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3話 戦士イナバ

「馬鹿な!彼が魔族と人間のハーフだと!?」


戦士イナバ。

黒髪黒目の巨漢の戦士で寡黙な男。

その圧倒的パワーによる重装甲装備とタフネスは、正にパーティーを守る守護神そのものだった。

彼がいたからこそ俺は安心して魔法を放つことが出来たのだ。


その戦士の中に半分魔族の血が流れている。

そんなバカな話が……


「彼が兜を脱いだところを見た事ないでしょ?」


言われて思い出す。

確かに彼が俺達の前で兜を脱いだことは一度も無い。


「側頭部から角が生えてるのよ、彼。それを隠すためにずっと兜を被ってたんだけど、貴方不思議に思わなかったの?」


俺はてっきり頭部が禿げていて、それを隠したがっているのだとばかり……

まさか角が生えていた等とは、夢にも思わないかった。


だがこれではっきりした。

彼はその事実で脅され仕方なく――


「ああ、言っておくけど。別に脅してなんかないわよ?」


「なに!?嘘を吐くな!!」


「別に嘘じゃないわよ。彼は魔族としてこれから生きて行くんだから、ばらすばらさないなんて脅しにもならないのよ?ていうかもう公表されてるしね」


「公表……だと?」


魔族と人間の混血など、どちらからも迫害されるのは目に見えている。

それを堂々と公表するなど、それこそ俺の様に牢屋送りになってもおかしく無い話だ。


「そ、彼は魔族と人間との橋渡し役になる予定だからよ。魔王が死んで魔族領を人間が統治する訳だけど、それだと魔族からの反発が凄いでしょ?だからハーフである彼にクッション役をして貰う事になってるのよ。ハーフも嫌われはするけど、それでも人間よりはましでしょ?」


魔族からの反発を緩和する……為か。

人間と魔族が手を取り合う、それは素晴らしい事だ。

だがそれは茨の道。

辛く険しいものになるだろう。

それでも忍耐強い彼なら、きっと成し遂げるに違いない。


「成程。魔族と人間の平和、その目的のために彼はその生涯を――」


「違うわよ?」


「へ?」


「だって彼。魔族を心から憎んでるんですもの」


憎む?

どういう事だ?

彼は人間と魔族の橋渡しになろうとしているのでは?


「彼ね、魔族から牙を抜いて人間の奴隷にするのが夢らしいの。彼が魔族領を統治するのはその為よ」


「……!?」


「彼は母親を魔族に殺されてるのよ。だから魔族の事を憎んでるの、心からね」


彼にそんな過去があったなんて……

どれ程強力な攻撃が飛んで来ようとも動じなかったその不屈の精神力は、怒りから来るものだったというのか?


「あなた魔族に同情的だったでしょ?」


当然だ。

魔族達とて好きで人間と戦っていたわけではない。

異界から召喚された魔王の圧倒的な力で抑え込まれ、無理やり人間と戦争をさせられていただけに過ぎない。

言ってみれば彼等も被害者なのだ。


「だから彼も二つ返事で協力を快諾してくれたわよ?貴方が自分の目的の障害になるかもしれないからって」


「そんな……」


自らの復讐のために、俺を売ったと言うのか。

彼は……


「これで分かったでしょ?イナバは目的のためなら手段を択ばない男だって。魔王討伐の為、勇者パーティーに参加したのだって全ては復讐のためだったって分けよ。あんた、ほんと人を見る目が無いわねぇ」


ラキアは嫌らしく笑う。

悔しいが反論できず、俺は只彼女を睨みつけるしかなかった。

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