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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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毒翼の飛翔


 剣を構え、真正面から彼は突っ込んでくる。

 その速度は当然のように人間の限界を超えていた。元から強化魔法が施されていたのか、それとも美鈴の師匠がそうであったように、無詠唱での魔法の行使をしているのだろうか。

 答えがどちらにせよ、俺がやるべきことは決まっている。

 振り下ろされた剣先を躱し、握り締めた左の拳でカウンターを決めた。

 けれど、胴体を完全に捕らえたはずの一撃は見えない障壁に阻まれて肉体にまで届かない。幸いなことに衝撃で高位探求者である彼を吹き飛ばせたものの、それも僅かな距離ででしかない。

 すぐに地に足をつけ、衝撃を殺された。


「これがスケルトンの動きか? 大したものだ」


 携えた剣を回転させ、担ぐように肩へと乗せる。

 その無駄な動きからは、余裕が見て取れた。


「そいつはどうも」


 左の拳を解いて軽く振るう。

 オチュー・スケルトンとなった今の俺の腕力はそれなりに強いものだ。ジャックフロストのように乱暴でなく、ある程度の鋭さをもって拳を放てている。

 かつての強敵だったサラマンダーの鱗程度なら割ることができただろう。

 だが、彼の見えない障壁にはひび一つ、傷一つ、つけられなかった。

 やはり高位の探求者だ。そう簡単に攻撃を通してもらえそうにない。


「なら――」


 人間相手に使うのはすこし怖いが、やるしかない。

 極限まで薄めた毒を気づかれないように散布する。恐らくは人間よりも強靱なリザードマンが耐えられなかった毒だ。人間の免疫力ならすぐに毒が回って動けなくなる。

 そうなれば勝負はついたも同然だ。魔氷で隔離するなりして逃げよう。

 毒が抜けて動けるようになれば、魔氷くらい内側から簡単に砕けるだろう。


「……逃げても追い掛けてくるんだろ?」


 毒の散布を開始しつつ、時間を稼ぐように問いかける。


「あぁ、お前を殺すまで」

「なら、しようがない。しばらく、再起不能になってもらう」


 しかし、会話に長く時間をかけていると不審に思われてしまう。

 交戦の意思を見せたところで、こちらから仕掛けよう。


「行くぞ」


 右腕ごと刀身を浅葱色に染めて地面を蹴る。

 風を伴いながら一息に距離を詰め、浅葱刀を薙ぐ。繰り出した剣閃は、同じ剣閃によって相殺される。人間とはとても思えない腕力に負けないように、その場で数度ほど打ち合った。

 しかし、不意に剣撃の音が消え、風切り音だけが鳴る。

 目の前から探求者の彼が消えた。


「どこだ?」


 彼の姿を探して視線を彷徨わせた、その瞬間。自身の内側で、彼が得物を振るうビジョンを見る。それはフラッシュバックでも、未来予知でもない。今現在、俺の背中にある多眼が見ている映像だった。


「そこか」


 振るわれる斬撃に対して、背後に回した浅葱刀で受ける。

 甲高い音が鳴って、背後からの不意打ちをどうにか防ぐことができた。


「これを初見で防ぐか」

「目がたくさんあるもんでね」


 彼の得物を弾いてすこし距離を取り、改めて向き直る。

 不意打ちが失敗してもなお、彼からは余裕が消えていない。

 それが不気味だった。


「……」


 不気味と言えば、彼はまだ動けるのか。

 毒の散布はすでに完了し、この小規模空間に満ちているはず。そろそろ、というかすでに身動きが取れなくなっていてもいいのに、どうしてまだ彼はあんなにも余裕そうなんだ。


「毒ならいつまで待っても効きはしない」


 俺の思考を見透かしたように彼は呟いた。


「対策くらいしているさ。お前が毒を使うとは思っていなかったがな」


 彼の言葉を聞いて、自分の愚かさを思い知らされる。

 毒をもつ魔物はオチューだけではない。大なり小なり、毒をもつ魔物はいるだろう。探求者はそんなダンジョンで活動しているんだ。毒の対策なんて常にしているに決まっている。

 極限まで薄めたような弱い毒では通用しない。

 だが、かと言って強い毒を使ってしまうと彼の命を奪いかねない。

 毒は生命に対して危険でありすぎる。


「……くそっ」


 思ったようになってくれないのは世の常か。

 この形態の最大の強みである毒が生かせないのであれば、また別の方法を考えなければならない。幸い、多眼のお陰で今の俺にはどの角度からの攻撃でも察知することができる。

 この特性を生かして活路を見いだすしかないみたいだ。


「当てが外れたところで、続きと行こうか」


 彼は肩に担いだ得物に鋭い風を纏わせる。

 風の魔法を帯びた剣が虚空を引き裂き、斬撃が風刃となって飛ぶ。

 こちらもそれに対抗して浅葱刀から風刃を飛ばす。

 二つの風刃は互いにぶつかり合い、突風を巻き起こして爆ぜ散った。

 それに会わせるように、またもや彼の姿が視界から消え失せる。


「――くっ」


 身体中に配列された多眼を駆使し、消えた彼の姿を探す。

 次に彼を捉えた位置は、自身の足元。地面から風を帯びた剣が伸び、鋭い突きが放たれる。


「あぶっ――」


 咄嗟に身を逸らして躱すも、剣は自身の数センチ先を掠めていく。

 一瞬でも判断が遅れていたら、下顎から頭蓋を貫かれていた。

 彼は地面に潜行できるのか。


「厄介な人に目をつけられたっ」


 相手の魔法を知って、即座に毒翼を羽ばたいてその場から飛び上がる。

 空中に逃げてしまえば、さっきのような不意打ちも食らわない。

 だが、こちらからの攻撃手段もないに等しい。


「いっそこのまま逃げるか?」


 いや、狭い通路に逃げ込んだら相手の思う壺だ。

 空間が確保できているこの場所で彼を無力化するのがベスト。

 その手段は……考え中だ。


「どうにかしないと」


 彼はまた地面に潜行して出てこない。

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