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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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中位の三人


「今のところ、追っ手は来てないな」


 高位探求者との戦闘から追っ手らしい追っ手は現れていない。

 代わりにそれなりに強い魔物がたくさん出現するようになった。それもそのはず、ここは高位の魔物が跳梁跋扈するエリアだ。中位程度の人や魔物が入り込めば、立ち所に殺されて喰われてしまう。

 そんな厳しい環境だ。

 探求者のほうもやすやすと入り込める場所じゃない。しばらくは追っ手を気にしなくてもいいかもな。正直、それどころじゃない。


「――最後の一体が絶命、周辺に生命は存在しません」

「ふいー」


 漆黒刀を魔力に還し、一息をつく。

 周囲には数多の屍が横たわっている。毒で死んだのか、刀傷で死んだのか、今となってはわからない。まぁ、どちらでも大した違いはないけれど。肉を食うわけでもあるまいし。


「回収、回収」


 死体から骨を吸収して魔力に変換する。

 最近は形態の維持や特性の使用で消費する魔力が増えている。馬力が増した反面、燃費が悪くなってしまった。

 先の探求者との戦闘も魔力が回収できない分、大赤字だ。

 それだけ強くなったということで、それだけ人間に近づけているということだけれど、相変わらず道は険しくて長い。


「はぁ……って、いかんいかん」


 くよくよしててもしようがない。小さくても一歩ずつまえに進めば、いつかは必ず目標に届く。そう信じて前に進もう。


「よし、回収完了っと」


 消費した魔力もこれで補充できた。

 そろそろ次の獲物を精霊に聞くとしよう。


「せいれ――」


 そう、尋ねようとしたところ、通路の先から妙な音を聞く。


「なんだ?」


 唸り声のような、悲鳴のような、怒号のような、なにか。

 ただの空洞音にしてはやけに感情を感じるものだった。

 もしかして、人か? 周囲に生物はいなかったはずだが、意図せず近づいてきたのかも。


「……行ってみるか」


 人なら高位探求者ということで、近づくのは不味い。

 しかし、先ほどの音は通常発し得ない声音だった。もしかしたら怪我をして苦しんでいるのかも。魔物に追い詰められ、苦しんでいるのかも知れない。

 つい最近、人間に襲われたばかりだけれど、窮地に陥っているのなら助けないと。

 その思いが俺の両足を動かし、通路の先へと進ませる。

 そうしてその果てにある小規模空間にたどり着いた時、音は明確な人の言葉となって聞こえてきた。


「なぁ……どうするよ」

「俺に聞くな」

「帰れなくなっちゃったね、私たち」


 空間のど真ん中、互いに向き合うように座り込んだ三人の探求者たち。

 うち二人は男性で、もう一人は女性。空間は相変わらず暗いが、焚き火のような発光物を囲んでいるため、性別くらいは見て取れた。誰も彼も浮かない顔をしている。


「手柄を立てようとして深くまで入り込み過ぎちまったー」


 ばたりと一人が仰向けに倒れる。


「俺たちは所詮、中位探求者だ。身の程を弁えなかった結果だな」


 一人は自嘲するように自分の現状を呟いた。


「でも、まぁ、こうなっちゃったんだから、しようがないよ。それより、これからどうするか考えようよ」


 暗い雰囲気の中、女性だけが前向きな発言をしていた。


「どうするかって言ってもなぁ。思えば、今ここにいること自体、奇跡みたいなものだしなぁ。よく高位の魔物に遭遇しなかったもんだ」

「だが、その幸運の所為で俺たちはここで立ち往生だ。最初のほうで出会っていれば引き返していたかもな」

「運がいいんだか、悪いんだか」


 会話の内容を聞いて察するに、調子に乗ってダンジョンに深入りしてしまった中位探求者たちか。

 恐らく、どこかのタイミングで高位の魔物と出会ってしまい、命辛々逃げ出してきたのだろう。同時に実力不足を実感し、また高位の魔物に畏怖してしまい、また鉢合わせることを怖がって、この場から動けなくなってしまっていると言ったところか。


「さて……どうしたもんか」


 助けたいのは山々だが、生憎とこちらは骸骨だ。

 素直に出て行っても助けさせてはもらえないだろう。中位探求者ともなれば、俺の存在を聞かされていても可笑しくない。最悪、戦闘に発展しかねない。

 かと言って、手を出さないというのもできない判断だ。

 この小規模空間だって安全じゃない。今はたまたま魔物が寄りついていないだけだ。いつかは魔物が訪れるだろうし、そのとき彼らが逃げ切れる保証もない。


「姿を見せないまま、近づいてくる魔物を秘密裏に殺していくか?」


 彼らもずっと留まってはいられない。意を決して帰る判断をしなければならない。その時まで俺が秘密裏に、ここへやってくる魔物を殺し、更に移動した彼らを護衛する。

 これならどうにかなるが……いかんせん、面倒臭い。


「まぁ、見捨てられないし、しようがないか」


 俺が人間であろうとする限り、心は人間のままだ。

 どれだけ面倒臭くとも、それで命が救えるのならやるべきだ。

 それが俺自身のためにもなる。


「なるべく、はやく決断してくれよ」


 そう祈りを込めて、俺は彼らを影から見守った。


「こんな状況では前にも後ろにも進めない。どうにかしないとな」

「どうにかって?」

「それは……考え中だ」

「はぁ……どうして俺たちがこんな目に。できることなら時を遡りたいぜ」


 三人から溜息が漏れ、沈黙が訪れる。動きが完全に停止してしまった。

 しばらくは、このままが続きそうだ。

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[気になる点] こいつらの台詞、滅茶苦茶説明文なんだが、透を油断させる為の罠としか思えない…
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