神化論:ZERO 15
尋常でないアーリィの気迫に押され、ローズは思わず謝罪する。しかしアーリィはローズの謝罪を受け入れようという態度は見せなかった。
自分がアーリィに徹底的に嫌われたことにローズがへこんでいると、まだ互いのことを色々言いながらマヤとユーリがこちらへとやってきた。
「あー、もうこいつなんかムカつく。この非の打ち所が無い完璧なアタシに文句垂れるなんて信じらんない。頭おかしいわよ」
「そりゃこっちの台詞だ。顔可愛いかと思ったけどとんでもねぇ性格破綻者じゃねーか、こいつ」
「ま、まぁまぁ二人とも……」
ローズが二人を宥め、彼は唐突に「そうだ、改めて自己紹介しよう」と提案する。きっと皆何となくギスギスしているのは、お互いの事を良く知らないからだ! と、平和主義なローズはわりと真剣にそう思ったらしい。
「えー、自己紹介ならローズにしたじゃ~ん」
「そ、それはそうだが……ユーリにはまだ詳しいこと話していないじゃないか、なっ?」
「俺も自分の自己紹介ならアーリィちゃんにしたも~ん。……多分」
「俺は聞いてない」
「えぇ、そんな!」
「よし、じゃあやっぱり自己紹介し合うべきだな!」
ローズ一人で一生懸命場の雰囲気を平和なものにしようと頑張る。虚しい努力のようにも思えたが、しかしローズの必死さにやがてマヤもユーリも渋々話し合う姿勢となった。
「じゃあ俺たちから紹介するか。マヤには大体もう説明はしたが、俺はローズ・ネリネ。……パンドラを探して旅してる者だ。こちらがその仲間の、ユーリ・カレンジュラ。一緒に旅をしているんだが、ちょっとここで彼とはぐれてしまって困ってたんだ」
ローズが隣のユーリに視線を移す。ユーリは「そうでーす、俺がいい歳して迷子になってたユーリでーす」と自己紹介した。
「……アタシはマヤよ。なんか事情があなたたちと似てるわね……こっちはただの冒険者だけど、やっぱりここで仲間とはぐれて困ってたの」
「そのはぐれた仲間ってのが、アーリィちゃんか」
ユーリが問うように言うと、マヤは「そういうこと」と頷く。そして彼女は視線をアーリィへ向けた。
「こちらがとっても可愛いアタシの友人アーリィちゃん。この子について色々質問ありそうだけど、それにはアタシが答えるわん。絶対回答するとは限らないけど」
何故アーリィがアリアに瓜二つなのかとか、アーリィが先ほど戦闘中に使った謎の力は何なのかとか、確かに色々アーリィについて気になることはあった。
「あ……」
「はーい、その質問についてはノーコメントでーす」
「……まだほとんど何も言ってないんだが」
ローズは困ったように頭を掻き、そんなローズを横目で見ながら今度はユーリが「んじゃ俺もしつもーん!」と手を上げる。
「なに? 一応聞いたげる」
「一応かよ。……アーリィちゃんって女の子だろ?」
ユーリの質問に、アーリィは不快感を示す顔で「お前、まだそんなことを」と呟く。マヤは「男の子よ。可愛いけどぉ」と、ユーリの問いを否定した。
「えー、嘘だー。こんな可愛い子が男の子なわけねー」
「……もしかしてあなたって、男色趣味?」
「なっ!」
マヤの問題発言に、ユーリは「ちげーよ!」と叫ぶ。が、ローズがさりげなくマヤの後ろに隠れたので、ユーリは慌てた。
「おいマヤ止めろ、そういう冗談はこの純粋なローズ君には通用しないんだから。信じるだろ、馬鹿」
「いえ、冗談じゃなくわりと本気で言ってるんだけど。あなた変態だし」




