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115 工房の新戦力

 クラレンスさんの紹介で一人の女性が工房へやってきた。え?女性?

 髪は肩までの長さで(くし)()いたこともなさそうな感じ。やせ形で度の強そうな眼鏡をかけている年齢不詳の女性だ。身なりに気を使ったことがないように思える。

 少し異臭もするんだけど、お風呂に入ってるの?


「はじめまして。私はこの工房の幹部の一人でマリアと申します。それではいくつか質問させていただきます」

 私の発言で採用面接が始まった。こちら側はお兄様、私、クラレンスさんの3人が横一列に並んでいる。


「まずはお名前と職務経歴をおっしゃってください」

「はい、私はシャルロッテ・フォン・シャンポリオンと申します。すでに実家を出ておりますので、ただのシャルロッテとお呼びください。高等学院卒業後、古代語研究を10年続け、その後ある魔道具師に弟子入りして魔道具製作を3年ほど修行しましたが、つい先月その工房を解雇されました」

 おぉ、情報量多いな。年齢は33歳くらいってことだね。

 元貴族で高等学院も出ているインテリだし、なにより古代語研究だって?どれだけ読めるのか気になるな。


 ここでお兄様が質問した。

「シャンポリオン家というと名門の伯爵家ですよね?家を出た理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「はい、私が両親から示された結婚相手をことごとく断って、家に引きこもって研究ばかりしていたせいで、ついには追い出されました。世間体(せけんてい)も悪いからでしょうね」

「魔道具工房を解雇された理由は?」

「工房の売上低迷で人を雇う余裕がなくなったというのが、解雇理由です」

 あ、また私のせいだ。リヒャルトさんと同じだね。


「古代語研究とおっしゃいましたが、例えば博物館にある魔導書の説明書(せつめいが)きの部分をどれだけ読めますか?」

 これが私の一番聞きたかったことだ。シャルロッテさんは私のほうを向いてしっかりと答えてくれた。

「現時点では半分程度です。あと50年研究できれば、全て読めるようになってみせるのですが…」

 おお!半分も読めるとは素晴らしい。これは超貴重な人材ですよ、お兄様。

 私は机の下でシャルロッテさんに見えないように指で丸をつくってお兄様に見せた。OKサインだ。


「経歴も受け答えも申し分ないですね。それではあなたをうちの工房で雇わせていただきます。今後ともよろしくお願い致します」

 CEO(最高経営責任者)であるお兄様が最終判断をくだした。

 あ、とりあえずお風呂に入ってもらおうかな。


 メイドのジョアンナに頼んでシャルロッテさんをお風呂で磨いてもらった。服や下着については私の持っている平民風の服を貸してあげることに…。見たところ体格がほとんど同じだからね。

 再び工房に現れたシャルロッテさんを見て、クラレンスさんやリヒャルトさんが驚いている。ちなみに私も驚いている。

「ちょちょ、ちょっとシャルロッテさん、眼鏡をはずしていただけますか?」

 眼鏡をとったシャルロッテさんを見て、この場にいる全員が絶句した。

 超絶美人じゃん。面接時の浮浪者っぽい感じが消えて、貴族っぽい雰囲気が満ちているよ。あ、本当に貴族だった。

 リヒャルトさんは独身だし、ほとんど同じくらいの年齢だから熱い視線を送っているね。一目ぼれかもな。


 気を取り直して業務説明を始める。

 魔法陣を使った魔道具という説明には驚愕(きょうがく)していたけど、クラレンスさんやリヒャルトさんも最初は全く同じ反応だったよ。

 製造工程を聞いてあまりにも単純な構造であることにも驚いていたけど、すぐに工房の戦力になれそうだと分かったのか嬉しそうだ。

 結局、構造としては最も単純な防御結界装置をシャルロッテさんに担当してもらい、リヒャルトさんにはドライヤーを担当してもらうことになった。

 あ、そう言えばお風呂上(ふろあが)りの濡れた髪にドライヤーをかけてもらったようで、その便利さにとても感心していたらしい。さらには、ドライヤーを開発したリヒャルトさんを尊敬の眼差(まなざ)しで見ていたよ。良かったね、リヒャルトさん。


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