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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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進軍の再開


「おつかれさま! あなたのお陰でようやく奪還作戦に現実味が帯びてきたわ!」


 とても嬉しそうにリーゼは言う。

 今にも踊り出しそうな勢いだ。


「そいつはよかった。この後もうまく行くといいな」

「そうね。そのためにも操雷のメンテに遺物の調整に、やることがたくさんだわ」


 嬉しい悲鳴、と言ったところか。

 リーゼの幼い顔つきが、どこか楽しそうに見える。

 こうして見てみると、本当に中学生くらいの少女に見えてくるな。

 二十代の女性に対して失礼すぎるから、口に出したりはしないけど。


「あぁ、そう言えば」


 ふと思い出して空を見上げる。


「頼まれていた通り、鹵獲しといた」


 立てた人差し指の先には機械鳥がいる。

 あたかも本当の鳥であるかのように、上空を優雅に旋回していた。


「助かるわ。えーっと……これを、こうしてっと」


 リーゼは懐から小型の端末を取り出す。

 ゲーム機のような、トランシーバーのような、リモコンのような、機械。

 それをすこしたどたどしい手つきで操作する。


「カカカ――カカ――」


 すると、上空から機械鳥が降りてくる。

 地面に風を叩き付けながら着地し、翼を折り畳んで停止した。

 微動だにしなくなった機械鳥は、次の指示が下るまで微塵も動かないだろう。

 こうしてみると、やはり機械なのだと再確認させられる。

 その構造や仕組みなんて想像もつかない。


「うん、成功ね」

「それは?」

「魔導器よ。操雷で操った遺物に細かな指示を出すのに必要な端末なの。これがなくても自動で味方をしてくれるけど、こっちの思い通りには動いてくれないのよね」

「そういう、ことか」


 操雷を突き刺すだけで遺物はリーゼの指揮下に加わる。

 その場合は自動でほかの遺物を叩いてくれるらしい。

 だが、指示には従ってくれないので、ただ無策に暴れ回るキリングマシーンになってしまう。

 戦場で敵味方の識別がつくなら、暴れているだけでも構わないが、作戦を遂行したいならそれではダメだ。

 やはり、こちらの思うように動いてもらわないと困る。

 だからこその魔導器――所謂、コントローラーと呼ばれるものが必要になってくる。

 オートは便利だが、マニュアルのほうが都合がいいこともある。


「さてと。じゃあ、この子から調整を始めちゃいましょうか」


 リーゼの手によって魔導器が操作され、機械鳥が地上を歩き出す。

 銀色の機械的な二足がよたよたと、すこし不格好な歩き方で陣形の中心へと向かっていく。

 周囲にいたドワーフたちは、それを物珍しそうな顔で眺めていた。


「私たちも行きましょう。ほら」


 不意に手を引かれる。


「おっと」


 それにすこし驚きながらもリーゼに歩幅を合わせた。

 しかし、リーゼは力持ちだ。

 手を引く際の力強さたるやいなや、思わず転んでしまいそうだった。


「――おぉ! トオル! よくやってくれたっ!」


 陣形の中心地にまで向かうと、ラシルドに両手を伸ばして迫ってきた。

 その勢いに呑まれるように、その逞しい腕の中に捕らわれてしまう。

 熱い抱擁は嫌いじゃないけれど、そのまま持ち上げられるのは勘弁願いたい。

 こうなることがわかっていたのか、リーゼは寸前のところで回避に成功していた。

 彼女のその表情は、ごめんなさいね、と言っているようにも見えた。

 そんな顔をするくらいなら、事前に教えておいてもらいたかったものだ。

 なんとも暑苦しい。

 まぁ、それほど嫌なものではないけれども。


「お前さんのお陰で士気も高い! この後もその調子で頼むぞ!」

「あぁ、もちろんそのつもりだけど。とりあえず、下ろしてくれ。折れちまう」


 変異を重ねて頑丈になっているから、本当に折れることなんてないだろうけれど。

 ただのスケルトンだった頃なら、この抱擁は立派な攻撃になっていた。

 背骨が折れていたに違いない。


「おぉ、すまないな。悪い癖だ」


 願いが通じて、ようやく下ろされた。

 地に足を付けて、ほっとする。

 そうしていると、ラシルドの背後から一人のドワーフが現れた。


「兵長! ちょっといいですか?」

「ん? あぁ、すぐに行く」


 ラシルドは返事をして、またこちらに向き直る。


「お前さんは作戦の要だ。今後もよろしく頼む。そうだ、腹が空いているだろ? こいつを喰っておけ」


 懐から取り出されるのは、プラスチックのような質感のコンパクトな箱だった。

 けれど、大きさの割にはずっしりと重い。


「これは?」

「俺たちドワーフが戦の合間に喰う糧食だ。栄養満点だぞ」


 レーションって奴か。

