだ。こうなったら、めちゃくちゃ時間のかかる趣味的な開発をさせてやろう。

 10歳のときに作った飛行魔法エアーフライトの魔法陣の構造はかなり複雑なんだけど、この中の風の噴出のみを魔道具用の魔法陣として描き出した。もちろん魔力バッファを使わず、魔石のエネルギーのみで動かす。あと外部入力パラメータを受け付けるI/O(入出力)ポートも設けてスロットル調整ができるようにした。

 I/Oポートは照明魔道具の光量調整やドライヤーの温度調整でも使っているし、機能自体は単純化されているので魔法陣開発にはそこまで時間はかかっていない。

 推力は体重60キログラムの人を宙に浮かせるだけのものなので、約600(ニュートン)ってところかな。消費魔力量は毎分6000くらいになるはずだけど、計測していないのでよく分からない。

 ちなみに、H-2ロケットのエンジンLE-7の推力が1000キロ(ニュートン)で、最も初期のジェットエンジンが6キロ(ニュートン)から8キロ(ニュートン)ってところだったような気がする(よく覚えてない)。それに比べると600(ニュートン)(0.6キロ(ニュートン))はかなりしょぼいな。


 で、この魔法陣を使った魔道具を5つ使えば、人間を乗せて空を飛べるドローンが作れるよね。

 1つは下向き、4つは前後左右に配置すれば(めちゃくちゃ操作が難しいだろうけど)飛べるものができるはず。

 これなら試作品が出来上がるまで5年くらいかかるだろう。その間、私には(起案書攻撃を受けない)平穏な時間が訪れるって寸法だ。


 私は工房を訪れてクラレンスさん、リヒャルトさん、シャルロッテさんの3人を集合させた。

「皆さん、この魔法陣は起動すると風魔法で強力な風を噴出します。その出力調整もできるように設計していますので、これで飛行機械を開発してください。つまり操作する人間自体が空を飛べるような機械ですね。あ、もちろんこれは業務命令ではなく趣味の領域なので、挑戦するもしないも自由ですけど、もしも完成したら私から臨時報酬を出します」

「まーた、面白いもんこさえやがったな、嬢ちゃん。これって夏の暑い日に風で涼むための魔道具ができんじゃねぇの?名付けるならば涼風機ってとこか」

 涼風機?あ、扇風機か。そう言えばこの世界、まだ扇風機の魔道具を見たことがない…。そうだよな、扇風機が存在するなら、ドライヤーも連想できたはずだもんね。


「あー、これ以上新たな魔道具の量産は人員的に不可能なので、涼風機はちょっと置いておきましょう」

 とりあえずこう言っておかないと、リヒャルトさんがすぐに試作品を作りそうだからなぁ。


「人間が魔道具で空を飛ぶんですか?夢のようなお話ですね」

 うん、シャルロッテさん、飛べるよ。ほんの数秒で良いならエアーフライトの魔法を使ってこの場で飛んで見せることもできるけど。


「お嬢様、その飛行機械、ぜひ私にお任せください。すぐに開発計画書を作ってきますので」

 やはりめっちゃ食いついてきたな。ふふ、予定通りだ。これでリヒャルトさんの休日は、この件にかかりきりになるはず。そして私の負担も減る。


「いくつか注意点を述べておきます。まずは通常業務に支障をきたさないこと。身体を壊すまで(こん)を詰め過ぎないこと。飛行実験は危険なので必ず事前に申請すること。良いですか?あくまで趣味的な開発なので、期限も定めません。私の予想では初飛行までに5年くらいかかるとみています。(あせ)らないようにお願いします」

「分かりました、お嬢様。1年で形にしてみせます」

 …って分かってねぇ。そんなに早く開発されちゃうと困るんだよ。


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