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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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一瞬の反撃


「どうした! 掠りもしないぞ!」


 目で追うことすら難しい速度で、彼女は洞窟を跳ね回る。

 まるで高速で撃ち出されたスーパーボールだ。攻撃を当てようにも速すぎるし、行き先を予測しようにも思考回路が追いつかない。

 この速度なら先に逃げた二人を追えそうなものだが、その気配はない。あくまでも目的は俺のようだ。その点はありがたい。


「ならっ」


 避けられない攻撃をするしかない。

 錫杖の先で足元を砕き、波打つ波紋のように地面を砂に変える。同時に前後に向けて洞窟を埋め尽くすほど高い砂の波を放った。どれだけ速く動こうと、これを躱す術はない。


「甘いッ!」


 だが、その砂の波を縦に引き裂いて彼女は現れる。

 速度が速く、攻撃も鋭い。だが、これで彼女の行動を限定できた。砂の波を越えて、一直線に向かってくるのなら、迎え打つ算段も――

 その刹那、彼女は空中を蹴る。


「なっ!?」


 不可視の足場がそこにあったかのように、彼女は方向転換した。予想が崩れ、混乱し、次の動作に遅れを取る。彼女は生じた隙に乗じて俺の傍らを掠め、脇腹に一撃を振って通り抜けていく。


「くっ」


 ガーゴイルの魔力が浅くだが引き裂けた。混乱の最中でもギリギリで身をよじったからこの程度ですんだ。棒立ちだったら深くまで太刀傷が入っていたに違いない。

 フェンリルを相手になんども戦っているだけあって手強いな。


「もう終わりかッ! 威勢が良いのは最初だけだったなッ!」


 彼女は幾度も軌道を変えてかく乱し、次の機会を待っている。間違っても迂闊には攻め込んでこない。

 このままでは埒が空かないな。ガーゴイルでは彼女に勝てそうにない。

 なら、やることは一つだ。


「上等。やってやる」


 ガーゴイル・デザートをオチュー・アイズに変換。

 全身に配列された眼球が忙しなく動き、周囲を飛び跳ねる彼女を追う。

 オチュー・アイズにガーゴイル・デザートのような防御力はない。ひとたび不覚を取れば、彼女の刃は骨まで達するだろう。

 だが、そうならないことを俺は知っている。

 俺自身が女王に対する献上品である以上、骨まで傷つけるような真似はしない。出来ない。だから、彼女は待っているんだ。彼女の仲間たちがここまで追いついてくるのを。

 人数を揃え、また鎖で拘束しようという目論見だ。

 ガーゴイルのままでは戦闘をずるずると引き延ばされるだけだ。


「多少、姿が変わったところでッ!」


 形態が変化した俺に多少の警戒心を抱きつつも、彼女は果敢に攻め立ててくる。

 無作為に方向転換し、かく乱した上で攻めてくる。

 左側面、洞窟の壁を蹴り、彼女は刃を構えて一閃を薙ぐ。

 その一部始終をオチュー・アイズは数多の眼球で捉えていた。

 すべてがスローモーションのようにゆっくりと流れ、思考は相反するように高速回転する。迫りくる強敵に対してどう対処するか。それを練り、実行に移すまでの猶予は十分にあった。

 そうして、スローモーションが解ける。

 瞬間、俺は流れた刃を紙一重で躱し、反撃を――彼女の腹部へ石の錫杖を打ち込んでいた。


「がはッ!?」


 身体中の空気をすべて吐き出したかのような苦しげな声を上げ、彼女は洞窟の奥へと吹き飛んだ。

 地面をなんども転がりながら、それでも完全には体勢を崩さないところは流石だ。すぐに勢いを殺して踏み止まった。が、俺が与えた一撃は彼女に深刻なダメージを与えていた。


「き――さまッ――」


 打撃を打ち込んだ腹部を片手で押さえ、もう片方は地面に触れて支えにしている。まともに立っていられない証拠だ。口の端からは赤い血が漏れ出しているし、咳き込むようにして吐血した。あの状態での戦闘続行は不可能だ。


「ここまでだな」


 彼女の背後から聞こえてくる足音が随分と大きくなった。すぐそこまで追っ手が迫っている。

 手応えは掴んだ。良い練習になった。もうここに留まる理由はない。


「まっ、待てッ!」

「いいや、待たない」


 彼女に背を向け、分厚い絶氷の壁で洞窟を遮断する。

 こうしておけばすぐには追ってこられない。

 氷壁の向こう側でなにかを叫んでいるように見えるが、こちら側までは聞こえてこなかった。あの状態で叫んだら身体に悪い。彼女の状態が悪くならないうちに、姿を消したほうが良さそうだ。


「二人に追いつかないと」


 形態をガーゴイル・デザートに戻し、石翼を羽ばたいて洞窟内を滑空する。

 二人は無事に洞窟を抜けられているだろうか? というか、この先はどこに通じているのだろう。まぁ、説明されていたとしても土地勘のない俺にはちんぷんかんぷんだろうけれど。

 そんなことを考えながら飛行していると、立ち止まってこちらに手を振る二人の姿が見えてきた。わざわざ待っていてくれたらしい。それを嬉しく思いながら、二人の側で地面に足を下ろした。

 途中、ハプニングもあったがどうにか脱獄できそうだ。

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