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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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蛇狼の魔装


 手の平に血液をため、上空から撒き散らされる。

 血飛沫が蒼炎となり、蒼い雨が降り注ぐ。

 周囲の森を焼き尽くすそれに対して、こちらは全身をガーゴイル・デザートに変換する。

 石の錫杖で地面を穿ち、大量の砂が波のようにうねり、蒼炎とぶつかった。けれど、それはあっさりと蒸発して足止めにもなりはしない。


「くっ――」


 右手に風と水の魔力を、左手に氷と水の魔力を宿し、蒼炎に向けて右手を翳す。

 吹きすさぶ細雪の吹雪を放ち、同時に周囲を絶氷で取り囲む。

 だが、ここまでしても蒼炎の威力は削ぎきれない。細雪は呑まれ、絶氷も触れた端から融けていく。


「まだっ」


 融かされる絶氷の内部にカーバンクルの結晶を張り、赤く染めて炎の属性への耐性を持たせた。

 ここまでしても、やはり蒼炎は止まらない。赤く染まった結晶壁を簡単に打ち砕き、何十にも重ねた防御の上から、蒼炎はこの身を焼き焦がした。


「ぐぅっ――」


 骨の髄まで炙られるような酷い苦痛。

 だが、まだ耐えられる程度の熱量だ。先ほどとは比べものにならないほど威力が弱まっている。死ぬほど辛いが死にはしない。

 ジャバウォックは現状をどうみている? 蒼炎に焼かれて俺が死んだと思ったか?

 なら、これは好機だ。

 今ならジャバウォックの虚を突ける。


「――魔装ッ」


 バジリスクとフェンリルの魔力を合わせ、この骨格に顕現させた。

 毛皮が蛇鱗に置き換わり、銀の魔力が黒銀に染め上がる。その鱗は熱をはね除けて遮断し、触れるだけで裂ける鋭い魔力が黒銀となって更に研ぎ澄まされる。携えた黒銀刀を振るえば蒼炎は真っ二つに引き裂けた。


「――■■■■■ッ!?」


 驚愕するジャバウォックへと向けて跳躍し、弾丸のように跳ぶ。その速度は回避を許さず、振るった黒銀の一太刀は滑らかにジャバウォックの胴を断ちきった。

 だが、またしても死体が霞みとなって消える。

 先ほどの負傷を経験して、予め保険を掛けていたのか。


「■■■■■ッ!」


 身代わりが掻き消え、本体が現れたのは背後。

 手の平に貯め込んだ鮮血が、今まさに振るわれる。

 この至近距離、最大威力の蒼炎をまともに受けてたら魔装でも防ぎ切れない。

 だから、空中に足場を造った。


「お前が教えてくれたんだ」


 ガーゴイルの砂の上を走るフェンリル。

 それを見て閃いた。だから、魔装の一部にガーゴイルの魔力を残しておいた。

 空中に集まって足場となった砂を蹴って方向転換。

 まだ液状の血飛沫の最中を突っ切って、今度こそ本体のジャバウォックを捉えた。


「――■■■■■」

「――馬鹿な」


 それがジャバウォックの最後の言葉。

 黒銀の残光を引いて馳せた一閃が、ジャバウォックの命を奪う。

 手の平に貯めるまでもなく、大量の鮮血が空中に散り、焦土へと降り注いだ。

 だが、それが森を焼くことはもうない。

 まだ熱が残る地面に、血が蒸発する音が響いた。


「終わったか……」


 両翼を広げて、ジャバウォックが落ちるのを見届けた。

 同時に魔装を解いて、バジリスクのそれに形態を変化させる。

 やはり魔力の消費量が酷い。この短時間でまだそこそこ残っていた魔力が底を尽き掛けている。空を飛んでいることさえ、今はすこしキツいくらいだ。


「早いところ遺骨を回収しよう」


 魔力を調整して地面へと降り立ち、ジャバウォックの死体へと近づいた。

 胴を二つに分かたれ、完全に息絶えていることを確認しつつ、命が抜け落ちた肉体に手を触れた。

 混淆はジャバウォックの遺骨を余すことなく吸収し、この身に変異をもたらした。

 更新された能力は身に纏う魔力となって現れ、歪な形へと変貌する。あらゆる魔物をツギハギしたかのような、不自然な造形をしている。けれど、見てくれと相反して、骨格に漲る魔力は強大だった。


「――ジャバウォック・ランゲージを獲得しました」


 これでまた一つ、人間に近づくことができた。

 セリアとの約束に、また近づけた。


「……そう言えば」


 周囲を見渡して、不安が過ぎる。

 約束と言えばアルラウネたちのことが心配だ。

 上空から見たときも思ったけれど、森のかなりの範囲が焦土になってしまっている。

 もしかしたら犠牲になってしまったかも知れない。

 約束を果たしたというのに、相手がすでにいないなんてあんまりだ。

 そう思っていたけれど。


「やったの! いじわるなドラゴンをやっつけたの!」


 どこからともなく声が聞こえてくる。

 それはどうやら地下から聞こえてくるようで。


「わーい、なの!」


 まるで花が咲くように、アルラウネたちが地面から生えてきた。

 どうやら地中に逃げていたようで、焦土の熱も届かないほど深く潜っていたようだ。

 焦土が花畑に変わり、そこら中から喜びの声が聞こえてくる。

 それを見て俺は心底、あぁよかったと、そう思ったのだった。

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