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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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多眼の魔眼


 滞空を維持しつつ彼の出方を窺う。闇雲に地面や壁を攻撃しても当たらないのは目に見えている。今は期を待って耐えることが最善だ。

 どこから襲い掛かられてもいいように、全身の目に意識を集中する。三百六十度、全方位が映像として魂に流れこんでくる。普通の人間では体験し得ない視界の中で、彼の姿を注意深く探していく。

 そして、攻撃がやってくる。

 自身の左側にある空間の壁が、波打つように波紋を描く。瞬間、とてつもない速度で彼が飛びだしてきた。


「くっ」


 目で追うことも叶わず、ほぼ反射で彼の攻撃を受け流す。だが、通り過ぎた彼は再び壁に潜行し、すぐに別角度から攻撃を仕掛けてくる。

 上下左右。縦横無尽にあらゆる角度から攻め立てられ、反撃する余裕すらない。


「このままじゃっ」


 反射に頼り切りでは完全には攻撃を捌けない。

 彼の剣は確実に身に纏う魔力を削っている。回数を重ねるごとに剣閃は鋭くなり、速度を増し、傷は深くなっていく。

 毒が効果的ではない以上、別の形態になるべきか?


「いや」


 まだこの形態でできることはあるはず。


「――」


 全身に配列された多眼に魔力を供給し、その直後から世界の見え方が変わる。

 壁の波紋、彼の速度、空気の波打ち、己自身。そのすべてがスローモーションのようにゆっくりと流れている。

 視覚の鋭敏化。

 オチューはこれを駆使して、俺の攻撃から臓器を守っていた。道理でいつも寸前のところで避けられていた訳だ。メイの先読みがなければ攻撃があたる気がしない。


「ここだっ!」


 視覚の鋭敏化は体感で数秒ほどで終わり、時間の流れが元に戻る。

 だが、それだけじっくり観察できれば彼の動きは手に取るようにわかる。


「なっ!?」


 放たれた突きを躱して手首を掴み、振り回すように旋回し、急下降する。

 このまま地面に叩き付ける――と、潜行されてしまうので地面を凍結させて魔氷を張る。これは俺の魔力で作ったもの。彼の魔力に干渉し、すぐには潜行できないはず。潜行できなければ、激突の衝撃は逃がせない。


「くっ――この野郎っ」


 彼を魔氷へと叩き付け、鈍い音と衝撃が大気を揺らす。自分は地面を滑空するように着地した。

 これである程度のダメージは与えられたはず。しかし、彼は激突の瞬間に風の魔法を発動していた。恐らく衝撃を和らげるため。


「ぐっ、げほっ……やるな」


 剣を支えにしつつ、彼は魔氷の上に立ち上がる。

 風の魔法と見えない障壁でかなり軽減したみたいだけれど、衝撃を完全に消すことはできなかったらしい。けれど、思ったよりダメージは与えられていなかった。

 これがダメなら――


「次は……こっちの番だ」

「いいや、あんたの番は回ってこない」


 再び、全身の目に魔力をこめる。


「だんだん、この形態の使い方がわかってきた」


 この形態の真価は毒でも視力でもない。最も特徴的な多眼だ。

 あらゆる瞳にあらゆる魔力を流し、属性を宿らせる。瞳が属性の色に染まり、規則正しく配列された瞳は魔眼と化した。それは視界に入った者すべてに牙を剥き、魔眼から放たれた各属性のレーザーが一斉に彼へと襲い掛かる。


「くそっ」


 彼は迫るレーザーを剣で斬り裂いて捌く。火の属性には水の属性で、雷の属性には地の属性で、斬り伏せてみせるもレーザーの嵐が止むことはない。

 それがわかってすぐ彼は地面に潜行したが、レーザーはそのまま追尾を続けて地中を追い回す。

 彼の魔法は地面や壁を水のような状態に変えるもの。彼のすぐ後ろをついていけば、レーザーも地中を移動できる。

 だからこそ、レーザーは追いついた。空間の壁の一部が内側から爆ぜ、瓦礫とともに彼が空中に放り出される。その無防備な瞬間へ、追加のレーザーを叩き込んだ。


「ぐっ、あああぁああッ!」


 焼かれ、溺れ、凍り、斬り裂かれ、痺れ、数多の衝撃が彼を襲う。

 流石の見えない障壁も破壊し尽くされ、彼は大きなダメージを受けて落下した。


「よし、あとは絶氷で――って、あれ」


 勝負が決まったと、一瞬だけ気を抜いたのがいけなかった。

 彼は落下したまま地面に潜行し、姿を完全に消してしまっている。


「……あの負傷で戦闘継続ってことはないと思うけど」


 このまま逃げてくれたのなら、それはそれでいい。

 手間が省ける。余計な魔力を使わずに済んだ。


「今回は勝てたってことでいいのかな……でも」


 もともと、探求者は何人かでパーティを組むのが基本だと言う。

 美鈴も朽金も五人がかりで標的を倒す動きをしていたから間違いない。

 例外は美鈴の師匠と、今回の逃げた彼だけ。

 彼一人が相手でも手こずらされた。あのレベルの探求者があと四人集まったら、今回みたいにうまく斬り抜けられないかも知れない。

 数の力はいつだって個を凌ぐ。

 この勝利に酔っている時間はない。もっともっと力をつけないと。


「次だ。次にいこう」


 高位探求者の襲撃に危機感を覚えながら、次へと足を進ませる。

 まずは消費した魔力を補充して、それから精霊に次の標的を尋ねるとしよう。

 次はオチューよりも強い魔物で、今現在の俺より格上のはず。今から気を引き締めておかないと。

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