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醜悪な笑顔

「約束、果たしに来たよ--レヴィ!」


「・・・蓮・・・!!」


 --良かった!間一髪間に合った。


「レヴィ、他の人は--」


 その瞬間、レヴィの顔が曇った。俺は魔法を防ぐことに頭が行き過ぎ、無残に転がる2人を見逃してしまっていた。


「・・・ごめん。--レヴィ、歩いて逃げたりとかは出来そう?」


「・・・ごめん、私もう、一歩も--」


「分かった。なら--」


 俺は雷を纏い、全速力でモンスターまで近づく。


「--なっ?!馬鹿、無策に飛び込むな!」


 そんなディアスの言葉を無視し、俺は右手に雷を集中させ、相手に攻撃--はせず、真下の地面を叩きつけた。


「・・・何を・・・?」


 ディアスの疑問は当然だ。相手に攻撃するならいざ知らず、全く関係のない地面を叩きつけたのだから。しかしこれには考えがあった。と言っても、相手を倒すための策ではなく--


 叩きつけられた地面からは粉塵が巻き上げられ、相手の視界を遮った。そしてその隙に、俺は近くにいた女の子を抱えてディアス達の元へ戻った。


「レヴィ、お前の仲間2人とちょっとで良いから近づいていてくれないか?」


「えっ?それは良いけどなんで・・・?」


 疑問を口にしながらレヴィは亡くなった2人と身を寄せた。レヴィは今戦えない、どころか歩いて逃げることすら困難らしい。となれば取れる選択肢はこれしか思いつかない。


「拒絶魔法--不可侵領域(キープアウト)


 俺は3人の方を指差し、その範囲内を拒絶した。この魔法は丸一日拒絶魔法が使えなくなる代わりに、アリアさんですら破れぬ強力な結界を張ることが出来る。これを使えば彼女らを巻き込むことなく戦える。


「なる程、確かに彼女らが入れば気にして満足には戦えなかっただろうね。君は」


「今のお前だってそうだろ?そんな強調いらねぇよ」


「・・・ふん。で、あいつはどうやって倒すんだ?君は一度ああいうのと戦っているんだろ?」


 まぁ確かに戦いはしたけど、あれはゴブリンでこっちはなんか蛇っぽい感じなんだよな。弱点も違うだろうし。


「んまぁそうだけど、多分こいつは弱点とかも全然違う。ディアス、あの蛇擬きの弱点とかもしらねぇ?」


「・・・知らないから聞いたんだが、そもそも蛇ってなんだい?そんな生き物聞いたことがない」


「あーOKそこからねもう良いわごめんなさい」


 だとすればどうする?無策に突っ込んでえらことになったら困るしな、なにか情報が有れば・・・


 その時、多少辿々しかったが、レヴィの声が聞こえた。


「あいつは、毒を・・・持ってる。あの口から酸性の毒液を・・・吐き出すの。それと・・・魔法・・・は」


「おい無理すんなって!」


「魔法は--水魔法!酸性の毒を混ぜた・・・水を口から吐いて攻撃するの・・・!」


「なる程、さっき受けた魔法的に恐らく、バルクのように魔法を体から放出してそれを操る系の魔法だろうな」


 そういうのだったら、使い慣れてる!あいつの魔法、すぐ使えるかも知れない。


「ありがとうレヴィ!もう寝ててくれ!」


「いやよ・・・私には・・・この戦いを見届ける・・・責任が・・・!」


 すると、モンスターが叫び出した。


「ニンゲン・・・!マタフエタ・・・ガァァァァァァァ!!!」


 うるっせ!なんだいきなり叫び出して!情緒不安定か?


