神化論:ZERO 17
マヤの唐突なお願いは、内容も唐突だった。そのためローズは即座には理解できず、マヤに聞き返す。
「どういうことだ?」
「だから、アタシとアーリィもあなたたちの仲間に入れて欲しいの!」
マヤはそう堂々と満面の笑顔で言う。やっとローズが意味を理解すると、隣でユーリが「なんだとぉ!」と大声を上げた。
「アーリィちゃんはさておき、お前が俺らについてくるってどういうことだ!」
ユーリは完全にマヤを敵視しているようで、マヤもマヤでユーリには怖い顔をする。
「いいじゃない、アタシローズのこと気に入っちゃったんだもん。あんたなんて眼中にないわよ、ローズのおまけのくせに」
「お、おまけだぁ!?」
マヤの言い草に、ユーリは怒り心頭といった様子となる。さすがに今のマヤの発言はローズも冗談にしても悪質でいけないと感じたらしく、マヤに「ユーリは俺の友人で仲間だ。そういう言い方はしてほしくない」とはっきり言った。するとマヤは途端に反省したようにしおらしくなり、「ごめんなさい、ローズ」と謝った。…… ローズに。
「おいちょっと待て、そこは普通先に俺へ謝るもんじゃねーか?」
ユーリがもっともなことをマヤに抗議すると、マヤはまた態度を180度変えて面倒くさそうに「あー、ごめん」とやる気無く謝る。ユーリは「もっとやる気出して謝れよ!」とさらに怒り、ローズはそんな二人を見て深く溜息を吐いた。
「……と、とにかく俺たちについて行きたいと言うなら、ユーリとも仲良くやってもらわないと困る」
ローズが溜息と共にそう言うと、マヤは「じゃあ仲良くしましょ」とユーリにころっと変わった笑顔で握手を求める。ユーリは納得いかない様子で握手を拒否しようとしたが、無理矢理マヤに腕を掴まれて握手させられた。
「うあぁぁぁん、なんか犯された気分……」
マヤに無理矢理握手させられた事で、ユーリは半泣きになってそんなことを言う。ローズは物凄く疲れた溜息を吐き、マヤに「本気で一緒に行きたいのか?」と改めて聞いた。
「うん。……だめ、なの?」
突然マヤは涙を溜めた眼差しで、上目遣いにローズを見る。その彼女の視線にローズはぎょっとして、あたふたと慌てふためいた。
「あ、だ、駄目ってわけではないが……」
「じゃあオッケーって事よね!」
「え? あ……」
また態度を変えた元気なマヤに押し切られるような形で、ローズは「あぁ、うん」と頷いてしまう。マヤは「やったー!」と無邪気に喜んだ。
「それじゃ決まりね! よし、指きりしましょう!」
「え、指きり?」
「ちょっとまてぇ、だから俺を無視して話を進めんな!」
「アタシとアーリィもローズたちについて行くこと決定、約束破ったらユーリに針千本飲ます~っと」
「なんで俺が針飲むんだ!」
なんだかドタバタと、訳がわからないままマヤとアーリィがローズたちの仲間になる。マヤとユーリは相変わらず言い合っているし、アーリィは自分を怖い顔で睨んでるし、ローズは先行き不安でまた溜息を吐いた。
「なんか、どうなるんだ……不安だな」
「あれローズ、何が不安?」
「えっと、全体的にうまくやっていけるのかとか……」
マヤが不思議そうに顔を覗きこんでくるので、ローズは困った様子でそう力なく答える。するとマヤは元気良くこう返事した。
「大丈夫よん! 根拠無いけど!」
「根拠無いのか……」
「うん、無いわね!」
根拠無いのにそう自信持って『大丈夫』と断言されると、不安通り越して大丈夫な気になるから怖い。ローズも苦笑するしかなかった。
「それに、アタシホントにローズのこと気に入っちゃったの。だからあなたには迷惑かけないようにするし、ユーリとも仲良くやるわ。だからローズは何も心配しなくていいって」
「そ、そうか……」
ローズが苦笑いのまま曖昧に頷くと、ユーリがマヤに「おい、それでさっきの質問に答えろよ! なんかわけわかんねーアーリィちゃんの力! 気になるだろ!」と声をかける。マヤは迷惑そうにユーリを見返し、そのまま二人は再度言い争いを始めた。
「……なんとか、なるのかな?」
物凄い不安を感じながらも、しかし今まで以上に旅が賑やかになる可能性を思って、ローズはちょっと笑う。しかし直後にアーリィの怖い視線を感じて、やっぱり彼は「不安だ」と呟いた。