三人の葛藤
黄金の一振りで魔法の弾幕を崩し、背から六本の龍頭を生やす。
それぞれの口腔から六属性ブレスを同時に放ち、まとめて攻撃を加える。
高位探求者の集まりとあって、それで死ぬ人間がいなかったのが幸い。
大半は負傷で済み、その場に縫い止めることができた。
「追ってこないでくれ!」
願いを込めて叫び、更にダンジョンの奥へと逃げる。
風を切って進む中、不意に目の前に淡い緑の光を見た。
それは瞬く間に広がると、俺の周りを囲んで檻となる。
急停止を余儀なくされて止まると三人の人影が現れた。
「キミなら簡単に壊せるだろう?」
「理人……」
この魔法は理人が持つ魔導書から発動していた。
「なぜそうしない?」
「戦いたくないんだ、人とは」
「状況を理解していないのかい? 見て、聞いて、体験しただろう。誰もがキミを殺しに来てる。戦わざるを得ないんだ、殺し合うしかないんだ、僕たちは」
「嫌だ。お断りだ、そんなこと。たとえ世界中から命を狙われようと関係ない。俺は人を殺さない、絶対にだ」
「どうしてそこまで頑なななんだ」
「こうしないと自分が自分でなくなるからだよ」
昔も似たようなことを言った覚えがある。
あの時となにも変わらない。
変わったのは姿と能力だけだ。
「おい、理人。もういいだろ」
「あぁ、十分だ」
そう答えた理人が魔導書を閉じる。
淡い緑の檻が消えて自由の身になれた。
「どういう風の吹き回しなんだ?」
「迷ってたんだよ。僕たちは」
「上の命令に従ってお前に剣を向けるか、自分を信じて背くかをな」
「だから、さっきのを聞いて決断したの」
三人とも自身の得物を仕舞った。
「行け。俺たちはもう邪魔しない」
「僕たちの冒険者人生を賭けた決断だ。キミが人に戻らなかったら僕たちもろとも破滅する」
「ぜったい! 人間に戻ってよね」
「あぁ、必ず。恩にきる」
再び跳び上がり、三人の頭上を通り過ぎる。
そのまま再び通路の先へと向かった。
§
「ホントによかったのかい? あれで」
「あぁ、人殺しになるよりよっぽどマシだ」
「一応、再就職先を考えとかないと。私、花屋がいい」
「縁起でもねぇこというんじゃねぇ!」
「私は現実主義なの! 万が一も考えて当然でしょ!」
「まぁまぁ、その辺で。今は行く末を見守ろうじゃないか。一人のスケルトンが人間になるか化け物になるかをね」
「そうだなぁ……」
「それにこの先にはあの人たちがいる。果たして無事に逃げ切れるかな?」
「人生が掛かってるってのに相変わらずだな、お前は」
「どんな窮地にあっても人の性分は変わらないのさ」
そうして僕たちは彼が向かった先へと視線を向けたのだった。
§
三人に見逃してもらい、人気のない位置にまで移動する。
地面に降り立ち、一息を付く。
「たぶん、まだ追ってきてるな」
まだ安心はできない。
このまま闇雲に逃げてもただ時間を浪費するだけ。
冒険者たちから逃げるのと同時に、最後の一体を殺さなければ。
「正解だ。まだ追ってる」
声がして即座に振り返ると、炎剣を担いだあの冒険者の姿を見る。
「逃げるのはなしにしようぜ。追い掛けるのも面倒だ」
「……嫌だって言ったら?」
「その首、置いて行ってもらう」
「冗談じゃない」
「だよな。でも、本気だぜ」
剣の炎が盛る。
俺も即座に身構えた。




