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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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目標の数字


「決行の日取りが決まったよ」


 家に帰ってくるなり、開口一番に師匠はそういった。

 なんのことを言っているのか、私はすぐに察しがついて、手に持ったグラスを落としそうになる。


「……いつですか?」

「別のダンジョンに行ってる高位探求者がこっちに帰り次第だよ」


 リビングのテーブルに腰掛け、私の向かい側に師匠は座る。


「もうほとんど時間は残ってないだろうね」

「そう、ですか」


 ついに始まってしまう。

 高位探求者が集い、音無さんを討伐するためにダンジョンへと赴く。

 探求者を代表する最強集団。人類の危機を何度も救ってきた英雄たち。

 そんな人たちを相手に音無さんが生き残る可能性はあるのだろうか。

 いま音無さんがどれくらい強くなっているのか、見当も付かないけれど。

 きっとそれは過酷な戦いになる。


「これでも時間稼ぎはしたんだけどね。もうこの辺が限界さ。これ以上は怪しまれる」

「ありがとうございます、師匠。こんな危険なこと」


 師匠も高位探求者の一人とはいえ、危険な橋を渡らせてしまっている。

 端から見れば立派な裏切り行為なのに、師匠は私たちを手伝ってくれた。


「いいよ、弟子の願いくらい叶えてやれないで何が師匠かって話さ。まぁ、ここから先はあの子次第になる。あとは流れに身を任せるしかないさ」

「そうですね……あの、師匠」

「あぁ、伝えてきな」

「はい!」


 私はロストシリーズの装備を身に纏い、家から飛び出してダンジョンへと向かった。


§


「……そうか。わかった、ありがとう。美鈴」


 美鈴から連絡を受けて重要な情報を知ることができた。

 近いうちに高位探求者の集団が俺を討伐しにくるらしい。

 未だ鮮明に記憶に残っているのは、火炎を纏う大剣を振るう、あの高位探求者。

 力量の差は歴然で、実力の差は圧倒的で、本当に手も足も出なかった。

 なんとか辛うじて逃げることは出来たけれど、一つでもなにかを間違えていたら、間違いなくあそこで俺の旅は終わっていた。

 それくらいの領域にいる人たちが集団になって襲い掛かってくるというのだから状況はすこぶる悪いと言わざるを得ない。

 今の俺にどこまで出来るだろうか? それはその時がくるまでわからない。


「気をつけてくださいね」

「あぁ、十分過ぎるくらい気をつけておく。それじゃあ」

「はい。また会える日を待っています」


 通話を終えて、周囲の亡骸から遺骨を回収する。

 これで魔力の充填は完了した。

 次の獲物を精霊に聞こう。


「精霊。次の標的は?」

「――ケリュネイアを推奨します」

「ケリュネイア……」


 たしかケリュネイアの鹿というものがあったはず。

 黄金の角と青銅の蹄を持つ巨大な雌鹿。

 矢よりも早く走るだとか、女神の聖獣だとか、伝えられている。


「――そしてケリュネイアを打倒すれば、あなたは目標の目前にまで迫ることができます」

「それって」

「――あなたが倒すべき魔物は、あと二体です」


 あと二体。

 あと二体、特定の魔物を殺せば人間に戻ることができる。


「ついに……ここまで」


 ようやく、ようやくセリアとの約束を果たせる。


「なら、最後の魔物は――いや」


 その名を聞こうとして、直前で思いとどまる。


「今はケリュネイアだ。そっちに集中しないと」


 逸る気持ちを今こそ抑えなければ。

 今でも爆発寸前だから、その名を聞けば恐らく制御が利かなくなる。

 焦って、短絡的になり、致命的な失敗をするかも知れない。

 ただでさえこれから高位探求者たちに追われる身になるんだ。

 最後の最後まで気は抜けない。


「案内してくれ、ケリュネイアのところに」


 精霊の案内のままダンジョンの通路を歩く。

 時折現れる魔物を狩って遺骨を吸い、目的地へと辿り着く。

 そこはどこか幻想的な雰囲気に満ちた、大規模空間。

 満月の夜のように明るい闇が広がる、緑多き山々の土地。

 俺はそこに足を踏み入れ、ケリュネイアを探して歩き出した。

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