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龍種の魔力


「サラマンダー・シェル」


 身に纏う魔力が火蜥蜴を模し、赤い鱗を構築する。

 燃え盛る火炎がこの空間の闇を照らし、アジ・ダハーカの注意を引いた。


「ジャバウォック・ランゲージ」


 燃え上がる火炎が蒼に染まり、魔力が更に変化を遂げる。

 サラマンダーと混ざり合い、両方の特徴を持った形状に変異した。


「ヒュドラ・アトリビュート」


 そこへ更にヒュドラの魔力を加え、背に六つの龍頭が生える。

 そうして三種の魔力が融合したことで、俺は新たな力を得た。


「――複合特性、龍装を会得しました」


 蒼炎を身に纏い、右手に杖剣を携え、背から翼のように龍頭を生やす。

 アジ・ダハーカの三つ首を見て閃いたのはこれだった。

 俺の中にも三種の龍がいる。

 サラマンダー、ジャバウォック、ヒュドラ。

 二種の魔力を混ぜる魔装は魔力消費が激しかったが、相性のいい同種の魔力同士なら馴染むのではないか。

 それを試した結果、俺の目論見は成功する。

 三種の魔力は完全に馴染み、俺は新たなる力を手に入れた。


「グォオオオォオォオオオォオオオオオォオオォオオオオオオオッ!」


 アジ・ダハーカが咆哮を上げ、周囲に千の魔法が展開される。

 それは螺旋を描いて一点を狙い、この身に次々と降り注ぐ。

 夜光石の星空を背景に流星群のように落ちるそれを見据え、蒼炎を纏う杖剣を一薙ぎする。

 その瞬間、視界という一枚絵を焼き払うように、蒼炎が千の魔法を焼却した。


「そいつはもう攻略した」


 自慢の魔法が焼き払われる光景を見て、アジ・ダハーカはまた吼える。


「グォオオオォオォオオオォオオオオオォオオォオオオオオオオッ!」

「グォオオオォオォオオオォオオオオォオオォオオオォオォオオオオオオオッ!」 

「グォオオオォオォオオオォオオオォオオォオオオオオオォオオォオオォオオオオッ!」


 三重に連なる咆哮から、三千の魔法が展開されて星々のように鏤められる。

 ジャバウォックの蒼炎が無償で使えるようになった今、それは大した脅威でもないけれど。

 これが落ちている間はアジ・ダハーカも次の魔法を唱えない。

 消費が少ないとはいえ悠長にしている暇もないため、この中を突っ切ることにする。

 星が落ちるように魔法が一斉に降り注ぐ中、龍頭の翼で羽ばたいて空中を駆った。

 猛スピードで空中を移動し、迫る来る魔法を次々に撃ち落としてアジ・ダハーカへと迫る。

 六つの龍頭が撃ち落とし、蒼炎を纏う杖剣の一振りが焼却する。

 目にも止まらぬ速度で稲妻のように駆け抜け、一瞬にしてアジ・ダハーカを間合いに捉えて一閃を見舞う。

 すれ違い様に振るった鋭い蒼炎が龍鱗を焼き切り、刃が肉と骨を断つ。

 それは首と胴を完全に分かち、三つ首のうちの一本を切り落とした。


「グォオオォオオォオオォオオォオッ!?」


 切断された首が悲鳴を上げて地に落ちる。

 空中にも轟くような衝撃を伴い、土埃が舞い上がった。

 患部からは噴水のように、血が溢れ出ている。


「まずは一本」


 当初の予定通り、一本はもぎ取った。


「あと二本だな」


 改めてアジ・ダハーカを視界に納めると、どういう訳か出血が急速に収まっていく。

 どうやら傷口を龍鱗で覆っているみたいだ。

 それで止血を済ませると、残り二本の首がこちらを睨み付ける。

 そして怒りの咆哮を二重に響き渡らせると、無数の影が俺の周囲に現れた。

 それはアジ・ダハーカが従える眷属。

 多種多様な姿をしたドラゴンたちだ。

 総数など数えるだけ無駄なほど空中に飛んでいる。

 持ち前の洗脳能力で、一体どれだけのドラゴンを支配下に置いているんだ?


「まぁ、なんでもいい。何体でも出してこい。全部、魔力に変換してやる」


 眷属たちは主の命令に従うように、こちらに向かって一斉に襲い掛かってくる。

 蒼炎で焼き払うと骨まで灰になって魔力が回収できない。

 だから眷属たちの一斉攻撃に対して、こちらは六つの龍頭を差し向けた。

 各口腔から各属性の魔力を蓄え、六属性のブレスが闇夜を斬り裂いて馳せる。

 それらが次々と眷属たちを撃ち落とし、混淆にてそれを魔力に変換していく。

 そうして雑魚の相手は龍頭に任せ、俺は改めてアジ・ダハーカを見据えて杖剣を構えた。

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