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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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昼夜の概念


 朝。

 窓から人工太陽の朝日が射し込む時間帯にて。


「ねぇ、起きてるかしら?」


 こんこん、とノックの音がしてリーゼの声が響いた。

 疑似睡眠をとっていた俺は、その声を聞いてベッドから起き上がる。

 気がつけばかなり時間が経っていたようだ。


「あぁ、起きてるよ」


 ふかふかのベッドは久しぶりだった。

 本当に眠れはしないが、心地よい夜だった。

 病室のベッドよりもはるかに居心地がいい。


「あら、残念。あなたが寝ているところを観察したかったのに」


 がちゃりと扉が開いてエプロン姿のリーゼが現れる。

 なにやら美味しそうないい匂いもしてきた。


「まぁ、いいわ。朝ご飯の準備ができたから降りていらっしゃいな」

「あぁ、ありがとう。すぐに行く」


 そう返事をするとリーゼは先にリビングへと向かう。

 それを見て、俺もベッドから足を降ろした。


「なんだか……不思議な気分だな」


 朝と昼と夜がある生活。

 それはコールドスリープから目覚めて初めてだ。

 水底だったり、常夜の森だったり、時間の流れを体感しにくい環境にばかりいた。

 けれど、このドワーフの街は違う。

 朝には太陽が点灯し、夜には月光のように淡く輝く。

 俺はここに来てようやく通常の時間の流れというものを味わえていた。

 すこしだけ人間らしくなれた気がする。


「あ、降りてきたわね」

 寝室として用意してくれた部屋を出て階段を降りる。

 そうすればすぐにリビングに到着した。

 そこに昨日のような騒がしさの痕跡は一つも見当たらない。

 朝の穏やかな雰囲気が詰まっている。

 こうして改めて見てみると天井がすごく高く感じた。


「おはよう、トオル。さぁ、そこの席に座ってくれ。まずは飯だ」

「あぁ」


 ラシルドに促されて席に腰掛ける。

 すると、時を同じくしてリーゼが料理を運んできてくれた。

 朝食のメニューは。


「サイコロステーキ……」


 肉汁が滴っている。


「好きでしょ?」

「あぁ、好きだよ。ありがとう」


 歓迎会で出された料理の中ではサイコロステーキが一番舌にあった。

 いまの俺に舌はないんだけど、とにかくそれは本当のことだ。

 文句を言う訳じゃあないし、ありがたいことだけれど。

 でも、朝からステーキか。

 いまの俺に胃や胸もないから焼けたりはしないだろうけれど。

 気分的に重くのしかかるものがある。

 とくに食べ慣れたものが病院食だということもあるのだろうけれど。


「さぁ、飯だ飯だ」


 ちらりとラシルドを見てみる。

 その前には同じサイコロステーキがあった。

 しかも量がかなり多い。

 朝っぱらからよく食べられるものだ。

 昨日の夜も呆れるほど喰って呑んでいたのに。

 二日酔いの気配すら見せていない。


「さぁ、食べましょうか」


 リーゼとラシルドの奥さんも席に着く。

 やはりと言うべきか、二人も同じものを食べるようだ。

 ドワーフはきっと胃が強いのだろう。


「おっと、そうだ」


 朝食をとりはじめてすぐ、思い出したようにラシルドが言う。


「こいつを食い終わったら俺と一緒に隊舎に行ってもらえるか?」

「隊舎に?」


 先日、出入りが許された警備兵団隊舎。


「あぁ。一度、お前さんを交えてサンダーバードの対策を練りたいんだ」


 サンダーバードへの対策か。

 たしかにそれは必要だ。

 俺ができることをドワーフたちは知らない。

 逆にドワーフにできることを俺は知らない。

 情報の共有はしておかないとな。


「もう、お父さん。あと一人、忘れてないかしら?」

「ん? おぉ、そうだったそうだった」


 また思い出したようにラシルドは言う。


