1.ファーストキス
書き直しました。
少し過激[?]なシーンがあります。
僕、坂上朱里は今日も生徒会の手伝いで帰宅が遅くなってしまった。
今から晩ご飯を作るのは面倒だな。
親元を離れ、ワンルームで悠々自適な一人暮らしをさせてもらっている僕も、この時ばかりは家族の有難味が解る。
とは言へ、念願の一戸建てを建てた両親に頭を下げて住み慣れたこの町で一人、高校に通わせてもらっている以上頑張るしかない。
まぁ今日は、作る気力も無い以上、備蓄していたカップラーメンになるだろうが。
それは、やっぱり味気ない。誰か作って待ってくれないかな。
有りもしない願望に、ますます疲れが押し寄せてきた気がした。
☆
瓢箪から駒と言うのはこういう事を言うのだろうか。
自宅のあるアパートが見える所まで帰ってくると、僕の部屋である二○三号室に明かりが灯っている事に気づいた。
合鍵を持っているのは母さんだけしか居ないため、母さんが来ているのだろうが連絡も無しに訪れていることに違和感を感じた。
何か有ったのかな。
確認のために電話をしてみようと、スマホを取り出すと謎がすべて解けた気がした。
生徒会の手伝いで酷使したためか、はたまた長年愛用しているこのスマホの寿命が近いのか電源が落ちていた。
恐らくスマホの電源が落ちた後に連絡があったのだろう。
そうわかると、途端に今までの疲れが取れた気分になり、足取りが軽くなる。
そして転がる様な勢いで帰宅。
玄関の扉を勢いよく開いた。
「母さんごめん。電話の電源―――」
言葉は続かなかった。
「やぁ。おかえり」
そこに、母さんでは無い見知った女性が水着にエプロンと言う変な恰好で料理をしている現場を目撃してしまった。
あまりのことにその場で崩れ落ちそうになる。
何故母さんじゃない。
母さんが水着にエプロンと言う変な恰好で料理していたらそれはそれで困るが、今よりは幾分ましだ。
今の状況は僕にとっては破滅が付きまとっている。
と言うのも、その女性が、綺麗な黒の長髪に似合うだけの整った容姿と豊満なバディを兼ね揃えており、男子生徒から人気が高い上に、竹を割った性格と、男らしい行動力から女子生徒からも人気が高い『青柳朱里』先輩だからだ。
「とうとう不法侵入ですか」
この一つ上の先輩は出会い方が劇的だったためか、それとも、名前が同じ朱里な為か何時も僕の家に我が物顔で入り浸っている困った先輩だ。
ただ、困った先輩とは言え不法侵入と言う犯罪を犯すとは思わなかったが。
「まぁ待て許可はちゃんととっているぞ」
睨みつける僕を無視して、先輩は猫の足跡がプリントされた可愛らしいエプロンのポケットから見慣れた鍵を取り出した。
それは、間違いなく母さんに渡した合鍵だった。
その証拠に、見覚えがあるキャラクターのキーホルダーがしっかりとついていた。
つまり、ちゃんと母さんの許可は取ってある訳だが。
頭が痛くなり思わず抑える。
「普通。母さんじゃなくて住んでいる僕に許可を取るのが筋でしょう」
「話したら許可をくれたのか」
「する訳ないじゃないですか」
「ほらな。だから搦め手から攻めてみたのだ」
「いや。ほらなじゃないです」
「それにだ、女性が水着にエプロンと言う男心くすぐる様な恰好をしているのに反応しないとはどういう事だ」
「色々な事が有り過ぎて、そんな事に気にしている余裕が無いです」
「ほう。なら無理やりにでも意識をしてもらおうではないか」
僕が理解するよりも早くに先輩はエプロンの結び目を解いたのか、パサリとエプロンが下に落ちパステルイエローのビキニ露わになった。
何やってんだこの人は。
血の気が引くのを感じた僕は慌てて家の中へと入り、鍵を閉める。
「馬鹿ですかあなたはこんな姿を誰かに―――」
先輩の方を向くと先輩と目が合い、蛇に睨まれた蛙のように言葉が出てこなくなった。
「朱里…」
呼ばれた事のない下の名前を呼ばれ、僕に向けられた妖艶なその視線に耐えられずに一歩後ずさるが、ドアに阻まれる。
「どうしたんですか先輩。何やってるんですか」
もう僕の心の中は、突然豹変した先輩にいっぱいいっぱいだった。
戸惑い動けなくなっていると、ぐいっと先輩に抱き寄せられた。
「朱里が悪いんだ」
「な。何をしているんですか」
突き放そうとするが、ギュッと強く抱きしめられ先ほどよりも密着する。
「私がこんなに頑張っているのに、どうして朱里は気づいてくれないんだ」
先輩の言葉に頭が真っ白になった。
「朱里」
ふと、抱きしめられた手が外れ先輩と目が合う。
その目からは覚悟が感じられ、綺麗だった。
そして、先輩の顔が近づいてきて、口で口を塞がれた。
そこからは、僕達は獣のように互いの口内を貪った。
水気を含んだ音と『んっ……あっ』と言うどちらの物か解らない吐息交じりの喘ぎ声が上がる。
さらに、先輩は体内に侵入するかのように舌を入れてくる。
息が出来ない。
だが、妖艶な魔力を秘めた先輩からは逃げられない。
僕は先輩の口内を貪り続ける。
そうして続けていると、ガクンと世界が真っ黒になった。
お読みいただきありがとうございました。