 それも筋骨隆々なドワーフ用の。


「ありがとう。ありがたくいただくよ」

「あぁ、そうしてくれ。それじゃ、今夜はゆっくり休んでくれ、敵が来るまでな」


 そう言い残してラシルドは足早に去って行った。

 立場のある者として、行うべきことがたくさんあるのだろう。

 わざわざ時間を造って俺を労ってくれたことを素直に嬉しく思う。


「さてと、私もぱぱっと調整を終わらせてご飯にしよっかな。あなたはどうするの?」

「そうだな……どこか静かな場所でゆっくりしたいかな」

「そう、なら……あそこなんてどうかしら?」


 リーゼが指差す先には忙しなく動くドワーフたちがいる。

 その更に先には荒野に寂しげに立つ一本の樹木があった。

 一見して枯れ木のような外見をしているが、よく見てみれば茶色い葉を付けているのがわかる。

 こんな荒れ果てた野にも、樹木は根を張り立派に育つものなんだな。


「なにかあった時はすぐに呼べるし、ちょうどいいでしょ?」

「あぁ、そうさせてもらう。調整、大変だろうけど頼んだぞ」

「任せてちょうだい。次の戦いは今日よりもぐっと楽になっているはずよ」


 にっと笑って、リーゼは機械鳥のもとへと向かう。

 俺はその小さな背中から、樹木へと視線を移してそちらへと足を進めた。

 根元にまでたどり着くと、そこから軽く跳んで枝へと跳び乗る。

 しなりはしたが、十分に丈夫な枝だった。


「さーてと……初めて喰うな、レーション」


 食欲というよりも好奇心から早速レーションのを開けてみる。

 一番に目を引いたのは幾つかの缶詰とラッピングされたゼリーのようなもの。


「ははっ。缶詰の中身、肉ばっかりだな」


 缶詰に描かれた絵柄から、中身が肉ばかりだとわかる。

 鳥肉とか牛肉とか豚肉とか、そういった種類ごとに缶詰にされているみたいだ。


「ビスケットに……あまい匂いがするこれは……お菓子かな」


 角砂糖とか、チョコレートとか、ココアとか、コーヒーとか。

 娯楽品も重要な要素だと聞く。

 このあまい匂いがするこれも、その類いのものだろう。


「あと、このゼリーみたいなのは……やけにカラフルだけど」


 サイコロのような形状のゼリーが全部で六つ。

 うち、三つは赤、青、黄色で、残りはすべて透明だった。


「まぁ、食べてみるか」


 まずは一番、得体の知れないゼリーから。

 赤色のゼリーのラッピングを外し、口の中へと放り込む。


「――あまっ」


 途端に甘味の暴力が俺を襲った。


「水――ジュースか、これ」


 魔法――術式か何かでゼリー状にしてあるジュース。

 口の中に入れた途端に融けて口の中が甘さで満ちた。

 かき氷のシロップを煮詰めたような味がする。


「甘ったるい……けど」


 疲れた身体には、特にドワーフの屈強な肉体には、これくらいが合っているのかも知れない。

 糖分補給という役割は十分にこなせている。


「色がついてるのがジュースで、透明なのが水だな。きっと」


 次に缶詰に手を付け、中身の肉を味わう。


「しょっぱい、けど……なかなか」


 しょっぱさに面を喰らったが、その奥ではしっかりと肉の味がした。

 牛と豚の中間のような不思議な味わいだ。

 ラシルド邸で振る舞われたサイコロステーキとも、どこか違うように感じる。


「ビスケットもしっかり味がついてるし、お菓子は金平糖みたいだな」


 控えめな甘さが味覚に優しい。


「――ふー」


 肉のしょっぱさをゼリーの甘さで掻き消し、その甘さをビスケットで吸い取る。

 そんなちょっとした遊びを入れつつの食事はなかなか楽しいものだった。


「もう夜だな」


 視線を上に持ち上げると、黒に塗り潰された天井が見える。

 ここには夜光石の鉱脈がないようで、人工太陽が消えれば真の闇になる。

 明るいのは人工灯で明かりを確保しているここと街くらいのものだ。

 静けさに満ちていて、夜の雰囲気に呑まれて浮かれていた気分もすぐに元に戻った。

 すこし寂しいくらいだ。


「……そうだ」


 衣服のポケットから魔道具を取り出して起動する。

 ちょうど時間が出来たから、セリアと話をしよう。


「よう、セリア。いま大丈夫か?」

「透さん! はい、大丈夫ですよ」

「よかった。俺はいま――」


 魔道具を介してセリアと会話を交わす。

 俺が話すことにセリアはとても興味深そうに相づちを打つ。

 それが嬉しくて時を忘れたように話をした。

 そうして夜は更け、朝がやってくる。

 意外なことに夜襲は受けなかった。

 サンダーバードも夜は寝ているのだろうか?

 とにかく、夜は明けた。

 進軍再開だ。

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新作を始めました。こちらからどうぞ。魔法学園の隠れスピードスターを生徒たちは誰も知らない
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