「ニンゲン・・・ネダヤシ・・・アネウエノタメ・・・!」


「姉上?こいつ兄弟がいるのか!」


「じゃあ、こいつ捕らえて、その姉上ってのもおびき寄せた方が良いかもね」


「考え方がえぐいよディアス君?まぁでも、捕らえるのは同感だ。こいつらのことを俺たちは何も知らなさすぎる」


 口から毒液--であれば左右、もしくは後ろから攻めれば良い。


「ディアス!俺は後ろから回り込む!左右からサポート頼む!」


 雷を再度纏い、俺は背後へと回り込む為、奴の正面から外れる。その間、ディアスとモンスターの一騎打ちだ。


「モンスターなのに魔法を使う。面倒だね。さっさと御すか--落ちし銭に群がる者達(ペーゾ・イン・カーロ)!」


 ディアスは巨大な重力の塊を奴に叩き付ける。頭を地に打ち付け、捕らえた--かと思ったが、やはり一筋縄では行かない。なんと奴は脱皮し、重力をすり抜けやがった。


「ニンゲン・・・イマノイタカッタ!カエシダ!!--蛇藤の水疱(ジャフジノスイホウ)!」


 花弁のような形の魔法がいくつも束なり、ディアス目掛けて放出される。


「ディアス!避けなさい!その毒は・・・神経毒よ!」


 レヴィの必死な忠告を受け、相殺しようとしていたディアスは回避することにした。


「なるほど、あの水泡ひとつにあたるだけでもダメなのか。回避が絶対だな--あっ、」


 ディアスが回避したと同時に、俺は奴の背後に回り込むことに成功した。ディアスもそれをいち早く察知し、魔法で動きを止める。


「脱皮して逃げてしまうのなら、蓮が攻撃する箇所以外全て囲んで仕舞えば良い--集い反旗を翻す民衆達(リヴォルタ)!」


 視認できない重力魔法は初見では防ぐことはほぼ無理だ。一瞬で解除させることは出来ても、全く当たらないというのはほぼ無理に近い。だが--このモンスターはそれをやってのけた。唯一穴の空いている俺のいる方向に飛び出してきた。しかも、俺がいると分かっていたと言わんばかりに満面な笑みで--


「ジュウリョク、フイウチ、モウキカナイ!!」


 くそ!ディアスが重力で捕らえている間に隙間から俺が攻撃する算段だったのに!裏目に出た!仕方ない・・・このまま攻撃する!


纏型(まといがた)--雷神の一撃(トールハンマー)!」


水牢(スイロウ)


 奴は俺の手にゲル状の水を吐き出してきた。それにより、攻撃の威力は極端に弱まり、また、水の中で電気を発したことにより、自身の魔法で感電してしまった。


「グァァァ!--ぐぅ!なんだ今の予測したような動き?」


 ゲルを取ろうと必死に腕を振り回すが一向に取れる気配がない。しかも、時が経つごとに段々と腕が痺れてきた。


「何をやっている蓮!魔法を使って吸えば良いだろ?」


 えっ?あっそうか!俺は魔法でゲルを吸収する。てか自分の魔法なのに忘れてるって致命的な回転の悪さだな。


 俺は一度ディアスと合流し、対策を練る。


「奴はオレの重力をまるで視認したように避けた。何かしらの方法で重力を視認、もしくは察知できると考えた方がいい」


「厄介だな。それと、雷魔法のストックがそろそろ切れそうだ。残り4回分しかない」


 バルク達とのクエストからアリアさんに会わずにこっちに来たから補充が出来ていない。雷4回、施錠1回、砂2回、水2回。合計9回の攻撃で仕留めなくてはいけない。


 とここで、レヴィが奇妙なことを言い出した。


「あのモンスター、私達と・・・戦ってる時・・・あんなに反応よくなかったのに」


 --つまりなんだ、戦いの中でさらに進化してきてるってことか?もし今が制御がうまく出来ていない状態だとして、それがうまく行き出したらどうなる?結構手が付けられなくなんじゃないか?


「ニンゲン!ユダン!シネ!-ー蛇藤の水疱(ジャフジノスイホウ)!」


 くっそ!相談してるところに!


異類無礙(アクセプト)!」


 魔法を吸収し、体勢を立て直す。


 魔法が吸収されたことが理解できないのか、奴は怪訝な表情を浮かべていた。そして--


「ニンゲン、マホウ、キエル・・・ノウナシ・・・?」


 --!!ノウナシ・・・いまこいつ、脳無しって言ったのか?何でモンスターが脳無しを知っている?!いや、そんなことより、そんなことがわかるようなことは言ってないししていない。何故魔法を吸収しただけでそこまで推測された?こいつは、いや--こいつらは一体なんだ?


「アア、ソウカ--オマエカ!!」


 目の前のモンスターは、それは不気味で、醜悪な笑顔を向けた。


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