能力の証明
ガーゴイルの能力が使えるかも知れないと話して、俺たちは修練の間と呼ばれる円形の洞窟へと移動した。
内部の壁には幾重にも得物による傷や魔法の痕が刻まれていて、修練の激しさを物語っている。
周囲には戦士の装いをしたダークエルフたちが並び、こちらを品定めするように眺めていた。
「この者は我が同胞、シンシアより予てから伝えられていたスケルトンだ。戦士の試練を乗り越え、我らが同胞としても見なされている。姿は違えど、この場にいるすべての者が同じエルフだ」
ダリアは円を描くように歩き、周囲のダークエルフたちに語りかける。
「そして此度、この透はケリュネイアの討伐に参加することとなった。これより皆に見せるのは時の加速を凌駕し、ケリュネイアに届きうる物だ。皆の中には透の適正を疑うものもいるだろう。ゆえに、己が目で確かめるといい」
演説を終え、足が止まり、こちらに視線がくる。
俺はそれに答えるように、自らが身に纏う魔力をガーゴイルのものに変換した。
邪龍の鱗が石化して岩の肌となり、背には石の翼が生える。
右手に錫杖を持ち、先で突けば地面が削れて細かな砂と化す。
それを自在に操って波打たせ、固めて岩に戻し、様々な武器を構築する。
最後に一本の槍を地面に突き立て、ダークエルフたちに見せつけた。
「こんなもんかな」
石槍を砂に戻して削った地面を修復する。
「見ての通りだ。この石と砂の力があればケリュネイアにも容易に手が届く。我らがやるような投石よりもよほどいい」
再び、ダリアが皆の前に立つ。
「決を取る。この者の参戦に反対の者は手を上げろ」
その手をあげる者、あげようとする者は一人もいなかった。
そのことにほっと一息をつく。
「決まりだな。以上だ、持ち場に戻れ」
参戦に同意と賛同を得て解散となる。
次々に自らの持ち場へと戻っていくダークエルフたち。
それを眺めていると、ダリアが側にきた。
「これでお前の参戦に異議を唱える者もいなくなるだろう」
「異議を唱えた人がいたってこと?」
「あぁ、シンシアから連絡があってすぐの頃にな。魔物を里に招き入れるなど、と何人かから。まぁ、当然の反応だ。お前という存在はあまりにも人から遠い。その見た目だしな」
ズバッと言ってくれる。
「気を悪くするなよ。それでも我々はこうして受け入れた。お前が自らの能力を示し、受け入れさせたんだ。だから異議を唱えた者たちも今回は手をあげなかった。そうだろう?」
「あぁ、そうだな。また異議を唱えられないように頑張らないと。不格好なところは見せられない」
あとすこしで人間に戻ることができる。
あと二体だけなんだ。
下手を打ってダークエルフたちの協力を得られなくなることだけは避けないと。
この状況でまた目標が遠のいてしまったら、焦りで冷静ではいられなくなってしまう。
「さて」
周囲にいたダークエルフたちがすべていなくなったところで、改めてダリアが俺と向かい合う。
「実際のところはどうなんだ? その力でケリュネイアを殺せるか?」
「……正直なところ難しいだろうな」
そもそもの話、ガーゴイルはケリュネイアよりも遙かに弱い。
同じ高位の魔物でも、その実力差は雲泥だ。
楽観的には考えられない。
「その理由はなんだ?」
「たしかに石と砂の攻撃はケリュネイアに届く。でも、奴は周囲だけじゃなくて自分自身も加速できる。俺が攻撃したところで当てるのは難しい。躱されて反撃を受けるのが落ちだ」
「……そうか」
ダリアはうつむいて思案顔となる。
「まぁ、なんとかしてみるさ。いつもみたいにな」
「あぁ、我々もできることをしよう。お前に頼り切りでは格好がつかないからな」
互いに笑って、俺たちも修練の間を後にする。
それからダークエルフたちと作戦会議で時間は過ぎていった。
前の新作が完結したのでまた新しく始めました。
良ければ下から読んでいただけると幸いです。




