2.彼女が居る理由
しばらくネットが使えない状態だったので遅くなりましたがなんとか投稿ができました。
大丈夫だ。という事で、ベットに降ろしてもらえたが、精神的にズタボロだ。
思い出すだけで泣きそう。
強引にキスされて、腰が抜けて、お姫様抱っこされるってどうなの。
男して終わってるんじゃないか。
しかも、今になってみればすごい良かったとか思い始めてるし。
なんなの、あんなに怖かったはずなのに。
チョロインか何かなの、僕は。
頭の中で自己嫌悪がグルグルと毒のように周り、耐えきれなくなって布団へと潜り込む。
「だ、大丈夫か」
「大丈夫な訳が無いでしょう。ファーストキスだったんですよ」
あんな強烈なファーストキスは一生忘れられないよ。
どうしよう。これから先輩とどんな風に接していけばいいんだ。
なんでこんなに悩まないといけないんだ。
元を正せば全部先輩が悪いんじゃないか。
「そもそも。なんで、あんな恰好で料理をしていたんですか」
「それは………」
「答えにくい事なんですか」
「そうだな。こんな状況で話せる内容ではないな」
「ならいいです」
気づかれなかったはず。
今、先輩に顔を見せるわけには行かない。
頬が緩みニヤけているのが鏡を見なくても解る程、だらしない表情になっているはずだ。
こんな顔を見せられはずもない。
「なるほど」
いきなり、布団をはぎ取られ、先輩と目があう。
どうしよう。気づいかれていた。
先輩の顔色を伺うと、揶揄する様な?恍惚そうな?どちらとも言えない笑みを浮かべていた。
駄目だ。絶対、変だと思われた。
「見ないでください」
慌てて顔を隠す。
「いいじゃないか」
先輩が体重をかけたのか少しベットが沈む。
「もっとその可愛い顔を見せて欲しい」
声が近い。
気になり指の隙間から覗いてみると、こっちの顔を覗き込もうとしている先輩の顔がすぐそこにあった。
いつみても、かっこいい。
羨ましいなぁ。
せめて、先輩ぐらい凛々しい顔つきだったら、この女顔も気にしなくて済むのに。
「もっかいキスしよっか」
「うぇっ。行き成り、何いってるんですか」
「まんざらでもなさそうだからな。そして何より私がしたい」
指の隙間から見える先輩は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべていた。
「先輩はもっと恥じらいを持ってください」
かっこいいからって、そんな所まで男らしくならなくてもいい。
「そんな事より話があるんですよね。聞きますから、先輩も着替えて来てください」
「もう少し、このままで居させてくれないか」
「先輩?」
先輩に影が見えたような気がした。
まるで、話したくない。そんな風に見えてしかたなかった。
いつも、家庭の深い事情から下ネタまで聞きもしない事を話す先輩にしては珍しくて、少し不安になる。
「そんなに話辛い内容なのですか」
「そうだな。いや、違うか」
らし?。もしで?くても?。ばいい?。
全ては聞き取れないが何か呟いている。
「よし。着替えてくる。話が有るので君もちゃんとしてほしい」
「あっ。はい」
急にどうしたんだろう。
戸惑っている間にも先輩は脱衣場へと消えて行く。
まぁいいや。大事な話らしいし、今の間に落ち着かないと。
☆
それから、数分も経てば気持ちも落ち着いてきた。
今はベットに腰かけ先輩を待っている。
先輩の話ってなんだろう。
多分、ロクでも無い内容だよね。
待っている時間がさらに不安を煽り立てる。
それから、さらに数分が経った後に先輩は戻ってくるのだった。
えっ何でスーツ姿。
先輩が高そうなスーツを着ているのに驚いた。
「どうしたんですか。その恰好は」
質問には答えずに、先輩はその場で正座する。
「私をここに置いてください」
綺麗な土下座だった。
「ちょっと待ってください」
どういう事、全然理解が出来ない。
どうすればいいんだ。
そうだ、今は土下座している先輩をどうにかしないと。
「とりあえず。土下座をやめてください」
先輩は土下座をやめない。
こうなったら実力行使だ。
先輩の前にしゃがみ、無理やり先輩を起こそうとしたが。
強く。全然、びくともしない。
「だから。土下座をやめてください」
「私をここに置いてくれ」
先輩に抱き着かれる。
良い匂いがするんだなぁ。じゃなくて、このままだとスーツに皺が付くじゃないか。
それだけは、阻止せねば。
決して、意識しすぎて恥ずかしいから離れてほしいとかじゃない。
うん。そうだ。
誤魔化すように自分に言い聞かす。
「解りましたから。理由次第では許可しますから」
「本当か。ありがとう」
先輩はいったん離して、すぐにまた抱き着いてきた。
あぁもう。だからもう。
「離れてください。あと、くだらない理由だったら叩き返しますよ」
「大丈夫だ。絶対納得すると思う」
先輩の自信満々な態度にこちらは嫌な予感と、恥ずかしさで何とも言えない気分になるのだった。
お読みいただきありがとうございました。