表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/164

冷凍の形見


 混淆を発動し、ガーゴイルの死体から遺骨を抜く。骨は砂の魔力となって全身を駆け巡り、すべての骨に変異を促した。重く響く鈍痛と、成長痛のような苦痛。変異に伴う痛みを乗り越えた先で、俺は新たな力を手に入れた。


「――ガーゴイル・スケルトンに変異しました」


 ガーゴイル・スケルトン。砂色の魔力が生前のガーゴイルを模倣し、身体を覆って硬質化している。魔力だけに留まらず、骨の硬度も上がったように思えた。

 自身の内側から溢れ出してくる魔力の質が上がっているし、それを受け止めるための器も大きくなっているのを実感できる。

 変異は成功。俺は石のように硬い防御力と、あらゆる属性に対する高い耐性を得た。


「……」


 試しに足元に散らばっている砂を巻き上げてみる。それらは砂塵となって竜巻となり、一所に集まって砂の山になった。しっかりとガーゴイルの能力を身につけている。水ブレスも、以前よりも強力になっていることだろう。


「よし、それじゃあ」


 砂を使って、耕太たちの形見を持ち上げる。努めて優しく丁寧に。


「これをどう届けるか考えよう」


 ダンジョンを歩いて見かけた探求者に事情を話すのもいいが、まず間違いなく失敗に終わる。かと言って、美鈴には頼れない。美鈴の師匠とも約束をしたし、人間に戻るまで姿を見せることは出来ない。

 一応、魔道具を使って通信をすることくらいは許可されているが。


「結局、美鈴を頼ることになりそうだな」


 名案が浮かばないので、いまできる精一杯のことをやろう。

 とりあえずガーゴイルの住処を出て、通路を歩く。目指す先は今や懐かしい低位の魔物が徘徊する地域だ。今となっては敵にもならないコボルトやゴブリンを薙ぎ倒しながら、ダンジョンの適当な場所に目を付ける。


「ここでいいか」


 壁に立てかける形で、耕太たちの形見を置いて、その周囲を魔氷で固める。

 かまくら、というか、カプセルというか、冷凍睡眠装置というか。とにかく、それに閉じ込めた。覆っている魔氷には白銀刀で文字を掘った。

 耕太たちの名前だ。五人分。短いメッセージを添えて。

 すべて口頭で伝えれば済む話だけど、これは俺たちの関係を悟られないためのカモフラージュだ。

 どこかの親切な亜人が耕太たちの最期を看取り、親切心から魔氷に形見を閉じ込めた、というのが、無い知恵を絞って考えたシナリオだ。


「――はい、わかりました。私が必ず見つけて、支社に持ち帰ります」


 というのを、魔道具を介して美鈴に説明した。


「あの、その方達は……」

「あぁ、スケルトンにはなってないよ。ウィル・オー・ウィプスになって、最後には成仏したから」

「そうですか……わかりました」


 魔物になってしまうなんて、あまりに残酷な最後だ。

 俺が言えたことじゃないが。


「まだ掛かりそうですか? 人間に戻るのは」

「どうだろうな。でも、確実に前には進めてる。再会の時も近いかも」

「それはよかった。この日、一番の朗報です。それではお気を付けて」

「あぁ、ありがとう。それじゃ」


 通話を切り、今一度、魔氷に刻んだ名前を見る。

 彼らはこの不格好な冷凍睡眠装置の中から無事に見つけ出されるだろう。

 俺とは違って日の光を浴びられる。誰からも忘れられることなく、遺族と再会できる。望んだ再会ではないだろうけれど、それがすこし羨ましい。

 帰る家がなければ、待っている家族もいない俺からすれば――


「おっと、そうだった」


 待っている人ならいるんだった。

 家族になってくれる人がいる。

 セリアのためにも、足をまえに進めないと。


「そのためにも、まずは魔力を補給しないとな」


 今更、コボルトやゴブリンでは足しにもならない。

 ほかの探求者に見つかるまえにこの場を後にして、高位の魔物が跋扈する地獄に戻ろう。

 砂を束ねて槍とし、有象無象を薙ぎ払って通路を進む。石翼を羽ばたいて砂塵を巻き起こし、目を潰して身動きが出来なくなった魔物を砂の縄で締め上げる。

 砂を操るだけで魔力を喰うが、意外と低燃費だ。傷も砂で治療できれば万々歳だったけれど、流石にそれは出来そうにない。あくまでもベースはスケルトンだ。ガーゴイルそのものになれるわけじゃない。

 なってしまったら、そこで人間としては終わってしまう。

 だから、この不自由は寧ろ歓迎だ。まだ人間でいられている証で、活力になる。

 人間の部分を、人間性を失いたくない。だから、俺は人を殺さない。

 たとえ、自分を殺そうとしている奴でも、それが人間である以上は。


「甘っちょろくないかぁ? お前は善良な街の人々を脅かす火薬庫で、いつ火がついても可笑しくないんだぜぇ? 俺ならテメェで始末をつけようとするけどなぁ」


 どんなに嫌な奴でも。


「それは、実際にこうなってみないとわからないよ」


 通路の先にある小規模空間で、ばったりと出会った探求者。

 嫌味たっぷりでとても嫌な奴。


「あぁ、そうかもな。俺には肉があって、お前にはない。これじゃあ互いの気持ちなんてわかんないよなぁ? あぁ、昔はあったんだっけ? お肉」


 かなりムカつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作を始めました。こちらからどうぞ。魔法学園の隠れスピードスターを生徒たちは誰も知らない
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