109 携帯型防御結界装置
取調室を退室しようとする私たちにリヒャルトさんが言った。
「最後に一つだけ質問させていただけませんか。あの炎を防いだ絡繰りは何だったんでしょうか?」
自分の魔道具の性能に自信を持っていたのに、あっさり防がれたのがショックだったんだろうね。
アレンが答えた。
「その答えはクラレンス氏から直接聞いてください」
つまりはそれが答えだね。リヒャルトさんも魔道具による防御結界ってことに気付いたようだ。
実は携帯型防御結界装置は30台だけ限定生産した。
もちろん市場には流さない。関係者だけに配布したのだ。
うちの家族の分、友人たちの分、友人たちの家族の分、陛下にも1台だけお父様経由で献上した。
軍用の従来品の性能を知らないんだけど、私が開発したこれは魔法陣を使った攻撃であろうが防いでしまうほど高性能なものだ。
簡単に言えば、マジックガードの改良版。結界の壁を半透明ではなく完全な透明にしたこと、結界のサイズを少し大きくしたこと、厚みを増したことなどが相違点だ。
スイッチを入れれば常時展開され、魔力を燃料とした攻撃、つまり魔法攻撃をほぼ100%防ぐ。
あ、ストーンキャノンは無理だよ。さすがに戦略級魔法は防げない。
私たちがリヒャルトさんの魔道具を恐れず近付いていけたのは、魔道具で防御結界を展開してたから。
透明な壁だから少し怖かったけどね。
尋問に予想以上の時間をとられたため、もう午後の遅い時間だよ。昼食もとってない。
ルーシーちゃんお勧めのティーラウンジに行って、なにか軽いものでも食べようってことになった。
「マリアちゃん、良かったですわね。新しい職人が見つかって」
「うん、悪い人には見えなかったし、出所後、うちに来てくれると良いんだけどね」
「本当の開発者を教えたら、リヒャルト氏はマリアさんのことを崇拝するようになるかもしれないね」
いやいや、アレンさんや。崇拝って、神様じゃないんだから。
「私もそう思いますわ。というより私も崇拝しておりますわ」
怖い、怖いよ、ルーシーちゃん。
私たち親友だよね?信仰対象と信者の関係じゃないよね?