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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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脱獄の仕方


「ほう、これはまた奇怪な」


 大人しく縛られたまま、この街の王を目にする。

 あらかじめ予想はついていたが、やはり王は女性だった。傍に控える豪華な装備に見に包んだ近衛兵にも、男性は一人も存在しない。

 ここまでくれば嫌でもわかる。この街、この世界では、女性が権力を握っている。


「ふむ、気に入った」


 言葉短く、すこし気怠げに、王は配下に告げる。


「我が可愛い配下たちに褒美をとらす。それを連れていけ」


 俺を拘束した彼女たちは、その言葉に返事をすることなく、ただただ深々と頭を垂れた。そして玉座をあとにすると、また別の場所へと連行される。

 行き着く先はやはりと言うべきか、牢屋だった。


「入れ」


 背中を蹴飛ばされるようにして、牢屋へと押し込まれる。

 硬い石材の地面に、寝床として薄くて小汚い布が一枚引かれただけの粗末なもの。嫌な匂いもする。ここと比べるとマーメイドの街にある牢屋が恋しくなるほどだ。


「逃げようとしても無駄だ。すでに貴様は我が王の所有物。地の果てまで追い掛けて、必ずお前を捕まえる」

「王様の所有物をこんなところに閉じ込めるのか?」

「案ずるな。いずれ出してやる。我が王に従順になればな」


 そう言い残して、彼女たちは牢屋をあとにした。


「さて、と」


 鉄格子を握ったり、隣の壁に手を当てたりして、強度のほどをたしかめる。これくらいなら簡単に壊して外に出られるだろう。

 問題は、彼女たちにもそれがわかっていることだ。

 高位の魔物であるフェンリルと渡り合える俺を、こんな粗末な牢屋に閉じ込めて置けるとは思っていないはず。つまり牢屋の外では万全の警備が敷かれていることになる。

 無策で脱獄すれば簡単に見つかってしまい、確実に戦闘になる。それは避けたい。

 どうにかこうにか、うまい手を考えないと。


「どう脱獄したものか……」


 そう思考を巡らせていると。


「だつごく?」


 不意に近くから声がして、すぐにそちらに振り返る。


「ひっ」


 視界に捉えたのは、牢屋の隅で小さくなっている一人の少年だった。十五、十六歳くらいだろうか? がたがたと震えている。まぁ、同じ牢屋にこんな姿のスケルトンが入ってくれば誰だって怯えてしまうものか。

 それにしても声がするまで気がつかなかったな。


「あぁ、ごめん。驚かす気はなかったんだ。こんな姿だけど、キミに危害は加えないよ」


 精一杯の無害アピールをしつつ、彼とは対角線にある隅へと腰掛ける。

 それが功を奏したのか、少年から浅い息が抜けていった。


「なぁ、この街は女性ばっかりみたいだけど男性はみんな牢屋にいるのか? キミみたいに」

「い、いえ、違います」


 言葉を話すスケルトンにおっかなびっくりとした様子で少年は返事をしてくれた。


「ここでは性別で一生が決まるんです。女なら自由を、男なら隷属を。ここはそう言う世界ですが、牢屋に入るのは罪人だけです。……あなたは、違うみたいですけど」

「キミが罪人? なにをしてここに?」

「……脱走です」

「あぁ、それで」


 まぁ、逃げ出したくもなる。生まれた瞬間から隷属を強制されるなんてあんまりだ。

 すくなくとも地球上で人間として育った俺はそう考える。この街で生まれた男性がどう考えるかは知らないけれど、理不尽にも程がある。


「じゃあ、俺も罪人扱いってことか」

「それは……たぶん、すこしだけ違うと思います」

「すこしだけ?」

「あなたの姿は見事な骨細工だから、とても価値がある。ただ恐らくあなたは余所の世界から来た者で、ここの理が通じない。だから――」


 その先の言葉を遮るように、牢獄の扉が開かれる。

 檻の向こう側に現れたのは、先ほどの彼女たちとは別の女性たち。彼女らはこちらを一瞥すると、すぐに奥にある別の牢屋へと進んでいった。

 そして――


「や、やめろ! もう嫌だ! あれはもう嫌なんだ! 頼む! 連れて行かないでくれ!」


 悲鳴にも似た言葉で懇願する声が聞こえ、すぐにそれは言葉にならない呻き声に変わる。


「んー! んんんー!」


 檻の前に再び現れた彼女たちは、檻に入っていたと思われる男性の口を塞ぎ、引きずっていた。

 彼の風貌はあきらかに、この街の文化と違っている。恐らく、彼もこことは違う場所から連れてこられた人なのだろう。

 悲惨な呻き声とともに、彼女たちは檻のまえから消えていく。

 そして最後に扉のしまるバタンという大きな音を最後に、一切なにも聞こえなくなってしまった。


「――だから、心の奥底まで理を刻み込んで、通じるようにするんです」

「この世の悪夢だな……」


 俺がこの牢屋に入っている理由に察しがついた。

 彼女たちは扱いに困ったんだ。どう拷問していいか、どう痛めつければいいのか、それを今、彼女たちは話し合っている。なにせ普通の人間には効果的なものでも、スケルトンには無意味なことが多い。

 たとえば顔を掴んで水に沈めるとか。爪を剥がすとか。指を切り落とすとか。

 それらはすべて俺には無意味だし、彼女たちもわかっているだろう。だから、とりあえず牢屋に入れておいて、なにが効果的かを思案している。

 その結果が出たとき、俺もあの男性と同じ場所に連れて行かれるというわけだ。


「すこし違うと言ったのは、人ではなく骨細工と見做されているから。理の通じない罪人ではなく、物として扱われていると思われるからです」

「なるほど……これは、早いところ脱獄しないとな」


 牢屋に入れられることは構わないが――いや、構わなくはないけれど、とにかく拷問なんてごめんだ。どうにかして逃げる算段を付けないと。


「脱獄……するつもりなんですか?」

「あぁ、まぁ」


 あれ、いま迂闊に肯定したのは不味かったか? いや、まぁ、別にいいか。脱獄する気なのは、そもそも相手方に見抜かれていることだし、今更か。


「なら、同じ牢屋になってしまったので、しようがありません。協力します」

「え?」


 それは予想だにしていない言葉だった。


「近いうちに脱獄をします」

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