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113 ドライヤーを作ろう②

 お風呂上(ふろあが)りで濡れた私の髪を乾かすのはメイドさんの仕事だ。

 乾いた布で丁寧に髪の水気を取っていくんだけど、時間がかかる。

「ねえ、ジョアンナ。今日から髪を乾かすときにはこの魔道具を使ってくれないかしら」

 お付きのメイド、ジョアンナにドライヤーを見せて、その使い方を教えていく。

 ブォーという特有の音を出して温風を噴き出すドライヤーをすぐに使いこなしながら髪を乾かしていくジョアンナ。え?めちゃうまくない?前世は美容院で働いてたとか?


「マリアお嬢様、これは良い物ですね。どこで買えるのでしょうか?やはりお高いんでしょうね」

「うん、これはうちの工房の試作品だからタダだよ。好評だったら製品化しても良いけど」

「お、お嬢様。ぜひ製品化をお願い致します。それで、で、できればで構わないのですが、1台20万エントくらいで買えると嬉しいなぁなんて…」

「そうだね。今までに無かった製品だから安くしても文句は言われないだろうし、できるだけ安くできるように交渉してみるよ」

 魔道具って一番安い照明の魔道具ですら50万エントなんだから、20万ってのは破格なんだけど庶民からするとこれでも高いよね。

 あれ?私、自分で仕事を増やしてない?やばい…。


 翌日、工房でクラレンスさんとリヒャルトさんと私で会議だ。議題はドライヤーの増加試作について。

 量産化はとりあえず置いといて、試作品を10台くらい作ってもらう。それをみんなに配って使ってもらうことで、不具合個所や要望を抽出していくのだ。

 お母様、ペリーヌお義姉(ねえ)さま、ルーシーちゃん、ロザリーちゃん、ブレンダ、魔道具店店主の奥さん、こんなところかな?残りの4台は予備として、メイド達の休憩室にでも置いておこう。

「嬢ちゃん、この忙しいのにまーた仕事を増やしやがって、勘弁してくれよ」

 うむ、クラレンスさん、言いたいことは分かる。私もなぜこうなったのか分からん。


「とりあえず10台だけで良いならリヒャルトお前がやれ。最初の試作品を作ったのはお前だから勝手が分かってるだろ?お前の製造ノルマの分は俺が肩代わりしてやる」

「はい、分かりました。一日で終わらせます」

「あ、リヒャルトさん、みんなに試用してもらう分だから早さよりも丁寧さを重視してね。クラレンスさんもありがとう」

 一応、釘を刺しておこう。不具合が起きたら困るからね。


「おう、良いってことよ。俺と嬢ちゃんの仲だからな。あー、あと、すまんが俺の家内の分も分けてくれないか?」

 え?クラレンスさん結婚してたの?うちの屋敷に寝泊まりしてるからてっきり独身だと思ってたよ。

 なんでも単身赴任みたいな感じになってたみたい。

 王都内に家を持っていて、そこに奥さんが暮らしているそうだ。


 その日の夕方には10台の試作品が完成した。全て簡単なテストも済ませている。

 お母様とペリーヌお義姉(ねえ)さまについては同じ屋敷内だからすぐに渡せるけど、ほかの人の分はどうしよう。

 ルーシーちゃんとロザリーちゃん、それにブレンダの分の3台は明日学院で渡そう。アイテムボックスに入れておけば良いね。

 魔道具店店主の奥さんの分は店主さんにうちに来てもらわないとなぁ。


 翌日の朝食の席、私が着席した途端、お母様が発言した。

「マリア、あのドライヤーっていう魔道具、良いわねぇ。あなたの作ったものの中で初めて感動したわ」

 いや初めてって、なんか失礼じゃない?お母様。

「ええ、本当に。髪を洗うのが苦にならなくなりますね」

 ペリーヌお義姉(ねえ)さまにも好評だ。良かった。

 食堂の脇に立つメイドさん達も目で同意している(ふう)だな。どうやらメイド達にも好評のようだ。


「ドライヤーは必ず量産して王都中に普及させなさいね。これは命令です」

 あれ?お父様やお兄様のほうを見ると目をそらされた。なんで目をそらす?

「あー、善処致します」

 政治家的な発言になったけど仕方ないよね。これ以上仕事が増えたら死ぬ(かもしれない)。


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