「その対策会議にはリーゼも参加することになっているんだ」

「リーゼが?」


 どうしてまた。


「リーゼは遺物の研究者でもあってな。俺の娘なだけあって優秀なんだ」

「そうよ。お父さんや警備兵が使ってる武器や鎧だって私が考案したものなんだから!」


 また自慢気に胸を張っている。

 だが、実際それは凄いことなんだろう。

 街の警備に正式採用されるほどの代物だ。

 それに機械竜を覆っていた結界のような障壁をラシルドの得物は貫通していた。

 実際のところ優秀なんて言葉じゃ納まりきらない才覚の持ち主だ。


「機械兵の回路や機構を分析して武器に転用することで刃こぼれと言った消耗を気にすることなく戦えるようになったわ。それに機械竜の電磁バリアを鎧に流用して従来のものよりはるかに耐久性と防御力が――」

「まぁまぁ、リーゼちゃん。お仕事の話はご飯を食べ終えてからにしたら? 冷めちゃうわよ」

「む、そうね。お母さんの言う通り」


 熱弁していたリーゼをラシルドの奥さんが制する。

 今のを見る限り、熱くなって口数が多くなるのは日常茶飯時のようだ。


「リーゼもこれがなければな。早いところ直さないと嫁のもらい手が」

「うるさいわね! そのうちいい人みつけるもん!」

「そう言ってもう今年で二十――」

「あー!!」


 歓迎会の時の賑やかさが戻って来たような騒がしさだった。

 ちなみに幾つなのだろう? リーゼは。

 ラシルドの口振りからして二十代なのはたしかみたいだけど。

 二十代。

 人間の感覚で言えば、そんなに婚期を焦るような年齢でもないはずだ。

 ドワーフはみんな二十代のうちに結婚するものなのだろうか?

 そんなことを思う、朝食だった。


「ここが……」


 朝食を取り終えた俺はラシルドとリーゼに連れられて警備兵団隊舎を訪れた。

 石造りの荘厳な隊舎は見る者の背筋を立たせるほどの貫禄があった。


「司令官殿から話は通っているはずよ。あなたが入っても騒ぎにはならないわ。まぁ、じろじろと見られることになるでしょうけど」

「あぁ、大丈夫だ。そいつには慣れてる」


 奇異の目で見られることにはもう慣れた。


「それよりも気になるんだけど、その背中に背負っているのはなんだ?」


 リーゼは布に包まれた長細い何かを背負っている。

 その全長はリーゼの背丈を明らかに超えていた。


「あぁ、これ? あとのお楽しみよ。さぁ、行きましょう」


 二人は慣れた様子で隊舎の扉を開き、中に入っていく。


「お楽しみ、ね」


 なんだろうと思考を巡らせつつ、俺もその後に続いた。


「――話には聞いていたけどよ」

「まさか本当だとはなぁ」

「意思疎通ができるスケルトンか」


 警備兵団隊舎第二会議室。

 その室内に満ちる雰囲気は揺れていた。

 理由は一つ、この空間に魔物が一体ほど存在しているからだ。


「司令官殿に聞いてはいたんですがね。本当に大丈夫なんです? そいつは」


 大きなテーブルを囲うようにしてドワーフの男達が座っている。

 その中の一人が視線を俺に向けてラシルドに尋ねた。


「あぁ、大丈夫だ。先日の襲撃も、このトオルの活躍があって被害を最小限に抑えられたんだ。こいつがいなくちゃ俺はいま生きてなかったかも知れねぇ。掛け替えのない恩人だよ」


 ラシルドはずいぶんと大仰に俺を紹介してくれた。

 だが、これくらい言っておかないと信用は得られないのだろう。

 この効果があったのかどうかは知らないが、会議室の雰囲気もすこし静かになった。


「よし。なら、対策会議を始めるぞ」


 期を見計らってラシルドは会議の開始を告げた。

活動報告にも書きましたが、このたび書籍化の打診を受けました。

詳細は省きますが、これも皆様の応援のお陰です。

本当にありがとうございます。

また改稿作業に入るので今日まで続けてきた毎日更新が維持できなくなると思います。

エタ癖のある私ですが、更新は続けるので応援よろしくお願いします。

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