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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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再生の対処


 蠢き、脈打つ浮き出た血管が編み目のように張り巡らされている。皮膚の色は死体のように赤黒く、その表面に点在する数多の目玉はぎょろぎょろと忙しなく動き、触手は全方位に向けて蜘蛛の巣状に張り巡らされている。

 図体は見上げるほどあり、光源だけでは照らしきれない。そして思わず鼻を押さえたくなるような、腐った死臭がした。


「こいつが……オチュー」

「――間違いありません。この個体がこの洞窟を支配しているオチューです」


 実に生物らしくない形状をしている。不定形で、例えるなら肉袋といったほうがいい。


「メイ。下がって隠れてろ」

「で、でも!」

「お願いだ。言うことを聞いてくれ」


 オチューの数多ある目玉が一斉にこちらを向く。血走った眼が俺たちを捕らえた。


「わ、わかった……」


 流石にオチューが怖くなったのか、素直に後ろへ下がってくれた。

 光源が照らし出す範囲外に出て、どこかへと身を隠す。吸血鬼は恐らく、夜目がきく。光源の明かりもなしに、この洞窟を走り抜けられたんだ。そうに違いない。


「よし、気合い入れていくぞ!」


 紅蓮刀を構え、立ちのぼる火炎がゆらりと揺れる。

 それを警戒したのか――


「キィィイイイィィイイヤァァアァアァァアアアッ!」


 目玉と同じく、全身のいたるところが裂けて口となり、そのすべてが絶叫する。

 びりびりと音圧を感じるほどの声量の中、それを斬り裂くように駆けた。一息に至近距離にまで接近し、火炎を乗せた突きを放つ。刺突から出でる炎刃は鋭い直線を描き、血走った目玉の一つを貫いて焼却する。


「ギィィイィィイイヤアァアァアァアアアアッ」


 目玉が潰れて視神経が焼き切れる地獄を味わい、オチューは悲鳴を上げた。

 しかし、それも一瞬のこと。本体から分離した独立個体でさえ、異常とも言える再生能力を有していた。その大本ともなれば、その再生速度は比べものにならない。

 瞬く間に潰れた目玉が再生する。火傷も完治し、傷跡一つ残らない。


「この程度じゃダメージにもならないか」


 痛がっていた割には成果がない。このまま攻撃したところで、こちらが消耗するばかりか。なにか別の手を考えないと。


「キィィィイイィイイイッ」


 津波のごとく重なって押し寄せてくる触手から逃れるように地面を蹴り、思案する。

 追いついてくる触手を躱し、斬り裂いて、なんとか時間をひねり出す。

 ただの傷ではすぐに再生してしまう。治りが遅くなるはずの火傷も効果なし。そうなると次に効果的だった魔氷の出番か。


「よし」


 そうと決めて、早速ジャックフロスト・ボディに全身を変換する。同時に四方八方から打たれる触手の鞭に向けて、結晶鎧の隙間から冷気を撒き散らした。

 一瞬にして凍てついた触手たち、その最中で白銀に塗り替えられた刀身を振るう。

 一振りは氷刃となって放たれ、オチューの本体を傷つける。それだけに終わらない。刻みつけた傷口を冷気で凍結させ、再生を妨害した。


「これでどうだ?」


 傷を上書きする凍傷の痛みに、オチューは身もだえている。効果はあるみたいだ。このまますこしずつ凍結させていけば、追い詰められるかも知れない。

 攻略の兆しが見え、更に白銀刀に魔力を込める。

 しかし――


「ギィイイィイイッ」


 オチューは自らの体を分離し、独立個体を生み出す高位の魔物だ。再生が出来なくても、凍った部分を自ら切除することができる。ごとりと、凍った患部が落ち、切り離した部分から再生してしまう。


「ダメかっ――なら!」


 結晶鎧の背を突き破り、ヒポグリフの大翼が生える。全身をヒポグリフ・フェザーに変換、氷漬けにした触手の中心地から舞い上がり、翼に風の魔力を込めた。


「細切れにしてやる」


 翼に貯めた魔力を全解放し、無数の風刃を叩き込む。

 どの属性よりも鋭い風の刃によって、オチューの本体は切り刻まれる。細切れにし、肉片とし、その生命を死へと追いやった。通常の魔物なら確実に絶命しているほどの負傷だ。

 けれど、それでも。


「どんな仕組みしてやがるんだ、あいつはっ」


 散り散りとなった肉片は地に落ちることもなく、まるで時間に逆行しているかのように集まり、オチューを再構築する。繋ぎ合わされ、接着させ、出来上がった肉袋に、再び数多の目玉が開く。

 攻撃のことごとくが通じない。


「くそっ」


 ならばとサンダーバード・ウィングに変換。紫電を纏い、雷撃を放つ。

 しかし、これもあまりいい手とは言えなかった。電熱で焼いても、雷撃で神経に影響を与えても、圧倒的な再生能力のまえでは無意味となる。

 思いつく手段はすべて試してみたが、倒せそうにない。


「……しようがないか」


 触手の末端から生えた剥き出しの牙を躱しつつ、俺は最後の手段にでる。

「精霊、奴の弱点を教えてくれ」

 出来る限り、自分自身の力で困難を乗り越えるべく、戦闘に関してはなるべく頼らないようにしていたけれど。背に腹は代えられない。近くにはメイもいる。下らない意地を張らずに、使えるものはなんでも使おう。


「――オチューの体内に再生能力を司る臓器の存在を複数確認。それを取り除くことを推奨します」

「臓器か」


 先ほど風刃で細切れにしても、再生は止まらなかった。 

 なら、臓器はそれほどまでに小さいということか。


「――また臓器は体内を高速で行き来し、一所に留まっていません」

「……もうなんでもありだな」


 ともかく、弱点がわかった。それを潰すことに専念しよう。

 得物で突き刺したり、斬ったりするのでは狙いをつけるには不十分だろう。だから、全身をヒポグリフ・フェザーに変換。浅葱刀に魔力込めて飛翔する。

 風の魔力を細かい風刃にして振るえば、局所的にではあるが一定の範囲を高密度に細切れにできる。この方法でどうにか、オチューの再生能力を封じなければ。

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