全部の魔力
複合特性、火装にすべての魔物の魔力を加える。
出し惜しみはなしだ、これまでのすべてを込めて不死鳥を討つ。
「クアアァアァアアァアアアアアッ!」
フェニックスの再生の炎が波のように押し寄せた。
それに飲まれた骨のすべてが息を吹き返し、肉体を得て蘇る。
幾千、幾万の魔物を従えたフェニックスに、すべての魔力を解き放つ。
「――複合特性、総装を獲得しました」
すべての魔物、すべての魔力を全身に宿し、放つ閃光。
すべての色が重なり、すべてを染める白が、不死の炎とぶつかり合う。
勝敗は明白。
再生の炎を掻き消すように白の閃光がすべてを呑む。
骨から再生した魔物たちは瞬く間に白骨化し、死へと回帰する。
そしてそれはフェニックスとて例外じゃない。
火炎の双眸も、火の粉の羽根も、すべてを白く染め上げて骨にする。
この空間が、世界が、すべて白で満ち、再び色が戻る頃にはすべてが終わっていた。
不死の遺骨が地に落ち、スケルトンの骨格が着地する。
ついに、ようやく、最後の魔物を倒した。
「やっと――やっと!」
魔力の枯渇により、虚脱感が酷い。
すぐにでも骨格がバラバラになりそうだ。
だが、それもあとすこしの辛抱。
「これでようや――」
ふと気配を感じて振り返る。
骨塚の影に隠れている誰かの姿を認識した刹那、光が放たれた。
亜音速で飛来する光弾。
それがこの頭蓋を吹き飛ばそうとした、その刹那のこと。
俺の目の前に誰かが割って入った。
その手に握られていた七色の短剣は、俺が自ら渡したもの。
彼女は、ロストシリーズのローブを脱ぎ捨て、七色の短剣で光弾を受け止めた。
その二つは互いを壊し合って霧散する。
「よかった、防げました」
残った柄の部分が光となって消えていく。
「美鈴……」
「はい、美鈴です。生憎、あなたのほうは見られませんが」
「あぁ、そういう約束だったっけ」
「はい。約束ですので」
次に会う時は人間同士。
約束は守らないとな。
「師匠も来ていますよ。今、篠宮さん――光弾を撃った探求者を止めています」
「ありがたい話だ」
先ほどの光弾は、ヒュドラの時にあった高位探求者のものだった。
道理で高位探求者に囲まれた時、顔が見えなかったわけだ。
ずっと隠れて、俺を討ち取るタイミングを計っていた。
次を撃ってこないあたり、美鈴の師匠に止められているようだな。
「――フェニックスが復活します。その前に」
「あぁ、わかってる」
足を踏みしめ、背筋を伸ばし、フェニックスの遺骨に手を翳す。
火の粉が復活と再生の予兆のように宙を舞う中、俺は混淆を発動した。
フェニックスの遺骨を吸収し、纏わり付く火の粉を払う。
そうして来る変異は、これまでと同じように鈍い痛みを伴う。
全身が軋む感覚も、これで最後だと思えば歓迎できた。
不死を取り込み、その魔力が全身に馴染む。
背に生えた翼が火の粉の羽根を生やし、全身が再生の炎で包まれる。
「――フェニックス・スケルトンに変異しました」
これですべての準備が整った。
「教えてくれ、精霊。人間への戻り方を」
「――もちろんです。この長い旅に終止符を打ちましょう」
これでようやくすべてが終わる。
ネクロマンシーによって、スケルトンから人間へと蘇ろう。
次回、最終回です。




