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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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渓谷の集落


 巨岩をぶつけられたケリュネイアはそのまま渓谷の奥底へと落ちていく。

 巨大だとはいえ、ただの岩だ。ダメージらしいダメージにはなっていないだろうけれど、お陰で命拾いできた。

 どこの誰だか知らないけれど感謝しないと。


「そこのスケルトン! こっちに降りて来い!」


 安堵していると地上から声が聞こえる。

 見下ろすと褐色の肌をした数人の女性が見えた。


「俺を呼んだ?」


 敵と思われていない?

 というより、言葉が通じると思われてないか?

 この大規模空間にはついさっき初めて訪れたというのに。

 疑問に思いつつも助けてもらった事実に代わりはない。

 警戒しつつも地上に舞い降りた。

 そうして彼らの目の前に立ち、種族名が判明する。


「エルフ?」


 尖った耳に芸術品のような美しい容姿、高い身長。

 獲物の骨や皮を加工して作られた衣服。

 以前に訪れたエルフの里でみた特徴と一致する。


「ダークエルフだ。ともかく、来い。透」

「なんで、俺の名前を」

「話はあとだ。時間がない。ケリュネイアがくる」


 彼女の言う通り、微かに蹄の音がする。

 渓谷の底から駆け上がってきている音だ。

 この様子だとすぐにでも渓谷を駆け上がって再戦することになる。

 戦闘を継続するのは現時点では不味い。

 ここは彼女に従っておくのが得策か。


「わかった。どうすればいい?」

「こっちだ。音を立てずについてこい」


 木々の枝葉に紛れるように移動を開始し、ケリュネイアから逃れる。

 戦線を離脱するまで極力音を立てずに気配を消し、静寂の中を突き進んだ。


「キュアアァアァアアァアアアアアッ!」


 遠くでケリュネイアの咆哮が轟いている。

 ちょっかいを掛けた俺を探して怒鳴り散らしているみたいだ。

 それからまたしばらく無音で進み、俺達は無事に戦線を離脱した。


「そろそろ聞いてもいいか? どうして俺の名前を知っているのか」

「シンシアだ」

「シンシアって――あのシンシアか?」

「あぁ、そのシンシアだ」


 エルフの里で随分と世話になったシンシア。

 その名前をここで聞くとは思わなかった。


「このダンジョンには幾つもエルフの集落がある。同時に互いを繋ぐ連絡手段も持っていてな。お前のことはほかならないシンシアから聞いている。いずれ現れるやも、とな」

「そうだったのか……」


 あの時のことが懐かしく思える。

 まだ中位の魔物に四苦八苦していたっけ。

 今では高位の魔物の中でも上澄みの部分を攫うようになった。

 あの時より随分と前進して今ではゴールの手前まで辿り付けている。


「我が同胞の頼みだ。我らの前に現れた時にはよろしくしてやろうと思っていたんだ。しかし、驚いたぞ。早々にケリュネイアに殴り込みとはな」

「……ちょっと焦ってたのかもな」


 焦らないようにと心掛けていたつもりだったけれど、うまくいかないもんだ。

 無意識に短慮になっていたのかも知れない。気持ちは抑えきれないらしい。

 ともかく、シンシアに助けられたな。

 人間に戻ったら礼を言いにいかないと。


「聞いていた話より随分とお前は強いようだ。火力は十分だが、正攻法ではケリュネイアには勝てん」

「どういうことだ?」


 たしかにケリュネイアに俺の攻撃が通じているようには見えなかった。

 アジ・ダハーカの能力だというのに掠り傷一つつけられていない。

 直前で跡形もなく掻き消えてしまって、届かなかった。

 その謎を、原因を彼女は知っているのか?


「それを今ここで説明してもいいが、お前もまず一息吐きたいだろう? 見えてきたぞ」


 視線を彼女からその先へと向けると、エルフの集落が見えた。

 小さな渓谷に吊り橋を渡し、崖を刳り抜いた部屋が幾つも存在している。

 シンシアがいたエルフの里は巨大な大木の上にあったが、ダークエルフは石の中に居を構えていた。

 似た種族でも文化が異なるのは人間と同じみたいだ。

 俺達はそのまま集落へと足を踏み入れ、一際豪華な一室に通された。

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