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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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火炎の大剣


「まぁ、なにが言いたいかって言うとだ」


 ムカつく探求者は無精髭をなぞりながら言葉を続ける。


「手間を掛けさせないでほしいってことだ」

「手間?」

「あぁ、手間だ」


 彼はキャンプで使うような簡易椅子に腰掛け、煙草をくわえた。


「知ってるか? 高位探求者ってのはとっても忙しい」

「聞いたことはある」

「そうか。じゃあなんで忙しいと思う? 正解は、忙しいからだ。はっはー」

「とてもそんな風には見えないけど」

「そりゃそうさ。暇を見つけては休息しないと身が持たない」


 ライターに火を付け、紫煙を燻らせる。


「新しいダンジョンの探求、凶暴な魔物の討伐、いかれた思想犯の逮捕、街の防衛やら要人の警護やら、高位探求者の仕事は多いし、どれも失敗が許されない。だから、こういう機会に休むんだ」

「俺を簡単に殺せるから?」

「それもあるが……」


 紫煙を吐いて、火のついた煙草でこちらを差した。


「こうして話している間は襲ってこないって知ってるからだ」


 したり顔で、彼は再び煙草をくわえる。

 ムカつくけれど、彼のいうことは当たっている。俺自身、無防備な相手を――人間を、攻撃することはできない。たとえそれが俺を殺そうとしている奴でも。

 俺が人間を相手に取れるのは反撃か防衛か逃亡しかない。


「病院送りになった春野から話はきいた。かわいそうに全治一週間だとよ、ざまぁみろ」


 心底楽しそうに、彼は笑った。

 仲が良いのか悪いのかわかったものじゃあない。けれど、もし仲が良いのであれば、彼が現れた理由は復讐なのかも知れない。

 なら、話を聞かずに逃げたほうが懸命か? いや、相手もそれは承知のはず。寧ろ、それを待っているとも考えられる。背を向けた瞬間にずどん、なんて御免だ。なにか罠を張っているかも。あるいは他に仲間がいるか。

 精霊に尋ねるのも手だが、この距離で言葉に出すのは気が引ける。探求者側に精霊の存在を知らせたくない。


「いいか? さっきも言った通り、高位探求者は忙しい。人数が一人欠けただけで大きなしわ寄せがくる。俺がここにいるのもそのせいだ。まぁ、お陰で久々にゆっくりできてるがな」

「なら、感謝してこのまま引き下がってほしいものだけど」

「残念ながらそうはいかない。しわ寄せとはいえ、代理を受けた身だ。半端な仕事はできない」

「その格好で半端じゃないと?」

「ん? あぁ。はっはー、言うじゃないか」


 そう言った彼は、姿勢を正すように簡易椅子から立ち上がる。


「最後に確認しておくが、引く気はないんだな」

「あぁ、ない」

「何百万人って善良な市民を巻き添えにするかも知れないのにか?」

「そうはならないし、俺には果たすべき約束がある」

「そうかい。なら、しようがない」


 彼は身の丈ほどある大剣を創造し、どっかりと肩に担ぐ。


「はじめようか、スケルトンちゃん。人間を殺すようで気が引けるが、粉々に砕いて畑にまいてやるよ」

「人間を殺すよう、じゃない。殺そうとしてるんだよ、あんたは」

「まぁ、お前にはそう見えるかもな」


 瞬間、彼が地面を蹴って肉薄する。それを阻止しようと、こちらは周囲の地面を抉って砂を生成し、束にして差し向ける。


「おおっと。こいつはまた面倒だ」


 そう言いながら、しかし余裕そうに、彼はうねる砂の束を大剣で打ち砕く。弾けたように砂が散り、彼の足は止まらない。追加で何束か同じようにしてみたけれど、そのことごとくが弾け飛んだ。

 散らばった砂から足元を狙ってもみたけれど、疎かにしていないのか足が捕まらない。

 あとすこしで捕まえられるというところで抜けられてしまう。

 流石は高位の探求者とだけあって、足捌きも巧みだ。


「ほらほらほら、届いたぞ」


 妨害もなんのその。彼は間合いに俺を捉え、担いでいた大剣を振り下ろす。

 直後、がんという鈍い音がなって、その一振りは俺に直撃した。


「いいや、届いてない」


 ガーゴイル・デザート。この魔力は物凄く硬く、あらゆる属性に耐性を持つ。たとえ高位探求者の一撃でも、損害は軽く抉れた程度だ。微量の魔力ですぐに治せる。


「こいつは驚いた」

「驚くのはまだ早い」


 地面に散らばった砂をすべてこちらへと呼び戻し、地面を這う砂の津波が檻のように周囲を囲む。すぐに天井も塞がり、出口のない砂の中に閉じ込めた。


「捕まえた」

「いいや、捕まってない」


 四方を固められたと知るや否や、彼は後方へと跳んだ。

 そこにはすでに砂の壁がある。しかし、そんなことはお構いなしに彼は大剣を振り抜いた。


「――飛炎」


 燃え盛る深紅の炎。刀身から燃え上がるそれは砂の壁を焼き払い、まんまと脱出を許してしまった。信じられない火力の高さだ。

 黒く焦げ付いた砂をどかすと、燃え盛る大剣を伴った彼が見える。彼はこちらを振り返り、視線が合った。


「驚くのはまだ早い」


 燃え盛る大剣を肩へと担ぐ。


「さて、第二ラウンドだ」


 彼はムカつくが、かなり強い。

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