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神化論 ZERO  作者: ユズリ
9/18

神化論:ZERO 09


 しばらく大声で叫びながら歩くと、マヤが突然足を止める。ローズも同様に足を止め、マヤに「どうした?」と聞いた。

 

「……なんか来てるわ。多分、複数」

 

「え?」

 

 マヤは険しい表情をしている。彼女のその表情と雰囲気で、ローズは直ぐに事態を察した。ここは魔物も多く出る場所、つまりそういうことだろう。

 それにしても見た目十代の少女でしかない彼女だが、自分よりも早くに魔物の気配を察して警戒する姿に、ローズは内心でかなり驚いていた。彼女は自身のことをただの冒険者風に言っていたが、なんだかそれだけじゃないような気がする。

 

「ローズ、あなた強い?」

 

「ん? あ、えっとだな……足手まといにならないように努力はするさ」

 

 ローズは答えて背の大剣の柄を握る。マヤは少し笑って、彼女もまた自身の武器である細身の剣を手に取った。

 

 

◇◇◇

 

 

 アーリィに半殺しにあったユーリだが、地面に額こすり付けて謝った結果なんとか命だけは助かる。

 

「命助けてもらった相手に殺されそうになるって、なにこの奇妙なサイクル」

 

「自業自得だろ、超絶馬鹿」

 

 二人はユーリの見つけた獣道を上へと上がり、ユーリが落ちてきた崖の上までたどり着く。

 

「そういえばアーリィちゃんもうっかり崖から落ちたの? もしかしなくても、君も誰かお仲間を捜してる?」

 

 無視してもしつこく聞いてきそうなので、アーリィは素直に「はぐれた人を捜してる」と答える。ユーリは「じゃあやっぱり俺と同じか」と、何故か嬉しそうに言った。

 

「崖から足滑らせて落ちたお前と一緒にするな」

 

「ひでぇ……じゃあアーリィちゃんはどうしてその人とはぐれたんだ?」

 

「そ、それは……」

 

 何故自分が仲間とはぐれたか……ひらひらと飛ぶ綺麗な紫の蝶々を追いかけ、気づいたら崖の下で迷子になってたなんて絶対に言えないとアーリィは口を閉ざす。この男にそれを知られることは物凄い恥だと、アーリィは真面目にそう思った。

 

「もしかして綺麗な蝶が飛んでて、それ追いかけてたらいつの間にかはぐれてたとか?」

 

「!?」

 

 ずばりな理由を(何故か)言い当てたユーリだが、笑って「んなうっかりなことしねぇか」と言葉を付け足す。アーリィは顔を赤くさせて「うっかりで悪かったな!」とユーリに怒鳴った。

 

「え、うそ! マジでそんな理由?! やだアーリィちゃん、可愛い!」

 

「うるさい黙れ! くそっ、お前と会話してると無性にイライラしてくる!」

 

 またアーリィを怒らせ、ユーリはがっくり肩を落す。もう自分が何を言ってもアーリィは怒るんじゃないかと、ユーリはそんなことを思ってうな垂れた。

 

「ねぇ、アーリィちゃん……」

 

「話しかけるな。潰すぞ」

 

「何を! 目ぇこわっ!」

 

 アーリィの自分を見る目が殺る気満々なものになったのに気づいて、ユーリは引っ付いて歩きながらも怯える。しかし突然情け無く涙目だった彼の表情が変わった。

 

「アーリィちゃん」

 

「だから話しかけるなと……」

 

 アーリィが苛立った様子でユーリを見ると、彼は険しい表情で口に手を当てている。『静かに』というサインだろうか。事態を察したアーリィも口を閉ざし、周囲の気配を探った。そして冷静になり、アーリィも直ぐに異常に気がつく。人ではない何かがこちらを狙う、そんな気配がしたのだ。

 

「魔物か?」

 

 ユーリはそう言うと腰の後ろにベルトで吊っていた短剣を手に取る。その後二人の目の前に、それは堂々と姿を現した。そしてその瞬間に、二人の表情は変わる。驚いたように目を丸くし、二人はそれぞれにこう呟いた。

 

「んなっ……なんだありゃ」

 

「……でかい」

 

 

◇◇◇


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