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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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幾千の分身


 ヒュドラ・スケルトンに変異し、ほっと安堵したのも束の間、背後から光弾が放たれる。

 完全なる不意打ちで反応が遅れるが、それがこの身を再び打ち砕くことはなかった。

 なぜなら背から生えた龍頭の一つが、俺自身よりも速く光弾を感知し、その牙で噛み砕いたからだ。

 この龍頭たちは自主的に動き、そして俺の命令には絶対服従する。


「よくやった」


 身を護ってくれた龍頭の頭を撫で、遠くにいる彼女を見やる。

 今ので射撃は効果的ではないと悟ったはず。そうなれば次に取る行動は自ずと一つに絞られる。

 彼女は地面を蹴り、細かな光弾をばらまきながら前進する。


「頼んだぞ」


 視界を覆い尽くす光弾の弾幕をまえに、その対処を龍頭の一つに一任する。

 龍頭は口内で火の魔力を圧縮して解き放ち、火炎のブレスを薙ぎ払う。

 焼き尽くされて光を失う弾丸たち、されどその火炎を突き抜けて彼女が肉薄する。近づけさせまいと龍頭を嗾けるも、華麗な体捌きですべてを躱されてしまう。

 急いで龍頭を引き戻しにかかる。だが、それを待たずに彼女のナイフが振るわれた。


「――」


 その一撃を受け止めたのは七色に輝く刀身、ヒュドラが扱うすべての属性が入り交じる虹霓刀こうげいとう。受け止めたナイフを弾くと、そのまま攻勢に出る。

 虹霓刀は振るう度にその属性を変え、一度振るえば火花が散り、二度振るえば飛沫を上げ、三度振るえば稲妻が駆ける。多様な属性の斬撃に、流石の彼女も対応に追われてしまう。

 このままいけば、そう思ったが、それが慢心に繋がったのか大きく振るった太刀筋を紙一重で躱されてしまう。大きく踏み込まれ腕を伸ばされる。だが、突き出されたのはナイフの鋒じゃあない、手の平だ。

 至近距離で手の平を翳され、次の瞬間には光り輝いた。


「まず――」


 咄嗟の判断で背後に飛び退いたが、射出は止められない。

 超至近距離から放たれる光弾がこの身に到達して破裂する。


「――あぶ、なかった」


 大きく吹き飛ばされ、どうにか体勢を整えて地に足をつける。

 光弾の直撃を食らったが骨格に損傷はない。光弾が弾ける刹那、引き戻した龍頭たちが盾になってくれた。お陰で本体である俺は無傷、破壊された龍頭も魔力によって再構築されている。


「ほう、まだ生きていようとはな」


 素直に感心した、とでも言うように彼女は述べる。


「思いの外、長引くものだな。面倒だ」

「なら諦めてくれないか?」

「悪いな、こっちも仕事なんだ。途中で投げ出すわけにはいかないのさ。どれだけ面倒だろうがね」


 そう言うと彼女の周囲に光弾が浮かぶ。


「でしょうね」


 わかり切っていた答えだった。


「じゃあ、もう逃げさせてもらうよ」


 この形態なら彼女とも戦える。そのことがわかっただけでも重畳だ。

 そもそも人間と戦いたくない俺にとって、これ以上の戦いは無意味。ただ無駄に魔力を消費するだけだ。


「逃げられると? 言っておくが子供だましは二度も通じないぞ」

「二度、通じるとは思ってない。けど、これならどうかな?」


 全身に魔力を巡らせて、ヒュドラの特性の一つを発動する。

 それは体表面に生え揃った龍鱗の拡散。剥がれて散った魔力の鱗が、形を変えてこの形態を模す。それが何千、何百と出現し、辺り一面を覆い尽くした。


「本物が見つかるといいな」


 背中に龍翼を生やし、一斉に地面から飛び立った。

 入り乱れ、広がり、天井を埋め尽くす。そんな最中、たった一人の本物を探すなんてことは、どれだけ強い高位探求者にも不可能だ。


「あぁ、まったく面倒だ。けど、やるだけやるしかないのが探求者の辛いところだね」


 彼女は周囲に夥しい数の光弾を展開し、群れとなって飛ぶ俺たちを次々に撃ち落としにかかる。その速度足るや凄まじいものがあるが、逃げていく俺たちのすべてを貫くにはあまりにも時間が足りない。

 この大規模空間の端、通路への出入り口に到達するまでにかなりの分身が撃ち落とされた。けれど、本物の俺はこうして無傷でここにいる。どうやら無事に逃げ切れたようだ。


「さて、また見つからないうちにいくか」


 共に降り立った周囲の分身たちを消して、通路の薄暗闇に紛れ込む。

 両手で龍頭を撫でつつ、次の獲物のもとへ。

 この過酷な旅の終わりは――俺の願いが叶う日は、確実に近づいていた。

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