106 遊びに行こう
4年生になって高等学院の勉強も大変なのに、魔道具研究を趣味で始めた結果、予想外の忙しさになってしまった。自業自得と言えないこともない。
夏休みも返上で仕事をさせられている。
お兄様の婚約者であるペリーヌお義姉さまも簡単な事務仕事を手伝ってくれてるし、お兄様もつい眉間にしわが寄るくらいの忙しさの中でペリーヌお義姉さまと一緒に働けて嬉しそうだ。
くっ、リア充め。
ペリーヌお義姉さまほど頻繁ではないけど、アレンやルーシーちゃんも遊びに来ては書類整理なんかを手伝わされている。ごほん、いや手伝っていただいている、自主的に。
ブレンダは実家の高級宿屋の手伝いが忙しいようで、うちにはなかなか来れないみたい。前に一度来たときに仕事をさせられたから、実は逃げてるという疑いもある。
「あああああ、もう嫌だー。このままじゃせっかくの夏休みが仕事でつぶされちゃう。どこか遊びに行きたいー」
屋敷の一室を幹部専用の執務室に改造してるんだけど、現在そこにはお兄様、ペリーヌお義姉さま、アレン、ルーシーちゃん、私がいる。
全員黙々と山積みの書類と格闘しているんだけど、ついに私が爆発した。夏休みは仕事以外、何もしてないよ。てか、もうすぐ新学期が始まるよ。
お兄様が困り顔で私に言った。
「マリア、気持ちは分かるけど、それは言葉にしちゃいけないよ。多分全員が同じ気持ちなんだから」
ええ、分かってますとも。でもひどいじゃないですか、貴重な青春の1ページが仕事で塗りつぶされているんですよ。まだ学生なのに。
なにしろ、一週間に一度の休みもないのだ。従業員たちは週休一日だけど、工房幹部に休みはない。どんなブラックな職場だよ。
余談だけど、お兄様の中ではアレンとルーシーちゃんもすでに幹部の一人としてカウントされている。
「シュミット様、緊急の決済が必要な書類は終わらせてるので、一日くらいマリアさんにお休みをあげられないですか?」
アレン、良いこと言った!ぜひ休みをください、お兄様。
「…ふむ、そうだね。明日は休日で従業員も出てこないから、僕たちも全員休暇にしようか」
少し考えてからお兄様が発言した。やたっ!休みだ。いくら在宅勤務といえど、休み無しの連勤状態が続くと精神的に弱ってくるよね。明日は何をしようかな?
「マリアちゃん、お忍びで商店街に遊びに行きませんか?」
おぉ、ウインドウショッピングだね。良いね、ルーシーちゃん。
「だったら僕も一緒に行って良いかな?女の子二人は危ないから護衛も兼ねてね」
アレンも来る?良いとも。さっきのお礼もあるしね。
結論として、アレンとルーシーちゃん、私の三人で街を散策することになった。もちろん平民に変装してね。
お兄様とペリーヌも二人でデートするらしい。お兄様も遊びに行きたかったんじゃないの?