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112 ドライヤーを作ろう①

 工房の職人クラレンスさんとリヒャルトさん、どちらも魔法陣を読むことはできないし、当然新たな魔法陣も描けない。

 てか、それができるのは多分この世界に私だけだろう。

 それを知って絶望するのかと思いきや、全然違っていた。新たな魔道具のアイディアを考えては私に魔法陣を描けと要求してくる。特にリヒャルトさんが。

 忙しいんだよ、私は。

 コンロとか冷蔵庫とか洗濯機とか作りたいのは分かる。私も作りたい。でも時間が無いんだよぉ。


 全体の設計図や魔法陣の仕様書を書いて私に見せるのは良い。でもちゃちゃっと魔法陣を描けるだろうという期待に満ちた目で私を見ないで。

 もしも魔法陣を描いてあげたら、あっという間に魔道具の試作品を作ってしまいそうな勢いですよ。

 やる気があって結構なことなんだけど、私が学院を卒業してからにしてほしいよ、全く。


 あー、でも取り扱う魔道具の種類を増やすとつぶれる工房がたくさん出そうだな。失職する職人も多く出そう。

 あまり既存の分野とはかぶらないような商品開発を目指さないといけないね。


 そうだ。自動車はどうかな?現在の移動手段って徒歩か馬車しかないんだけど、自動車なら他の魔道具工房とは競合しないよね。馬車を製造してるところとは競合するけど。

 魔道具で回転運動を生み出すことは可能だ。洗濯機もあるしね。

 でも私には無理か。自動車ってハードウェアの極致(きょくち)、機械の(かたまり)だからね。魔法陣しか描けない私には荷が重すぎるよ。


 そうだ!前世にはあったのに今世には存在しない、私の欲しかった魔道具があったよ。

 それはドライヤー。髪が長いから乾くまで時間がかかって大変なんだよね。異世界ものの定番魔道具でもある。

「ねぇクラレンスさん、あ、リヒャルトさんでも良いのですが、こういう機能の魔道具が欲しいんですよ。風の出る魔法陣はこちらになります。温度調節と風量調整もできるように魔法陣を設計していますので、ちょっと時間のあるときにでも考えてみてもらえないかしら」

 すでに魔法陣は描いたよ。この程度の魔法陣、もはや朝飯前だよ。


「へぇー暖かい風から冷たい風までが一定の風量で出る魔道具か。嬢ちゃん、これ何の役に立つんだ?」

 クラレンスさんは相変わらず敬意のかけらもないしゃべり方だ。

「洗った髪を速く乾かすための道具、名付けてドライヤーです。誰に需要があるって、それは私です。私が欲しいんですよ」

「お嬢様、それはぜひ私にお任せください。きっと世の中の女性たちに大うけすること間違いありません!」

 リヒャルトさんが開発担当に立候補してくれた。まぁ予想通りだ。


「リヒャルト、お前自分の仕事をちゃんとやってからにしろよ。製造ノルマを満たさなかったら残業だぞ」

 クラレンスさんが照明の魔道具担当で、リヒャルトさんが防御結界装置の担当なんだけど、それぞれ毎日10台の製造がノルマだ。

 10台を超える数量は臨時ボーナスとして給料に加算する制度にしているので、二人とも毎日12から13台は作っている。

 ドライヤーが完成するまではリヒャルトさんの分の製造数量がノルマの10台だけになりそうだな。


 数日後、工房に呼び出されたので行ってみる。

「お嬢様、ドライヤーの試作品ができあがりました。これがスイッチ。そしてこのつまみが温度調整です。右にいっぱい回して100度、左にいっぱい回した状態で20度の温度になります。さらにその横のつまみが風量調整になります」

 手に取って重さや噴き出し口の角度などを確認する。なかなか良いな、これ。前世で使ってたものよりもずっと軽いし、取り回ししやすい。前世のドライヤーには電源コードがあったからね。


「良いですねー、これ。魔石1個での稼働時間確認なんかについては、私が使いながらデータを取っていきましょう」

 製品化するかどうかは分からないけど、使い勝手が良ければ友人たちにもプレゼントしたい。

 リヒャルトさんも満足げだ。良い仕事したぜいって感じの顔で微笑んでいる。


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