神化論:ZERO 07
マヤはアーリィを捜して、ローズはユーリを捜して迷いの樹海を歩く。しかし一向に二人が見つかる様子は無い。
「んもう、アーリィどこいったのよぉ!」
もう一時間近く歩いて捜しているのに見つからない心配から、マヤが両腕を頭上高く振り上げながらそう叫ぶ。ローズも苦い表情で、「ユーリも見当たらないしなぁ……」と相槌を打つように呟いた。
「ちょっと思ったんだが、あっちも俺たちを捜しているんだろうな……ってことは、動き回らない方がいいんだろうか?」
ふとローズが、だいぶ動き回った今更にそんなことを言う。マヤは「一理あるわね」と呟き、足を止めた。
「少しここで待ってみる? 三十分くらい」
「……そうだな。きっとあっちも、はぐれたところからそう遠くは捜していないはずだろうし。やっぱりじっとしていたほうが合流できるかもしれん」
マヤは「じゃあ決まりね」と言い、近くの岩場に駆け寄って腰掛ける。彼女が「ローズもここでちょっと休みましょ」と言って手招きするので、ローズも彼女の側に向かった。
「歩きっぱなしで疲れない?」
「ん? そうだな、ちょっと疲れたかな」
「だよね。はぁー……アーリィなんて体力無いし、きっともっと疲れてるだろうな……」
溜息を吐くマヤの姿を見て、ローズは思わず「余程その、アーリィさんのこと心配しているんだな」と気遣わしげに呟く。マヤはちょっと笑って、「大切な人だしね」と言った。その言葉の言い方がやけに寂しげで、ローズは少し気になる。
「……あ、もしかして恋人?」
「あはは、違う違う。アーリィはアタシにとって家族みたいなものなの。可愛い妹かな? あ、弟か」
「そうか。心配だよな……」
いまいちマヤとアーリィという人物の関係がわからなかったローズだが、とにかく彼女がはぐれた相手を凄く心配していることはよくわかった。
「マヤはアーリィさんと旅をしてるんだよな?」
「うん、そうよー」
「何か目的があっての旅なのか?」
自分のことを話したら相手の事情も気になり、ローズはマヤにそれを聞いてみる。マヤは「ううん」と首を横に振った。
「気ままにふらっと、気になったとこに向かう旅してるの」
「へぇ。なんだかそういうのも面白そうだな」
ローズの言葉にマヤも「うん、結構楽しいよん」と笑顔で話す。
「色んな国の街を観光気分で見て回ったり、危険な場所へ冒険してみたりね。色々経験になるわよね、旅って」
「そうだな」
そんな話をしていると突然、マヤは唐突に身を乗り出してローズの顔を覗きこみ、「それにしてもローズって……」と気になる言葉を呟く。
「ん? な、なんだ?」
また間近でまじまじと顔を見られ、ローズは戸惑う。しばらくそうしてマヤはローズの顔を見つめ、彼女は「ごめん」と意味のわからないまま謝って顔を離した。
「え?」
「あはは、気にしないで!」
ローズは困惑した様子でひたすら首を傾げる。それでもマヤは「ごめんね!」と言うばかりで、謎の行動については説明しなかった。
◇◇◇