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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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楽園の位置

「おまたせ」

「やっと来たわね!」

「無事でなによりです」


 両翼で羽ばたいて減速し、ふわりと地上に降り立つ。


「さぁ、いくわよ。片付けはしておいたから」

「片付け?」


 そう疑問に思ったまま二人のあとに続いて洞窟を出る。

 すると、洞窟のまえで無数の女兵士たちが無造作に横たわっていた。全員、気を失っているようで、中にはうなされたように唸っている人もいる。

 これは一体。


「これ、二人でやったのか?」

「いえ、姉さんが一人で」

「この数を? ……マジか」


 洞窟で戦った彼女はどう見積もっても、地面に潜行する魔法を使う高位探求者くらいの実力があった。一般の兵士もそれくらいとは言わないが、それに近い実力を持っているはず。

 なのに、彼女はそれをたった一人で?


「なに?」

「いや、べつに」


 道理でユウリが捕まっている間の短い期間で看守になれたわけだ。

 これだけ強いなら脱走者が出ても確実に捕まえられる。まぁ、今回は捕まえるはずの脱走者に手を貸していたわけだけれど。

 案外、俺が足止めなんてしなくても彼女一人でこの窮地を斬り抜けられたのかも。


「えーっと、ここは……街の外か」


 街の外から牢屋まで穴を掘ったのか。

 物凄い労力が必要だっただろうに、たった一人で。


「でも、どうして出口に兵士が?」

「あははー、巡回のことすっかり忘れてて」


 街の周囲を巡回している警備のことを勘定に入れ忘れていた?

 やっぱりこの人、おっちょこちょいみたいだ。


「姉さん、この後はどうするんですか?

「そうね、とりあえずここを離れるわよ。後のことはそれから!」

「つまり、ノープランなんですね?」

「違うわ! その都度冷静に、臨機応変に対応するのよ!」


 つまりノープランじゃないか。

 脱獄って脱獄の手段より、脱獄したあとのことのほうが重要なんじゃ。

 まぁ、いい。とにかくここを離れよう。洞窟に張った絶氷の壁も、いつ突破されるかわかったものじゃあない。

 ユリアは意気揚々と、ユウリは軽く頭を抱えつつ、俺たちは街から離れるように走り出した。


「ふー……」


 荒野の緩やかな傾斜を上り下りし、それを何度か繰り返した。

 今では街は遠くにあり、指先で潰せそうなくらい小さくなっている。


「ここまでくれば、一先ず安心ね」


 安堵の息を吐いて、ユリアは手頃な岩に腰を掛ける。ユウリもその岩を背もたれにして、地面に腰をつけた。一先ず休憩だ。体を休めてもらい、その間に今後の話をしよう。


「二人は楽園にいくんだろ? 場所の見当はついているのか?」

「いえ、それがまったく」

「西だって話もあれば、北だって話もあるし、とにかく噂が多くて頭がこんがらがりそうなのよ」


 まぁ、楽園にたどり着いた人は戻ってこないだろうし、街の人間に居場所を悟られないために偽の情報を大量に流していても可笑しくない。

 そう簡単に場所を特定できるのなら、とっくの昔に潰されているか。

 というか、もう潰されている可能性だってある。


「一応、聞いておきたいんだけど。本当にあるのか? 楽園」

「あるわ! あるに決まってるじゃない!」


 ユリアのその言葉はやけに断言するものだった。

 信じて、疑っていない。

 その事情を説明するように、ユウリが口を開いた。


「実はすこしまえまで噂話でしかなかったのですが、一人だけ楽園から連れ戻された人がいたんです」

「楽園から?」

「はい。ちょうど楽園の外に出ていたときに捕まったらしくて、正確な楽園の位置を知る唯一の人物でした」


 だから、実在していると確信を持てている。


「その人はどうなったんだ?」

「自身が楽園から来たと主張しながらも、残忍な拷問に耐え続け、ついに最期の最期まで一切の情報を漏らすことなく、衰弱死しました」

「そうか……」


 その人物の目的は、察するに楽園の存在が確かなものだと広めるため。

 発見のリスクを伴うが、街で怯えている同志たちへのメッセージにもなる。

 場所は明かせないが楽園はある。だから希望を捨てずに諦めるな。その人物はそう言いたかったのだろう。自らの命を賭してまで。


「なんにせよ、楽園を見つけてみせるわ。もう帰る場所はないんだし」


 帰る場所がなくなるというのは辛いものだけど、ユリアは晴れ晴れとしていた。

 俺もあれくらい前向きに物事を捉えられたらな、と思わずにはいられない。


「それで? あんたはこれからどうするの?」

「どうって?」

「成り行きであんたと一緒に脱獄したけど、あんたのほうに私たちに付き合う義理はないでしょ? どうするのかなって」


 そうか、そういえばそうだっけ。

 今までは目的が一致した一蓮托生みたいな関係がずっと続いていたけれど、今回はエルフのときのように目的が一致していない。いや、一致していたのはついさっきまでだ。

 この二人はべつにフェンリルを狩ろうとしているわけじゃない。ただ楽園にいきたいだけ。ここで別れても、べつになんの問題もないわけだ。

 でも。


「……よければ最後まで付き合わせてくれないか? 乗りかかった船だし、楽園まで送り届けたい」

「え? いいんですか? 心強いですが、本当に?」

「あぁ、本当だよユウリ。なんというか、スッキリしないからさ。ここでお別れなんて」


 一度関わったからには、その行く末を見届けたい。

 我ながら自分の性分に呆れるくらいのお人好しだけど、こうするべきだと思うから。


「ふ、ふーん。ま、まぁ? ついて来たいなら、私はべつにいいけどね。べつに!」


 ユリアの許可ももらい、最後まで付き合うことにした。

 フェンリルの討伐は、その後でも問題ないだろう。向かう途中で遭遇したら、そのときはそのときだ。どうにかしよう。

 こうして俺たち三人はどこにあるかもわからない楽園を目指すことにした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんで精霊に聞かないんですか? 精霊の使いどころが疑問。エルフの里ではすごい使ってたのに。
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