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謝罪に向かう

 町長の元から帰った俺たちは、それぞれ一度自宅へと帰る事となった。その翌日ーー


「ーーで、その町長が妾の名を言っておったのか?」


 俺はアリアさん宅に住んでいる蛇姫(だっき)に、町長に告げられた言葉を言伝た。


「ああ、お前のこと知ってる風だったけどなんか心当たりある?」


「……いや、直接みたわけではないのではっきりとは言えんが、恐らく妾は知らん」


「情報通だと言っていただろう?その情報網で知ったんじゃないのか?」


 アリアさんのこの言葉は一番現実的だ。要するに俺の説は相手が正体を隠したモンスターであるかも、というものだ。非現実的だし証拠もない。どんな根拠があろうと元パーティーメンバーの脳無しさんに教わったと言われればそれまでだ。


「そうじゃの、妾もトップの顔は見たことはあるが、なんというか普通の人間の()という感じじゃぞ?白衣でもなければ男ですらない。十神経(ネルビオ)にもベニネコというヤツは居らんかったな」


「そっか……って、違うならそれが一番良いんだけどさ。ーー唐突だけど町長ってどんな魔法なんでしょうね?」


「本当に唐突だな」


 だって気になっちゃったんだからしょうがないだろ?感じたことのないレベルの気迫、あれだけで膝をつきそうになったくらいだ。


 そんな人の魔法とは一体どんなものだったのか?やはりスタンダードに属性魔法だろうか?それとももっと別のーー


「まぁ町長がマスターのパーティーメンバーだったなんて魔道祭くらいで初めて知ったんだから」


 という事はあれか……あまり伝説に残るようなことをしていないような地味な役割だったのかもしれない。


「というか、マスターに聞けば良いだけの話か。あとでレヴィにでも予定聞いてみるかーーあ、そうだ……アリアさん、俺と蛇姫のギルドでの処遇ってどうなりました?」


 昨日マスターと共にギルドに寄っていたアリアさん。聞けば俺たちの件について追い出したい派の人たちに説明しに行ったらしい。というのも、町長から俺の処遇について、特に咎めたり罰したりしないということを言われた。


「結論から言うと不問になった。勿論簡単に納得する連中じゃない、反対の意見が飛び交ったさ。だけどその時アマルの奴が頭を下げ出してね、蓮のギルド残留を願いでたんだ」


「アマルさんが……なんで急にそんな……」


「さぁな。その時言っていたのは「誰よりも早く率先して脅威に立ち向かった彼を、そしてそれを全力でサポートせんとした蛇姫を、追い出すと言う選択肢はギルドとして正しいとは言えない」とか言っていたな。まぁもしかしたら本音は助けられたから、と言うのがでかいのかもしれんが」


 助けられ……あぁ、アリアさんの攻撃を俺が防いだ時のあれか。それにしてもアマルさんが俺たちの擁護ねぇ、ありがたいが驚いた。


「でも本音はみんな納得してないですよね?なんかゴリ押しした感じでも申し訳ないな……」


「蓮はそんなことを考えなくて良い。お前は完全に被害者なんだ、もし今後そのことで嫌がらせや文句などがあった場合、その時は今度こそギルドをやめよう。そんな場所にいる必要はない」


「…………はい」


 こうしてアリアさんとの話し合いが終わった俺たち。少し天井を見上げる。そしてある決断をし、蛇姫を呼び出した。


「なぁ蛇姫、ちょっと2人で話さないか?」


「なん蛇唐突に……まぁ構わんが」


 こうして俺たちは外に出た。アリアさんが怪訝な表情を浮かべていたが気にしないでおこう。


「ーーで、話とはなん蛇?アリアの前で話せんことか?」


「あんな風に言われちゃぁね。……蛇姫、これから俺と一緒にギルドに行こう。そして今回のことについて一度謝りに行くんだ」


「なっ!話は済んだん蛇ろ?それに妾はともかく其方は完全に被害者だとアリアも言っておった蛇ろうが!」


「それでもだ。俺が被害者なんだとしても、あの人たちがそれに巻き込まれた被害者である事は違いないんだ。だったら詫びくらい入れておくのがマナーだろ」


「……人間というのは面倒な生き物蛇のぉ。…………わかった、どのみち妾は加害者蛇からな、謝らねばならんの蛇ろう」


 蛇姫は不満顔ながらも納得してくれたようだ。


 俺はアリアさんに蛇姫と出かける旨を伝えた。勿論謝罪に言ってくるとは言ってないが。


「ちょっとその辺ぶらぶらとしてきますね!」


「その辺……ねぇ……。ギルドまではその辺とは言わないと思うぞ」


 唐突に放たれたギルドという単語。えっ、嘘……もしかして聞こえてた?


「えっと……外での会話……聞こえてました?」


「いいや別に。ただ、蓮ならどうせそうするんだろうと思っただけさ。行くんだろ、ギルド」


「……はい」


 アリアさんは少し呆れた表情を浮かべていたが、何か諦めたようにため息をついた。


「ーーはぁ、もういいもう分かった。まぁ蓮はそんな奴だしな……コルボを貸してあげる、あの子に乗ればすぐ着くだろ」


 コルボーーアリアさんのペットであるモンスターだ。主に移動手段として用いているが、何せ早いが雑だ。暫く乗ってはいないが以前の俺では何度も振り落ちそうになっていた。


 アリアさんに呼び出され俺たちの目の前に降り立ったコルボ。今見てもでかいし風貌があんな……


「こいつに乗るのか?コルボは本来そんなモンスターではないと思うん蛇が……」


「いいから乗れ。降り落ちないようにしっかり捕まってろよ」


 こうして俺たちを乗せたコルボは上空に上がっていく。今はまだゆっくりだ。


「じゃぁアリアさん、ちょっと行ってきますね」


「終わったらすぐ戻ってきなさい。いいね?」


「はい!」


 そしてコルボに出発の合図を送った瞬間ーー景色が移り変わった。


「ーーうぉっ!やっぱ早えぇ!あっ、でもなんとかいけてる」


 改めて自分の成長をこんなところで感じ、感動していると、後ろに乗っていた蛇姫が叫んでいた。


「なぁぁぁ!!!!急に早いわこのバカコルボ!!」


「あっ、それ言ったらーー」


 バカという言葉を理解しているのであろうこのカラス、俺の時もそうだったが、バカにされたことに対する報復と言わんばかりに無意味に旋回を始めた。


「のわぁ!ーーやっぱ気持ちわる……」


「なん蛇こいつバカなのか?バカなのか?!なんでこんな無意味な旋かーーなんじゃこれ、気持ち悪い……」


 それから数分後、自分たちで向かうより圧倒的に早く着き、自分たちで向かうより圧倒的に疲労感が溜まった。体をふらつかせ口元を押さえる様子は、これから謝罪にいく者たちには到底見えない。


「か、帰りもあれに乗るのか……嫌なん蛇が……」


「仕方ないだろ、こいつに乗ったら早いんだから」


 こうして俺たちは数分物陰で座り込み休憩したのち、ギルドへと入っていった。










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